森への魔法陣③
最終章2
女神が去ったその日は、王都の研究者によって森への魔法陣が試される数日前。第2皇子とアガシー先生たちは、その日にホーリータウンへ戻って来ている。多くの研究者が同行を求めたが、第2皇子は首を縦に振らなかった。
「第2皇子、彼らを王都の郊外に避難させたままで、よろしかったのですか?」とルーツィは聞く、
「ここは、ホーリーの村だ。彼女の許可もなく移動魔法陣で連れて来ることは出来ない」
「しかし、第2皇子の許可があれば‥‥‥」
「今回のこの作戦は、どこに居ても結果は同じだと推測している。昨日、王室に関わっていた商会や平民たちの財産、土地、建物までもすべて消滅したんだ。すでに、女神様は、大変なお怒りだ。このホーリータウンにホーリーが許可を出した人以外を連れて来て、すべて消滅する可能性がないとは言えないだろう?」
「そして、僕も今日は存在できているが、いつ‥‥」
「ーーー皇子!!‥‥、‥‥あの‥‥この後、王妃様に会われますか?」
「勿論、アガシー先生たちの変更がなければ、今晩は、母上と一緒に過ごす事になっているが、最初はホーリーの所に寄ろうと思っている」
「あの小屋に出向くのですか?」
「あぁ、顔を見ておきたい‥‥‥」
フェリクスは、小屋の前のタープの日陰で、優雅にお茶を飲みながらホーリーの小屋を守っていると、向こうから第2皇子一行がやって来るのが見えた。
「第2皇子、お忙しい中、ホーリーのお見舞いですか?」
「あぁ、いよいよ明日だ。どうなるかわからないが、最後に彼女の顔を見て礼を言いたい」
フェリックスは少し困った顔をして、
「王都の閉鎖前に、神官様が来て、この小屋に結界を張って行ったので、我々も入る事が出来ません」
「そ、そうなのか?」とルーツィが不満顔で聞く、
「ええ、そうです、貴族、平民関係なく入れなくなったのです」
「‥‥‥」
「彼女は、まだ、その‥‥存在しているのか?」
「私にはわかりませんが、アレクサンダーが、気が向くとウサギの肉を届けてたので、大丈夫だと思われます」
「そうか、邪魔をした、すまない、明日は、フェリックス先生はここで過ごす予定ですか?」
「はい、どこで過ごしても同じなら、僕はここで女神様に祈りを捧げます」
「わかった」と第2皇子が頷き、ルーツィたちを引き連れて戻って行った。
ホーリーの眠っていた小屋のベットサイドには20cm位の女神像が飾ってある。
他言無用の契約魔術を結んだあの日、ケルフとフェリックス先生が、自分の魔力を出し切り制作した女神像だ。
◇◇◇◇◇◇
ユルとジモールは、フェリックスが彫刻用に調達してあった材料を運び、ケルフはみんなが見守る中、女神像の製作に取り掛かった。
「ケルフ、僕が君へ魔力を送る。その間に女神像を完成させてくれ、長い時間は維持できないが、ケルフの出来る範囲でいい」
「坊ちゃん、だ、大丈夫ですか?魔力欠乏症から回復したばかりですよ‥‥その、また‥‥」
「多分、また、倒れる。眠りについたら王都から神官様を呼んでくれ、確か、ホーリーが許可を与えているらしいから、頼む、ホーリーとここを守りたいんだ!」
「わかりました」とユルとジモールは、大きな声で返事をした。
制作が始まると、フェリックスがケルフに送る魔力は、暖かな優しい魔力でその場にいたユルやジモール、プレジーがほっこりして見学していると、フェリックスが倒れた。しかし、ケルフは一心不乱に女神像を作り続け、完成すると、今度はケルフも倒れ込んだ。
急いで、ミスドルとスプリントは王都の平民神殿を訪ね、ホーリータウンにやって来た神官様を、どうにか探し出し、説得する。
「‥‥女神様の像を制作中に魔力欠乏症で倒れたのですか?」
「はい、フェリックス先生は、こうなる事を予想していたようで、神官様に助けを求める様にとおっしゃっていました」
「‥‥‥無謀だ」
「彼は、その‥‥」
「女神様の加護をその女神像の為に使い果たしたと思います」とスプリントははっきりと告げる。
「君は‥‥」
「僕とこのミスドル、ケルフ、プレジー、ユルとジモールは、フェリックス先生と他言無用の契約魔術を結んでいます」
「そうか‥‥、それで、女神像は完成したのか?」
「はい、20cmにも満たない大きさですが、ケルフとフェリックス先生の思いが詰まっている女神像です」と、胸を張って報告した。
神官様は2人の顔を見て、『すぐに向かおう』と言ってくれた。
ホーリータウンへ到着すると、ケルフとフェリックス先生に祈りの言葉を唱えて下さり、2人は直ぐに目覚めた。
「おふたりとも大丈夫ですか?」と心配そうに周りは覗き込んでいるが、目が覚めた当人たちは、意外にすっきりと目が覚めている様子だ。
「神官様、ありがとうございます」とそれぞれが熱心にお礼を言う中で、神官が、
「この小屋は、いい場所に有りますね。フェリックス先生の助言ですか?」とたずねた。
「はい、ここが一番いいと思いました」
「ええ、ホーリーにとっても女神像にとってもとてもいい場所ですが、少し、ホーリーの回復が遅いようなので、この小屋に治療の結界を張りたいのですがいいですか?」
「女神像と一緒ですか?」
「そうです」
「アレクサンダーは入れますか?」
「勿論、入れます。アレクサンダー以外は入れませんが、ホーリーが目覚めれば結界は解かれます」
「お願いします」とフェリックス先生が頭を下げると、その場の全員も頭を下げた。
そして、森への魔法陣発動の数日前の夜中、ホーリーは起き上がり、アレクサンダーに跨り、岩場の結界から森へ向かって行った。その姿を見送ったのは、フェリックス先生とスプリントだけで、2人はただホーリーを見送るだけしか出来なかった。
「ホーリーは、やはり行きましたね‥‥」
「第2皇子は、どうお考えかはわからないが、僕らの力が、女神様の結界を、どうにかできるとは到底思えない。その事実を第2皇子が理解できる事を願うよ」
フェリクスとスプリントは、立ったままホーリーが向かった岩場をじっと見ていると、後ろから声をかけられた。
「僕は、当然、わかっているよ。ホーリーを女神として崇める事はしたくない。それは、彼女の望みではないだろう‥‥この国が滅んでも、残っても責任は僕が取るよ。それが、長年続いた皇室としての女神様への贖罪だと思っている」
「第2皇子がクレバーな方で良かったです」と、フェリックス先生は第2皇子に微笑んだ。
◇◇◇◇◇◇
ホーリーとアレクサンダーが急いで向かったのは、森の中心にある遺跡だ。遺跡の周りは湿地帯で、昼夜問わずに、女神像に光が当たって、水面に女神が浮かんでいるように見える。
「月も太陽もない世界、ここだけはなんて幻想的なのでしょう、周りの草や木が動きながら女神様を持っていて、花は美しく咲き乱れている。ここで、この魔法陣を発動させれば、消滅は免れるはず‥‥」
時間がない、この場所に来るまでに2日以上かかってしまって、ホーリーもアレクサンダーもクタクタなのだ。あまり眠っていないし、木の実以外は食べていない。鑑定しながら食料を探すのにも魔力を使うからだ。
「出発前の準備は必要だった‥‥、疲れた~~、でも、計算を解かなくては、第2皇子達が魔法陣を発動してしまう。急げ、急げ、イヤイヤ、ゆっくり、ゆっくり、間違えないように‥‥」
数式を解いていると、ミルサーチがこの世界からいなくなった日に、提出した報告書を思い出す。初めての虚偽報告、本当にアレで良かったのだろうか?お母さんはペナルティが発生すると言っていたけど、この世界は一体どうなるの‥‥?などと考えていると、第2皇子が仕掛けた魔法陣が光り出した。
「ヤバイ!急がなくては、この世界が消えてします。考えろ、考えろ、少ない知識を絞り出して!!」
森全体に光が広がって行く、大地が揺れて、木々が倒れ込んだ。鳥たちは一斉に飛び立ち、魔物が姿を表し始める。
「怖い、怖い、でも、これで発動するしかない、雇用主様、申し訳ありません。お母さんを見つけ出しましたが、私は、この世界にとどまり生きたいとわがままを言いました。お許しください!!」
「魔法陣、発動~~、行け~~、計算は合っているのか??」
「虚偽の報告をしました。申し訳ございません!」と大声で叫びながら発動したのがいけなかったのか、躊躇った瞬間の魔法陣はまさかのエラー、その後、エラー発動中、エラー発動中の文字が何度も頭に響き大爆発!
森の中で目が覚めた後に初めて目にした文字は『解雇通達』
ここまで、読んでくださったすべての方に感謝します。『虚偽報告がバレて転生しなくてよくなりました』は、ここで一度、終了いたします。この後は、未完結の小説を更新する予定(?)で、毎日の更新は出来なくなります。
30章以上も余裕をもっての毎日更新を目指しましたが、ここで一区切りと指せていただきます。今後は、少し苦手なホーリー達の恋愛話も含めて、長くお話を続けたいと思っています。
毎日8時には更新できませんが、ぼちぼち、がらがらの8時に、お会い致しましょう。
本当に、ありがとうございました。




