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ルーツィと王都事情①


 麦の種まきも終盤に入り、仕舞い込んでいた木や苗も、植え替える必要性を感じ始め、外に並べて確認していると、マルコが畑の進捗状況の報告にやって来た。


 「これらの植物はどうしたのですか?」

 「王都から持って来たのですが、暖かくなったので、外に植えようかと思っています」


 アローは興味深そうに、王都の植物を手に取って見始め、キングは木箱の芋類に目をやる。

 「芋は、目が出始めていますので、明日にでも植えた方がよさそうですね」と話し、アローも林檎の木と柑橘系の木が弱り始めていると言うので、ブリリアールの家の近くと、村にそれぞれ植えてもらう事を頼んだ。


 マルコが麦の種まきが終わった事を報告し、レンガの歩道にもうすぐ終わると言うので、日当の計算をしてお支払いする。


 「それでですね、ブリリアール様、これからは本格的に農作業が始まりますので、今後、作業の賃金は結構です。村は基本、物々交換でして、我々は、既に、多くの物をブリリアール様より頂いております」


 「そうなの?それは困ったわ‥‥、もうすぐ、商業ギルドから追加の荷物が届くのよ」と、少し悲し気にブリリアールは話す。

 「!!この前と同じ量の荷物ですか?」

 「ええ、まぁ、それで、魔法陣の上の屋根も補強して欲しいと思っていたのだけど‥‥どうかしら?」


 最初の大工仕事は魔法陣の上に、カーポートのような物を建ててもらう作業で、冬の間、雪の重みに耐えたが、不安定で危ない。本当に、良く持ちこたえたと思っている。


 「では、これが賃金を頂く最後の仕事になります。それで、荷物はいつ頃届きますか?」

 「なぜか、急に決まって3日後です。ねぇ~~、貴族って身勝手よね‥‥、まったく」


 マルコ達3人は何も言わないが、すごく困惑した顔をしている。

 (わかる、わかるけど、苦情は商業ギルドへお願いします)


◇◇◇◇◇◇


 最後の賃金を多めに払う事で同意を勝ち取り、思いっきり村人に丸投げして、魔法陣の前で貴族らしくドレスを着て優雅に振舞いながら到着を待っていると、大量の荷物と共に、ギルドの職員、人足、そして、なぜかこの前の上級貴族のルーツィまでもが姿を表した。


 「お久しぶりです。わざわざこのような田舎にお越しくださり、恐悦至極でございます」

 「ああ、話があって来た。君は、みんなに指示を出しなさい。私は、少し見て回る」


 その言い方ですと、あなたが上司で私が部下になりますけど、よろしいのでしょうか?ここはわたくしの村であなたは呼ばれていない客人ですが!と言えるはずもなく、商業ギルドの職員に、人足たちへの指示を伝え、村人たちヘは資材の搬入と農作物の分別や植え替えを命じた。


 (これで、夏野菜の苗が手に入り、サラダが食べられるはずだ?)


 ルーツィと一緒に従者とメイドもやって来たので、お茶の用意はそちらに任せ、キッチンに併設されている応接用の場所にルーツィと従者を案内する。


 「お見苦しいでしょうが、このような場所で申し訳ございません」と一応、詫びを入れる。

 「大丈夫だ、平民の家にも慣れている」

 「はい?」

 「それで、商業ギルドからの運搬は、今回で終わりだがやって行けそうか?」

 「はい、冬も越せましたし、村の人たちは親切ですし、ご心配には及びません」

 「今回、業務用の氷室5つとは何に使うのだ?商業ギルドでは間違いでないかと、最後まで話題になっていたが?」

 「これから収穫する野菜の保存に使用します」

 「随分と広い麦畑だが君が作ったのか?」

 「はい、土地魔法で耕して、村の人たちに種を植えてもらいました」


 書類を見ながら、面接官のように話を進めるルーツィの事を面白がって見ていると、

 「貴族学校で調べたが、君は殆どの魔法を習得して卒業したようだな、それに成績も魔術以外は優秀だ。貴族の令嬢としては珍しいのではないか?」


 「はい、そこまで調べていらっしゃるのでしたら、わたくしが伯爵家でどのように扱われていたかもご存じですよね。当然、身を守る為です。まぁ、騙されてあのようなクズな男と婚約してしまいましたが、これからはもっと気をつけて暮らして行くつもりです」


 「そうか‥‥」

 「先程、君の麦畑の試算をしたのだが、この村で消費する5倍くらいの作付けがされているが、どうしてだ?国中が食料難に陥っている情報をどうやって入手したのだ?実は魔術を使う事も得意なのか?」


 「???おっしゃっている事がわかりかねます?」

 

 ルーツィも従者もメイドも黙っているが、ブリリアールは本当に誰とも連絡を取っていない。


 「わたくし、通信魔術具は、ひとつも持っていませんし、友達もいません。今回は、幸い、商業ギルドから持たされた魔術具で連絡しましたが、国内の事など、王都から遠く離れたこの北の果てに届くに相当時間がかかります」


 「今回の君の要求は前回の取りこぼしと食料、氷室がメインだった。ただ‥‥‥、君は一応爵位持ちの貴族だから話すが、帝国が予想外の動きを始めていて、輸入に頼っている食料がストップされた。君が欲しがったコーヒーやスパイス類は本当に貴重な物になったのだ」


 「なんと!!では、国内で生産するのですか?」

 「君は、やはり少し抜けているな、国内で生産できないから輸入に頼っているのだ」

 「あ~~、そうですね」


 「生の野菜も品不足で高騰が見込まれるが、協力してくれた村があり手に入れる事ができた」


 メイドが、2杯目のお茶を入れようとするのをブリリアールは止めて、近くの氷室から小さな樽を取り出した。


 「これは、わたくしが密かに作ったエールですが、少しいかがですか?」


 ブリリアールは自前のグラスにたっぷりとエールを注いで、ルーツィたちの前に差し出す。当然、鑑定魔法で毒を調べているとは思うが、メイドが、率先して毒見をすると言い張る。


 「どうぞ、こちらはルーツィ様が仕留めたイノシシで作った干し肉ですが、こちらも毒見をお願いします」


 メイドは貴族出身で、所作は優雅だが、ぐびぐび飲んでいく姿に好感が持てた。「どちらも、とても美味しいです」と、ただ一言を残しキッチンへ向かった姿も可愛くて清々しい。


 「従者の方は年齢がちょっと‥‥」

 「ああ、私だけが頂こう」とルーツィはエールを取り飲み始め、干し肉にも手を伸ばすと、後ろの従者の方も干し肉に手を伸ばしている。この2人は不思議な関係だと思って見いると、メイドはよりエールに合う品物を出して来た。


 雰囲気的にブリリアールもご一緒して、1杯飲み、ルーツィ様も1杯飲む、互いに飲み続け、

 「それで、どうしてこれを出して来た?」

 「ただのお礼です。貴重な物を頂いたのでわたくしにしか作れないお礼をお渡しします。小さな樽ですが、飲み切る事が最善でして、賞味期限は2日程度ですので、こちらをお持ち帰り下さい」


 「飲みかけを?いらん!新しいのをもう1樽くれないか?王宮で飲む」

 「ルーツィ様は王宮にお勤めなのですか?」


 (周りは、え?そこから?と思っているが、顔には出さないで冷静を装い黙っている)


 「ああ、そうだ。他に聞きたい事はあるか?」

 「‥‥‥そうですね、村の子供はどうして名前がないのでしょうか?」


 (王宮の事は聞かなくていいのか?と思っているが顔には出さない)


 「ペーター家の事は聞いた事があるか?」

 「はい、平民の魔力奴隷を屋敷に集めていて、領主邸などが消滅した事ですよね?」


 「その為に、平民の子供の多くは隠されて育てられている」

 「誘拐ですか?」

 「そうだ、名を与える事で起きる不都合を心配しているのだろう‥‥」

 「家名だけではなく名も隠す必要があるのですね」

 「君はどうだ、新しい家名を誰かに知らせたか?」

 「まさか、その様な愚かな真似は致しません」

 「それなら、安心だ。それで、大量に収穫した麦はどのようにする予定だ?こちらで買い取る事も出来るが」

 

 「売りませんよ、すべてが上手に育つ実績もありませんし、収穫量で税金が決まる訳でもないので、備蓄に回します。村の人たちは去年はギリギリの食料だったようですし、今後はぶつぶつ交換になるので、お金の代わりに備蓄します」


 

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