森への魔法陣②
最終章1
「この女神像には女神の加護が溢れている」
「そんな‥‥‥、僕‥‥‥知りませんよ。僕が、女神様の加護を頂ける理由もありません」
「ケルフ、この国の中で、女神像とミルサーチさん、両方を知っている魔力持ちは、ケルフとホーリー以外はいない」
「でも‥‥‥、ホーリーは‥‥‥ミルサーチの‥‥?」
「ホーリーは、一度も、自分の母親が女神に似ているとは言っていない。多分、敢えて言わないんだ」
「ど、どうしてですか?」
「私は、ミルサーチさんは他国の貴族を名乗っているが、女神様かその使いの者だと思っていた。自分の馬鹿げた推測の為、何度も平民神殿に通い、神官たちに近づき知り合い、勧誘したり、詰め寄ったり、多額の寄付をして買収も試みたが、残念ながら答えは得られなかったが、眠りについている時に来た神官様が、意識が無くなる寸前に告げたんだ、女神様のご加護を授けますって、そっと、小さな声で、そして、目が覚めてから自分は女神の加護が授かっていると感じた。その感覚は、王妃様を訪ねた時も、今、ここに眠るホーリーにも感じられる」
「私が、ホーリーの家の王妃様の部屋を訪ねた時、女官は一心不乱に祈りの言葉を唱え、自分の魔力を王妃様に送っていたよ。希望を見出したようで、彼女は私の存在にすら気づかなかった、きっと、神官様が彼女に何か伝えたいに違いない」
「先生は、なぜ?その事を第2皇子達に言わないのですか?」
「女神の機嫌を損ないたくない、女神様は王室が嫌いだがらね!私は、加護を与えてくださった女神様は、きっと、森とホーリータウンは残すおつもりだと考えた。ここは、誰もがホーリーを大切にしているし、ホーリーの村だから、僕は残ると思っている」
動揺を隠くせないケルフは、
「カ、カーズ村、カーズ村もホーリーを大切にしていますよ。だから、大丈夫ですよね?」と、質問する。
「それは、わからないが、村長である君は、絶対に取り乱すな!理由はわかるだろ?落ち着け、ケルフ」
「はい、今の僕に出来ることは女神像を作ることで、‥‥わかっています‥‥わかっています」
ここにいる全員は、震えながら頷くケルフを、見てそれぞれが色々な事を考え始めた。
「それで、ケルフ、女神像はどのくらい売った?どこの町のどの商人が買い取ったかわかるか?」
「わかりません、昔は、馴染みの商人しかカーズ村には来ませんでしたが、今は、遠くからも来ていますので、知らない商人も多いです」
「そうか‥‥、もしかしたら加護付きの女神像が、国中に行き渡っていれば、この国も救われるかと思ったが、今は、売ってないのだろう?」
「はい、完売しました。でも、アナベルとグレイにもプレゼントしました。今でも彼女たちが持っていれば、僕の作った女神像の加護の鑑定ができるかも知れません」
ケルフの話を聞いて、ミスドルはアバベルたちの元へ走って行った。
ユルとジモールもソワソワし始めて、
「フェリクス様、ここへ材料を運べばよろしいのでしょうか?足りない材料はないと思われますが、確認に向かってもよろしいですか?」
「ああ、プレジーは人足たちにここにもう1軒小屋を建てる様に調整してくれ、ケルフはしばらくここで作業に入る為に父上と相談するように、当然、ここでの作業は内密にして、村の仕事を変わってもらえ」
「はい」
その間、フェリックスは土地を整え、基礎を終え、ミスドルが持って来た女神像を手にして鑑定する。
「ミスドル、もう1体はどうした?」
「アナベルが領土に送ったそうです。グレイは、とても気に入っていて手元に残していました」
「そうか、この女神像にも加護が与えられている。ワイバーンの近くに置いてあげるといい」
ミスドルは顔がパッと明るくなって、「フェリックス先生、ありがとうございます」と頭を下げると、ワイバーンの元へ向かって行った。
フェリックスは、ワイバーンが順調に回復して、研究者たちの森への魔法陣が、早く発動する事が、良い事なのか、わからないと思ってミスドルの背中を見ていた。
「‥‥ホーリー、君はどうしたい?‥‥私はどうしたらいい‥‥」
◇◇◇◇◇◇
フェリックスがホーリーに問いかけた時、ミルサーチとホーリーは、この国の事を真剣に話し合っていた。
「お母さんは残したくないの?この国を‥‥、この国の女神様なのに‥‥‥」
「そうね、出来れば残したくないわ‥‥、邪悪な者は霧に消えたけど、まだ、すべてではない、だから、一度、すべてを浄化する必要があるのよ。あなたが覚えているあの子供の国も、浄化対象の国だった」
「‥‥でも森は、森は残るのでしょ?」
「ええ、しかし、その聖域にも彼らは手を出そうとしているのよ。わかるでしょ?」
「森が守られればいいの?森以外の土地で、暮らせば、罪のない人達は救われるの?」
「ホーリー、彼らが天界にいる意味を考えた事がある?神判を待つ身で、永遠の消滅、転生、そして、今後、あなたの様にもう一度、生を受けるか、もっとひどい場所に送られるかよ、その神判は私は出せないけど、女神として彼らの居場所を奪う事は可能なの、このミルサーチに起きた出来事を考えなさい」
「ミルサーチは、我が子にすべての魔法を送って息を引き取った、でも、その子も亡くなって今のあなたがいるのよ。私の世界で、その様な事があってはならないわ」
「確かに、ペーター家のした事、そして歴代の国王のしてきた事は許されないけど、お母さんも今は迷っているはずよ、本当に彼らを消し去るの?第2皇子は、きっと、これからは女神様を祭って魔力を奉納して下さるわ、彼にも、王妃様(母親)を大切に思う心があるのだから‥‥」
「ホーリー、あなたは、この国に残りたいの?優しいお父さんが待っているのよ」
「残りたい!ここで生涯を終えて、それから前に進みたい。お父さんはきっと許してくれる。私を理解してくれるお父さんだから、大丈夫だと思う」とホーリーはミルサーチにキッパリと言う。
「‥‥‥」ミルサーチは目を閉じ考えている。
「‥‥もしかして、私がここに残ると、お母さんと、また会えなくなって、忘れるの?ねぇ、教えて」
ホーリーは、涙を流し、ミルサーチに聞く、
「何かしらのペナルティが発生すると思う。あなたがここで生涯を終えて、地上で過ごすようになっても、私は、あなたの近くに存在できるはず‥‥‥。ああぁ、ホーリー、愛しているわ、私の事は忘れても、愛されていた事だけは忘れないで欲しい、できる?」
「できる、絶対に忘れない。お母さんが長い間、私を愛して、探してくれたように、私も愛して探す」
「では、かわいい我が子、私は、あなたの望みを叶えましょう」
「おかあさん‥‥、ありがとう、私のわがままを聞いてくれて、今度は、私、絶対に忘れないから、大丈夫だから、お母さんは先に戻って、お父さんと出会って私を産んでね。絶対だよ‥‥」
初めて母の胸の中で、わがままを言う、自分のわがままを聞いてくれる本当の母親を忘れたくはない。地上に戻った時、どのようなペナルティが待っているかはわからないが、今は、この国を残したい。
「ごめんね、お母さん、お父さん‥‥」2人は抱き合い慰めあった。
◇◇◇◇◇◇
「ホーリー、急いだ方がいいわ、第2皇子達が新しい魔法陣を発動させるつもりよ」
「え?ダメなの?」
「あの魔法陣では失敗する。ホーリー、最初のペナルティよ、森に入ってこの魔法陣を完成させなさい。これが出来るのはあなたしかいないわ!」
ミルサーチから手渡された魔法陣は、不完全な魔法陣で、抜けている数式は‥‥、
「ナニコレ!!数学じゃない!計算するのどうして?私、数学苦手なのに~~~ペナルティがすぎる」
「ホーリーに戻って、森に入りなさい、正解を導き、この魔法陣が成功したらこの国は残るはずよ」
「お母さん、お母さんは、女神様でなくなるの?」
「そう、森の結界だけが残る」
「お父さんの所に行くんだよね?」
「‥‥‥実は、息子も探しているの‥‥」
「え??わたし一人っ子だよ」
「何度も、何度も、色々な世界でお父さんと出会って恋をして、結婚したから、その時々で子供を授かったの、だから、雇用主には任務失敗の報告をしてくれる?」
「それって!!虚偽報告をするの!!」
「そうよ、そうすれば、息子も探しに行ける。実は、この国の消滅と同時に、あなたと私は前世に戻って暮らせるはずだった。しかし、この国であなたは生涯を終えてから生まれ変わりたいのよね?それには、任務が失敗に終わったと報告するしかないの、あなたが報告する前に、私は他の世界に転生する。ここでの女神の役目はこの森を守る事、そして、雇用主からの任務は、この国の消滅よ。だから、消滅失敗に終わった後は、しばらく姿を消す事にします。丁度いいから、心配の要らない息子の様子を見てみたいの、ホーリー、お願い、待ってる‥‥今度こそ、親子3人で暮らせる世界を‥‥」
◇◇◇◇◇◇
話し終わったミルサーチは、消滅し、霧になり消え去った。その瞬間はわずかな時間で、さよならも言えなかった。ホーリーのわがままをそのまま聞いてくれた結果だ。
涙を流したホーリーは、ホーリータウンの小さな小屋で目が覚めた。
側には、アレクサンダーが立ったままウトウトしている。(かわいい)手を伸ばし撫でる(かわいい)
「アレクサンダー、ただいま、私、森に入らなくてはならないの、お願いできる?」
「ウヒヒヒ~~」と、元気よく返事が返って来た。ホーリーは、ミルサーチに渡された魔法陣を手にアレクサンダーに飛び乗った。
「急ぎましょう!!」




