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女神様④


 第63章


 王宮の封鎖が解かれ、国を救うために国中から研究者が集まる。ここに集まった人たちは善意の人、この国の中で、今、1番消滅の確率が高い王都の王宮に集まって対策を考えてくれる人、諦めない人。


 第2皇子が、

 「こんなにたくさんの人が、集まってくれるとは思っても見なかった。ここでは身分は関係なく、貴族も平民もなく意見を出し合い、森に新しい魔法陣を発動する為に協力して欲しい」


 「はい」高揚した顔で返事をする人、涙目の人、既に引退した人、この国には色々な人がいる。


 それからは、不思議なもので王宮は、あっという間にアガシー先生の研究所のように変わり、平民たちも、遠慮せずに、食事や日用品の売り込みにやって来るようになり、かつて働いていたメイドや女官達、文官たちも戻って来て各々の仕事を始めている。


 そして、数日後、ホーリータウンへ王都の平民神殿から神官がやって来た。


◇◇◇◇◇◇


 同行して来たのは第2皇子の側近のルーツィで、マリアさん達は涙を流して感謝を伝え、従者2人はずっと頭を下げる。


 「フェリクス様には、こちらも色々助けて頂きましたので、今回、少しでもお力になれればと伺いました」


 マリアやユル、プレジーは、良くフェリックスと一緒に平民神殿に同行していたが、フェリックスが神殿で、何をしていたかは知らないが、あの行動にも、このように意味があったのだと心の中で思った。


 「神官様、坊ちゃんの家門のステッキは消滅しています。現在、貴族の証はございません、どうか、坊ちゃんをお救い下さい。坊ちゃんは平民になる事を心から望んでいました。これは、本当に本当です。そして、誰よりも女神様を大切に思っていました。どうか、よろしくお願いします」


 マリアの熱心な言葉に耳を傾け、王都の平民神殿の神官はただ微笑み頷き、治癒魔法の祈りを唱える。


 「創世の女神に祈りを捧げます。眠りについた民を救いの手を、我が地に与えし魔力を守り、この地をお導きなさる創世の女神に祈りを捧げます。眠いりについた民を救いの手を、我が森に与えし魔力を守り、この地をお導きなさる創世の女神に祈りを捧げます。眠りについた民に救いの手を‥‥我が霧に与えし魔力を守り、この地をお導きなさる創世の女神に祈りを捧げます」


 第2皇子やホーリーが唱えた祈りと同じだが、心に染み込むようで、何かが違うように思えるとその場で立ちあった者は感じ取っていた。


 神官様が、心を込めた祈りを3回繰り返した頃、フェリクス先生の顔が歪み始め意識が戻って来るのが見て取れた。


 「坊ちゃん!!坊ちゃん!!」

 「フェリクス様、フェリクス先生!!」みんなの呼ぶ声に微かに目を開け、右手を少しだけ上げて、また、眠りについた。


 「あと少しで、目が覚めるでしょう、体力も有ります、大丈夫ですよ」


 「神官様、ありがとうございます。このお礼は必ず致します。ありがとうございます」


 その後、ホーリーの所に出向き、同じように祈りを捧げたが、ホーリーは変化が見られない。


 「ホーリーは、多少、時間がかかりますが、目覚めるでしょう」と、あっさり告げる。


 側で見守るアデルとミルは心配そうな顔で神官を見ると、神官様は「大丈夫」とだけ言った。


 神官はマリアの強い引き留めで、お茶を頂いていると、王妃の女官が、突然、跪き、

 「どうか、王妃様にもお祈りのお言葉を頂けないでしょうか?1回でもいいです。王妃様は皇室籍ですので、神官様の治癒は届かないのは知っていますが、お願いします。どうか、王妃様にもお慈悲を‥‥」


 「‥‥‥」


 「わかりました、やってみましょう」


 そして、神官は王妃様の寝室に出向き、祈りの言葉を唱える。


 「創世の女神に祈りを捧げます。眠りについた民を救いの手を、我が地に与えし魔力を守り、この地をお導きなさる創世の女神に祈りを捧げます。眠いりについた民を救いの手を、我が森に与えし魔力を守り、この地をお導きなさる創世の女神に祈りを捧げます。眠りについた民に救いの手を‥‥我が霧に与えし魔力を守り、この地をお導きなさる創世の女神に祈りを捧げます」


 言葉が終わると、一瞬だけ王妃の瞼が動き、女官は手で口を押えながら嗚咽が漏れないように、ただひたすら頭を下げる。この時、王妃の寝室には女官だけしか入れず、神官が女官に何を告げたかはわからなったが、この日を境に、女官は王妃の側を離れる事はなくなった。


◇◇◇◇◇◇


 一方、一向に目覚めないホーリーを心配して、アデルとミル、リウスはホーリーのベットの周りに魔木や魔花の植木鉢を並べ始めた。


 「ホーリーは魔力が無くなって眠りについたのだから、魔力のある木や花が側にあった方がいいでしょ?」


 「そうだよね。大量の種を体中に貼り付けて戻って来てくれたんだ。少しくらいホーリーの為に使ったって、いいよね?」


 「アデル、村長からミルサーチさんの像は貰った?」

 「うん、本当は、ミルサーチさんが側にいてくれたら良かったのだけど、ミルサーチさんも、まだ、目覚めないって、神官様が言っていたから‥‥」


 「ホーリー、お願いだから早く目が覚めてね。そして、今度こそ、お母さんとここでのんびり過ごしたらいい、だって、その為のホーリータウンだから‥‥」


 小さい女の子の話を聞いていたスプリンドは、

 「そうだ、アレクサンダーの側の方が良いのではないか?」と言い始めた。


 「アレクサンダーはホーリーと似た魔力を持っている。魔木や魔花よりもアレクサンダーが側にいた方がいいと思う」


 「でも、流石に、ここにはアレクサンダーを呼べませんよ。どうしますか?」


 「岩場の近くに小屋を建ててもらおう、今は、夏だしほぼ外の状態でも大丈夫だろう」


◇◇◇◇◇◇


 スプリンドの考えを人足に伝えると、すぐに人は集まり、グリークさんが設計を始め、開閉式の小屋が出来上がった。昼間は誰もがホーリーの様子を見に来れる様に、1面は開けっ放しで、夜は、扉を閉めて、スプリントとミスドルが小屋の近くで仮眠を取っているが、実は、ホーリータウン全員で見守っている。


 その日、ホーリーがアレクサンダーの背に乗せられて村に現われた時、葉っぱや木に覆われていて、大きな傷は目立たなかったが、それでも顔や手足の一部から出血も見られた。


 バーグ先生が治癒魔法をかけながら傷口や骨折箇所を探し、シママのお母さんも傷薬や包帯を用意してくれたので、どうにかこの状態まで回復している。その後、フェリクス先生の安否確認の為に、誰もが錯綜し始め、ホーリーは眠りについたままになった。スプリントは魔力欠乏症の患者のケアを良く知っている様で、3人の女の子たちに指示して、ホーリーの看護に当てた。そして、王都から神官がやって来た。


 「スプリンドさん、ホーリーはどうですか?妹たちに何かできる事はありますか?」

 「イヤ、特にない、この小屋が快適過ぎるからここにいるだけだ」とプレジーが聞く


 「夏になって、少し暑くなってきましたが、本当にここは涼しくて快適ですね?」


 「ああ、風も爽やかで、この国が未曽有の危機を迎えているとは信じられないよ」


 「‥‥‥、ホーリーは、大丈夫でしょうか?その‥‥」

 「大丈夫、アレクサンダーが側を離れないで、見守っているんだアレクサンダーを信じよう」


 「そうですね。では、ウサギをもらって行きますね。アレクサンダーがホーリーの為に狩って来てもホーリーは食べられないので、こちらで処理しておきます」


 「ありがとう、助かるよ」


 小屋は、ホーリーの趣を大切にして、キッチン、トイレ、浴槽、ソファやテーブル、氷室もあり、スプリントは研究を続けながら常にホーリーの側に居る。スプリントよりも側に居る時間が長いのは、当然、アレクサンダーで、ともに眠りについて、たまに狩りに出かけウサギを補充する。


 静かな夜、スプリントは、「アレクサンダーは、ホーリーの使い魔なんだろう?」と、聞いたりもしてアレクサンダーと交流を持とうとしている。



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