冬の終わりが近づく
雪が止み、所々、地面が見え始め子供達が外で遊ぶには十分な日光が降り注ぐ、暖炉の魔石が小さくなる朝は、まだまだ寒いが、気持ちよく目覚める事が出来る。
「では、はじめましょう!」
ブリリアールは、土を掘り起こした後の倒れた場所に来て、あの暖かさを確かめる為に掘る。あの時、掘り上げたのは1mくらいだったので、希望が持って掘り始めたが、特に変化は見られない。
村の人たちは、まだ誰も気づいていない時間、その場所から静かに家の方向へ掘り進めていくと、雪が解けるスピードが速くなっている。
「何?温泉ではないの?」と思いつつも掘り進めると森の近くは雪が少ない、大木の下だからだと思っていたが、どうやら違うらしく、不可侵の森のギリギリを責めてみる。ここは、絶対に誰も近寄らない場所なので、掘り方も大胆になり、どんどん掘り進める。朝早くからすすめた作業はお昼になった。
昨日は配達の日で、今日は子供たちはやって来ないけど、掘り始めた場所に戻ると、大勢の男たちが集まっている。
「ブリリアール様、何かお手伝いいたしましょうか?」
言い訳を考えながら「その‥‥あの‥‥、そろそろ王都から持って来た苗や種を植える準備を始めようかと‥‥、その‥‥私はどの辺りに畑を作っていいですか?皆さんのお邪魔にならない様にしますので、教えて頂けますか?」
「我々の畑は、隣の村の境に有ります。この辺は森の影響で陽が当たりませんよ?」
「あ~~隣の村の方が南で私の家の方は北と言う事ですか?」
「よくわかりませんが、そんな感じです」
「では、この辺りは掘り起こしてもよろしいでしょうか?」
「ブリリアール様の村ですので、何をしても大丈夫です」
「では、マルコ、この村の地形や道などを地面に書いてくれる。森を背にして隣町はあちらでしょ?隣町に向かう道はどこから始まるの?」
マルコと村人たちは、ワイワイ、ガヤガヤ話しながら地面に地図を完成させていくと、村は意外に広いが、高低差があり使いづらく、端的に言うと私の家の方は低く、隣町方面は高い。
「この辺の低い土地は手付かずですね?それならわたくしの畑にしてもいいですか?」
「どうぞ、ブリリアールがお好きなようにお使いください」
「ありがとう、後、ここから離れた場所で少し火を焚きますが気にしないで下さい」
「???」
みんなは不思議そうにしているが、不可侵の森から飛んでくる枯葉を大量に収納した為、処理したいと思っている。腐葉土は山盛りあるので、本当に要らないのだ。
「ホホホホ~、では、戻りますね」と手を振りそそくさと帰って行く。
その後、土魔法で大きな穴を掘り、枯葉や枯れ枝などを燃やした。土は熱が伝導するのかしばらくすると、雪が解けて一面土色に変わった。
家の方まで雪が解けたので、適当に道を作りながら家に戻った。焼き芋にするにはあまりにも大きな穴だったので、家に帰ってからキッチンで芋を焼いて食べる。基本、食事は干し肉のスープが多く、パンやお菓子類は自分で焼いて、卵とベーコンは定番になっている。最初に作ったベーコンと干し肉で数か月暮らせて、追加で仕留めたイノシシもベーコンと干し肉にしたが、手をつけていない現状だ。
怪しい行動を誤魔化す為、畑を作ると言ったが、実際は、食料には困っていない‥‥はぁ
「面倒だけど動くしかない、小麦は多少備蓄できるのかしら?お米は出来る事は知っているけど、小麦は挽かなければ持つのか?村長としては、領主不在でも、やはり小麦を作付けする?でも、もうすぐ春だから今からはね~??村長に聞いてみましょう。種はいっぱいある」
次の日も、森側の枯葉等を処理し、誰もいない場所で、燃やすを繰り返し、地面の暖かさの源を探る。
「温泉、温泉、温泉が出たらいいな~~、マイ温泉~~」と、脳内はすでに温泉になり、毎日、せっせと源泉を求めて掘っていると、温泉ではない物を発見した。
「魔石だ!デカイ、こんなに大きな魔石を見た事がない!温泉ではなくて魔石の暖かさだったのか!」
これは村の財産にはなるけど、ガッカリ感が半端なくその場に座り込んでしまった。しばらく魔石を眺めて、クリーンで洗浄し収納して家に持ち帰った。
「私が欲しかった物はコレではありません」と言って真っ赤な魔石を叩いたら痛かった。娯楽の無い田舎生活で唯一の楽しみはここで終了したが、雪が解けている土地には5つも穴が開いていて、どうにかしなくてはいけなくなった。危ないので子供たちの配達も止めているので、ミルクもない。
「仕方がないので明日から整地をして、麦畑の畝も作りましょう」
マルコに聞いたらこの辺は寒冷地の為に、春に種を撒いて夏の終わりに収穫するらしいので、自分たちも手伝いたいと言ってくれた。彼らの畑はまだ雪が残っているので暇らしい。
限りなく平地を目指し土を捏ねて整地する。燃えカスに、収納している腐葉土も混ぜ合わせながらの作業は、3日で終わり、子供達の為に道路の計画もして、マルコに仕事を頼む事にした。
「種まきが終わったら、道にレンガを敷き詰めてくれますか?」
「はい、わかりました。それでですね、賃金はこの前よりも少なくて結構ですので、ブリリアール様の干し肉を分けて頂けないでしょうか?」
「あ~~、食料が足りないのですね」
(イノシシを仕留めて倒れた時に、お土産で持たせた物を分けたのだろうか?)
「いいえ、美味しくって、みんながもう一度食べたいと言ってまして‥‥」
「‥‥わかりました。明日、家に取りに来てください。種まきも明日からお願いします」
翌日、麦の種と干し肉を取りに村人がやって来た。ロバも、赤子を連れたお母さんも含め全員だ。彼らは、ブリリアール様の家にも興味があるが、目的は干し肉のようで、マルコに袋を渡すと女性たちも、嬉しそうにお辞儀をして麦畑に向かって行った。
「お母さん達も働くの?」と子供の1人に聞くと、
「畑仕事は全員で働いているよ。私達もこれから種まきのお手伝いなの‥‥」
6人は残って、なかなか畑に向かわないでモジモジしている。(わかった、わかりましたよ)
「みんなには内緒で、お茶とお菓子をあげるからここで食べて行きなさい」と、新しく作った外用のテーブルと椅子に座らせて、子供達が食べ終わるのを見ている。
「ふふふ、幸せだ~~」このような幸せな時間が、おとずれた事に感謝せずにはいられなかった。
◇◇◇◇◇◇
その頃、貴族学校の第2皇子は、雑談を始めようと目で合図している。ルーツィは、すぐに悟り、魔法陣を作動させた。
「それで、母上の家門の爵位は無事に侯爵家から移せたの?」
「はい、村や町は、私が管理する事にしました」
「ルーツィの家門は、嫡男が継ぐ事が決まっているのだよね?」
「はい、その予定で、私があの土地の管理者になっても、他者から探りを入れられていません」
「今回、大きなカモフラージュが居てくれて助かったな」
「はい、第2皇子が、侯爵に圧力をかけて下さったおかげです」
「母上は、王宮を離れても、戻れる場所があった方がいいと思っている。故郷ならそれが1番だ」
「あそこはすでに領主がいませんから、再び、消滅する事もないとは思いますが‥‥」
「そう言う意味では意外に安全だな。それで大金を持った彼女は大丈夫なのか?」
「国中がこの騒動を知っていますので、彼女がいなくなれば犯人はどちらかの家門だと疑われます」
「ルーツィが、そのようにしたのだろう?」
「‥‥‥」
2人は、仕事をしている振りをしながら話しているので、たまに書類を渡したり、それについての意見を述べているように装いながら、ルーツィは、また、話を続ける。
「第2皇子は、親切にした相手に、通信魔術具が煩わしいと言われた事はありますか?」
「‥‥‥いや、無いけど、そう言えば、ホーリーは特別な人間にしか使っていないようだね」
「彼女は子供で、平民が第2皇子に連絡を取る事はないでしょう」
「ルーツィは、ホーリーに聞かれたの?」
「まさか、ありませんよ。しかし、貴族からは、第2皇子の側近ですからよく聞かれます」
「それは、女性にって事?」
「‥‥‥」




