エピローグ
あの日の起死回生の魔法陣の爆発、あれから‥‥私は、この世界で息ができる様になった。
私の残りの人生は前世よりも幸多い事でしょう~~~
◇◇◇◇◇◇
この世界に産まれた時、私は前世の記憶が残って為に、慣れない世界で恐縮してしまい、根暗な性格が形成され、親兄妹の交流もなく、ただ生きているだけの伯爵令嬢になった。そんな生活の中でも、貴族学校の卒業1年前に、人生に少しだけ変化が起きる。
縁談が持ち上がったのだ。
両親が決めた婚約者は侯爵家次男で、彼の結婚の条件は『白い結婚』だ!白い結婚!すなわち夫婦生活のない結婚だった。
虐げられていた伯爵家には未練もなく、私はその侯爵家の白い結婚に飛びついた。婚約期間中は互いを知る為に、色々なパーティーにも出かけ、侯爵家との縁組で、両親も兄も当たりが少しだけ優しくなってきた頃に、突然の婚約破棄!それも、卒業パーティーでの断罪だ。
「ブリリアール、君は、このミサミサ男爵令嬢を影で虐げ、イジメているのではないか!そのような人間とは結婚は出来ない!婚約を解消してくれ」
流石にお決まりのパーティー会場の舞台でのやり取りではなく、貴族学校の夜の美しい庭園での出来事だが、その場で爆弾級の話を聞いていた貴族は多く、その後に続く言葉もさらに驚いた。
「子供が産めない君を娶り、君の魔力を我が家に取り込む必要がなくなったのだ。ミサミサの方が魔力量が多く、出産も出来る、これで根暗の君とも別れる事が出来る。ハハハハハハ~~さぁ、婚約解消だ」
「それは、その男爵令嬢とすでに床に入り、互いに魔力の確認もなさったと言う事で、よろしいでしょうか?このサル!」
ブリリアールは、いつも言葉少なめで決して怒り出す事はなく、悲しみを内に秘め涙を堪えているような伯爵令嬢を演じている。両親や兄、メイド達に何を言われても、ただ面倒なのでいつもそうして来た。しかし、両親は、今、この国で一番大切な娘の魔力を侯爵家へ売り、目の前の男は身に覚えのない罪を擦り付け、不妊といる不名誉までも貴族社会に発信した。大体、なぜ不妊?いつそんな検査が行われたの?
「クズスーザ様、わたくし達の白い結婚は、確か魔術契約が結ばれていますよね?あなた、内容を確認した事はございますか?‥‥サルは本当に死にたいのですか?不貞を働いた場合、10憶の支払いと侯爵家がお持ちの爵位を1つ私に与えると記載してありますよ。早く戻って確認した方がよろしいのではないでしょうか?時間がありませんよ」
「な!何を根拠にそのような‥‥あの時は、ただ、書類に署名しただけだ!」
「私もバカではありませんので、当然、魔術契約の紙を使い、ついでに、追加条項の欄がございましたので記入し、クズスーザ様にお渡ししましたが、確認なさらなかったのですか?この魔術契約は数時間後に魔術が発動されますよ。本来の魔術契約でしたら、既にこの瞬間に発動されるはずですが、お金をご用意するには時間がかかると思い、猶予を残して置きました。さぁ、私に感謝して下さいね」と不敵に笑う。
プリリアールの変化にクズスーザ、ミサミサだけではなくその場の貴族たちも直立不動で驚く。
「き、君はあの契約にそのような事を書き込んだのか?ひ、卑劣ではないか?」
「卑劣?卑劣とはあなた達の事を言うのですよ、侯爵家次男であれば10憶くらい、今、この卒業パーティーのここで私に送金して皆さんに見せて下さい。それくらいの覚悟はお持ちですよね?」
お金を要求する件に関しては、この場に証人がいた方が都合がいいので、野次馬も利用させてもらう。
クズスーザは、最近、何故か父上から多額の金額の送金を受けた。理由は教えてもらえなかったが、不正のお金ではないかと自分の父親に疑いも持っていた。まさか!!この事もプリリアールはすでに知っていたのか?ただの間抜けのバカだと思っていたのに裏をかかれるなんて‥‥
庭園で3人の様子を見ている卒業生たちに、これ以上恥をかく事は出来ないと感じ、父親の裏金に手をつける。
「10憶くらい、我が家門にとってははした金だ。今、この場で送金してやろう」とクズスーザは一度唾を飲み込んでから、自分のカードから送金する。周りの生徒たちは「お~~~」と、感心しているが、プリリアールは手を緩めない。送金を確認した後
「早く帰宅して、どの爵位を渡すか、ご両親にご相談なさった方がよろしいですよ。時間が‥‥」と助言する。
真っ青になったクズスーザは、その場にミサミサを残し、慌てて屋敷に向かって走り出した。その背中を見て、プリリアールは「命が欲しかったら、通信魔術具で早めにご連絡して下さい~~」とついでに助言した。
その場に残ったミサミサは、プリリアールを睨みつけるが、気にせずに寮に戻って、大声で笑う。
「この国のギルド(銀行)のシステムは素晴らしく、学生カードがそのまま自分の口座へ移行し、誰にもむしり取られる心配がない。地味令嬢が、15年生きてやっとあの家から出られる金融システムだ」
しかし、このような話が、このまま良い方向に進むとは思えない。侯爵家、伯爵家ともプリリアールに圧力をかけて、より一層の虐待が行われるはずだ。その為には結界が張れる家が必要で、何故だが最近の王都の不動産価格は下がる一方なので、平民街で購入する事にしよう。平民が1番いい楽だ~~。
夜中の12時前に、クズスーザから子爵の爵位を譲渡すると、悔しそうな「覚えてろ~~!!」の一言と共に連絡があった。人間って、罠に嵌ると口から出る言葉はどこでも一緒なのだと思った。
両親や兄からの通信魔術具は寮に戻る前に廃棄していたので、寮には面会拒否の届け出を出して置いた。卒業後、貴族学校の寮に滞在できるのも後3日、どうにか家を決めなくては、多分、命が無くなる。
貴族学校にはいくつか移動魔法陣が備えられていて、貴族の令息、令嬢は使用を許されている。本来なら従者と一緒でなければ外聞が悪く、令嬢一人では使用しないが、卒業式当日、従者のメイドは支度にやって来なかった。両親と兄の嫌がらせに乗ったのだろう。外聞の為にイヤイヤついて来たメイドは、酷いメイドで役立たずだったが、現代社会を生き抜いた私には、あまりその嫌がれせは聞かなかった。
生活魔法が使えるので入浴も洗顔もOKで、制服の為、着替えも大丈夫、髪も動画サイトを流し見していたので、器用に結えるし、化粧は大好きだと言える。(目立たなく地味方面への誘導できる程に)
中央の商業ギルドへの移動魔法陣は貴族の特権で、魔力があれば使用でき為に、家を買いに向かう。
◇◇◇◇◇◇
商業ギルドに到着すると、手持ちのカードで認証され個別の部屋に通された。このような事は初めての経験で、大金を動かした為の措置ではないかと、プリリアールでもわかった。
「プリリアール様、こちらへどうぞ」と案内を受け、席に着くと流行りの菓子が並び、お茶の用意が始まる。
「お茶のご希望はございますか?」と聞かれ、
「コーヒーはありますか?」と聞くと、少し驚かれたが「ご用意できます」と笑顔で返答された。
コーヒーは、多分、輸入に頼っていて、とても高価な物だと噂で聞いた事がある。どうせなら、金に物を言わせてこの世界のコーヒーを飲んでみたい。流石、中央のギルド商会と感心していると、商業ギルトの職員が入って来た。
「ようこそお出で下さいました。わたくしギルド商会のコマサッシュと申します。本日はどのようなご用件でお越しでしょうか?」
「はい、残金の確認と、王都で家を購入したいのですが可能でしょうか?」
「残金の確認は入店と同時にされていますが、王都で家を購入する事はお勧めいたしません」
「???買えないの、なぜ?」
コツコツコツと足音がし、コーヒーが運ばれて来た。香りは同じ、色も黒い、味はどうだろう?などと考えながらギルド商会の返答を待ってみる。




