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告白の後


 2度目の波動は、大麦畑をなぞるように進んで行き、国中のすべての魔法陣を消し去った。王都の魔法陣も、各所に存在していた魔力を奪い取る魔法陣も、商業ギルドの移動魔法陣もすべてを無効にしたのだ。


 「ブリリアール!!大丈夫か?」

 「ブリリアール様!!」

 「ブリリアール様!お怪我はありませんか?」

 「大丈夫、大丈夫です。兄は、もういないのですよね?」

 「あぁ、いない、消滅したんだ。私のせいで危険な目にあわせてすまない」

 「いいえ、この目で、この世界に兄が存在しない事実を刻めて良かったです。もう、恐怖はいません」


 ブリリアールは、ルーツィとしっかり抱き合い涙を流している。ルーツィは、しばらくそのまま抱きしめブリリアールが落ち着くまで待って、次に来る波動に備えている。


 「‥‥‥終わったのか?魔法陣は成功したのか?」ルーツィは直ぐに第2皇子と連絡を取ろうとしたが、繋がらず、ブリリアールに従って村人の点検に付き添う。その中で、村に隠れて暮らしていた老人2人も消滅していた。


 「昔、村で暴れて追放された人間です。生活が厳しくなって、いつの間にか戻って来ていました。匿っていた彼らも、見捨てられなかったのでしょう。申し訳ありません」


 「実は、王宮では、女神様の存在が取り沙汰されている。消滅した人間は、何かしらの罪を犯した人間たちだったのだろう‥‥」


 「何かしらの罪‥‥」(兄の犯した罪は多い、メイド達にした事を考えると当然の結果だ)


 村の人たちの安全を確認した後、ブリリアールの家に戻るが、移動魔法陣は起動できず、屋敷の数少ない魔道具たちも全滅だった。


 「女神様は魔術がお嫌いだったのですね。だから、わたくしが作った結界魔法も起動しなかったのですね‥‥」


 「君が村に張った結界魔法陣は、間違っていたから動かなかっただけだ。所で、君は魔法紙を大量に購入していたな?どうした?」


 「‥‥ありますよ、大量に‥‥」


◇◇◇◇◇◇


 ブリリアールの家に戻り、なぜか、ブリリアールの愛するキッチンにルーツィも入って来る。


 「え?」

 「え?どうして‥‥入れるの?あの結界魔法も間違っていたのかしら?」

 「ブリリアール、先程も一緒に確認しただろう、多分、今は、どこにも魔法陣と魔術具は無効だ。だから、君の魔法紙を出してくれないか?」


 「‥‥‥ルーツィ様は、どうしてこちらにお出でになったのですか?まさか、魔法紙の為ではないですよね?」


 ルーツィは、しばらく困惑した顔で、そして、しっかりとブリリアールを見る。


 「なぜと、理由を聞くのかはわからないが、国が消滅する時に、一緒にいたかったのは君で、助けたかったのも君だった。両親や兄弟、忠誠を誓った第2皇子でもなく、ただ君だった。それが、なぜ魔法紙の事に繋がるかわからないが‥‥」


 「それは、わたくしを好きだと言う事でしょうか?」

 「ここまでして、恋愛感情がないのはおかしくないか?」

 「‥‥‥わたくしは一度婚約破棄された身ですし、不妊の疑いもあり、王都から離れた土地の村長で‥‥」


 ルーツィは腰に手を回しそっとキスをした。


 キスをした、キスをして、電流が流れるように、互いの魔力量がわかった。


 「え?」

 「なんだこれは‥‥」


 「もう一度、キスをしていいか?」

 「はい、どうぞ」と言ってブリリアールはルーツィに唇を差し出すが、2度目は感じられなかった。


 「初めての口づけだけが、有効なのでしょか?」

 「そこは不明だが、他の誰かで試そうとはしないで欲しい。後、今、自分自身の魔力量にも驚いている」

 「どうしたのですか?」

 「増えている。そう言えば、この村の人間は魔力持ちが多く存在している。先程のアローは中級位の魔力があったぞ」


 「この村で、わたくし以外は魔法を使えませんよ。それから、腰に回した手を離して下さい‥‥」


 ルーツィは名残惜しそうに手を離し、ブリリアールを椅子に座らせて、膝をつき手を握り、互いにしっかりと向き合う。


 「君と結婚して家庭を持ちたいと思っている。今後、国の制度は確実に変化するが、結婚に当たって不都合な事はない」


 「不都合ですか?」

 「私は、家門を継ぐ必要がなく、君の村の隣の土地を管理している。だから家門からの反対はない。それに、子供ができなくても構わない、君さえいれば、それでいい‥‥、これでは駄目か?信じてくれるか?」


 「あなたがわたくしを信じて下されば、信じます」


 「‥‥‥」


 「魔法紙は、見た目は真っ白ですが、魔法陣が埋められていますよね?」

 「ああ、そういう事か、そうだな、それでは使えないか‥‥」

 「でも、使える魔法紙をわたくしが取り出したら、ルーツィ様はどういたしますか?」


 ブリリアールはいつも持っている小さな鞄から、1枚の魔法紙とペンを取り出し、ルーツィに渡す。


 「多分、この魔法紙は使用可能だと思われますが‥‥、試してみますか?」


 ルーツィは、ブリリアールから手渡されたペンで、第2皇子宛の魔法陣を書き入れ、ブリリアールの村に居る事を書き示し、転送した。


 「送れたと言う事は、君が持っている魔法紙は魔法陣が消えていないと言う事か?」

 「そうです」

 「なぜだ?」


 「その答えは、しばらく待って頂けますか?第2皇子からの情報が入ってからお話いたします」


 「その前に、君は僕の事をどう思っている?」ルーツィは恥ずかしそうにブリリアールに聞く、

 「会いたくて、会いたくて仕方がない人で、いつもルーツィ様を心配していて、お慕いしていると自覚しています」


 「そうか‥‥それは良かった」

 「ふふふふ、わたくしも良かったです」


◇◇◇◇◇◇


 第2皇子は意外に早く来た。アガシー先生と本人がワイバーンに乗って登場したのだ。


 「第2皇子‥‥いいえ、国王陛下、ご無事で何よりです」

 「‥‥‥、国王陛下にご挨拶申し上げます。この村で村長を務めるブリリアールと申します」

 「アガシー先生にご挨拶申し上げます。この村で村長を務めるブリリアールと申します」


 「ああ、側近もルーツィ以外はいないので挨拶はいい、それで、なぜ魔法紙が残っている?」


 「やはり、魔法陣は全滅ですか?」

 「ああ、きれいさっぱり消滅していた。魔法紙がなければ、被害状況の調査も始められない。魔法陣が書けないのだからな‥‥、魔法陣が消え、魔術具も動かずリンは頭を抱えて、その場で卒倒したよ。」


 「多分ですが、私がここへ移動する瞬間、魔法陣が発動し、私はその瞬間の間にいたのではないでしょうか?わたし自身でもわからないのですが‥‥」


 ルーツィの説明など、どうでもいいアガシー先生は、早く魔法紙を出せと催促する。


 「貴族なら1枚や2枚、君ほどの文官であれば数枚は携帯していただろう?」

 「はい、確かにあります」


 ルーツィは5枚ほど取り出し、アガシー先生に渡すと、それからがすごかった。どうやら魔法陣を解明する魔術具が動かなくなって、魔法紙で魔法陣を足して行くのだが、魔法紙がなく、どうやっても魔法陣が発動できなかったようで、魔法紙を作るにしても、魔法紙の中の魔法陣を誰も知らなかった。


 (あって当たり前の物を誰も気にしない、魔法紙の中の魔法陣は、魔法紙を作り出す魔術具の中に組み込まれていた為に、不明だそうだ)


 森の魔法陣が発動してから、アガシー先生は、自分の研究のすべてが消えたに等しい状況で、途方に暮れていて、その様な状況の中、気絶しているリンさえも羨ましいと思っていた。


 「国王陛下、儂も気を失いたいです‥‥、実験が‥‥この世界には魔術はありません。儂の魔術書が真っ白です‥‥」と、ルーツィから魔法紙が転送されてくるまでは、廃人のようだったらしい。


 魔術の無い世界は静かで、のんびりしているが、魔術師には、物凄く不便で、生活し辛い、アガシー先生はそのストレスに耐え切れなかったようで、何が何でもブリリアールの村に行くと強く主張して現在に至る。


 「ルーツィ、魔法紙をくれ~~~後1枚でいい頼む、お願いだ!魔法紙~~くれ~~」


 貴族学校では誰よりも傲慢な教師で、広い研究所を持ち、生徒からは尊敬されている優秀なアガシー先生を思い出し、ブリリアールは、笑いを堪えるのが大変だった。



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