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女神様③


 第62章


 今日は、快晴で風もなく、ワイバーンで調査に向かうには最良のお天気。


 「ホーリー、おはよう、体調はどうだ?」とみんなの前で確認される。

 「いい感じで、飛べそうです」


 この日のホーリータウンの雰囲気は、いつもの長閑な雰囲気と違い、誰もが遠巻きにホーリーの事を見て、顔には心配だと書いてある程に緊張している。


 「いいか。上空で意識が飛びそうになったら、すぐにフェリクス先生に知らせるんだ。出来るか?」

 「はい、背中を叩く合図を決めてあります」


 ホーリーは、安全の為にワイバーンに乗って、フェリクス先生に括りつけらる。今日の仕事は、品不足になった種を仕入れる為に、全身に魔法陣を貼り付けられての出発だ。


 出発時にはケルフとプレジーも駆け付けてくれて、「頑張れ~~、気をつけるんだぞ~~!!」と、手を振ってくれた。


 ワイバーンに乗って浮上した時に、不機嫌そうなアレクサンダーの姿も確認できて手を振る。


 「先生、凄いですね。本当に空の上を飛んでいるんですね」


 「ああ、背中に書いてあるアガシー先生たちが作った地図は見たか?その地図に書き込めそうな物を発見する事が最初の任務だ!まずは川沿いに転回するぞ、見失うな!!」


 「はい!」


 「ホーリータウンの川が、結界に沿って流れているわかるか?」

 「はい、確認できました」


 「そして、遠くに見える石壁に囲まれた所が王都だ」

 「意外に近いですね。リンさん達は、石壁から出て森の近くの土地をかったのですね?」

 「そうだ、あの辺の土地をすべて購入したらしい」


 (!!大金持ちだ)


 「その後も、森が続いているのが確認できるか?」

 「はい、わかります」


 「しばらくすると、ミスドルたちの領土が見える。少ない土地だが、彼らの領土はこの森と隣接しているらしいぞ、最近、アナベルから領主へ森の近くに移住するようにと知らせたようだ」


 「そうですか‥‥、パニックにならなければいいのですが‥‥」

 「リンさんが王都で派手に動いていて、第2皇子が魔木や魔花を育てる様に通達したんだ。そろそろ気遺族たちもこの森に秘密があると思いつくだろう」


 「もうすぐで1周が完了する。地図の確認は大丈夫か?」

 「はい、今の所、確認できています。先生の背中に書かれている通りに湖も発見できました」


 「女神様のお言葉の中に霧があっただろう?霧が発生するには水が必要だと思うのだが、湖は森の北西の端にある。魔法陣の中心にしては不都合だ。ホーリーは霧の事はどう思った?」


 「わかりません、でも、水が必要だとすると、川も流れていますよね?」

 「そうだ、しかし、森に流れている川も中心から少し離れているように思えないか?」


 「そうですね」


 「地形の確認が終わったので、これから、僕たちが魔法陣の中心だと思っている場所に向かう。そこは葉や種が大量に採取できる場所だから、気をつけろ、自分の魔力を制御しろ!!恐怖で焦ると、君は魔力を使う癖があるからナ」


 「そこは、こ、怖い所なのですか?魔物が襲って来るとか?」

 「ワイバーンに、小さな魔物は寄って来ない、向こうから逃げていくし、大物は出会った事はない。今日の使命は種の採取だ、これからその場所に向かう、いいか、怖かったら目をつぶっていればいい、葉っぱや木の枝に交じって色々な物が俺たちに寄って来るだけだ。心配するな、では、旋回して向かう」


 今のホーリーに恐怖心がないと言えない、実は、怖いのだ、上空での空気の変化を感じ、色々な物を目にした時、焦ったホーリーは、ケルフが作ってくれた女神像をポケットから取り出し、祈る。


 (女神様、どうか安全にホーリータウンへ帰れますように、それから、種が沢山欲しいです)


 フェリクス先生の背中に頭をつけて、フェリックスの魔力で、魔法陣が最大限に発動するように小さくなっていると、突風が舞い上がり、突然、大量の草や葉っぱ小枝が降り注ぐ、あまりの勢いにワイバーンが傾き、ホーリーの手からケルフの女神像が離れる‥‥。


 「あっ!!」と、思った時には、女神像が手から離れ、森の中に吸い込まれて行く‥‥


 女神像は回転しながらゆっくりと森に落ちて、地上に落ち、そのまま森の中心に吸い込まれ、森全体に巨大魔法陣が光りワイバーンに乗っていたフェリクス先生とホーリーは結界から弾きだされた。


 ホーリーの記憶は、ここで途切れ、目の前にはミルサーチが居て2人はボロアパートの豪華な寝室。


◇◇◇◇◇◇


 「目が覚めた?体調はどう?」とミルサーチがホーリーを覗き込む。


 「お母さん‥‥だったのですね」


 2人の間には沈黙が続き、ミルサーチがホーリーの次の言葉を待っている。


 「あなたは、私の本当の母親で、この国では女神として存在しているで、合ってますか?」


 「正解よ、やっと気づいてくれたのね。この国の任務でも気づかなかったら、あなたはもう地上に還れなかったのよ。今までの任務の時も常に近くにいて、守って来たけど、すっと、気づいてもらえなかった」


 「わたし、幼い時の記憶がないの‥‥、お父さんとずっと2人だったから、あなたはいなかった」


 「そうね、私たち夫婦には、それぞれの任務があって、片方が残る事にしたの、ごめんね。それで子供を失うなんて親失格ね。でも、何年も何百年かかってもあなたを取り戻したかった。結局、あなたの死を受け入れられなくて、天界にまで来てしまったわ‥‥‥」


 「ここは、天界なの?普通の世界ではないと思ったけど、神様もいるの?」


 「私にもわからないけど、神は、きっと、もっと上の世界にいらっしゃうるでしょう。ここでの任務は女神になってこの国を残すか決める事だから‥‥」


 「それ、言っちゃっていいの?体が消滅してしまわないの?」

 「大丈夫よ、既に次の任務も受けているから‥‥」


 「何から話していいか‥‥」

 「ホーリー、まだ、時間はあるわ、だから、今は、休みなさい」と言って、ミルサーチはホーリーの目の上に手を乗せてまた睡魔の中に送り込む。


◇◇◇◇◇◇


 あまりにも激しい波動が国全体を襲った。森の魔法陣の発動の余波だ。


 ホーリーが、女神像を落とし魔法陣を光らせてからフェリクス先生とワイバーンはどこかに飛ばされ、ホーリーは岩場の結界の中へと落とされた。それを発見したのはアレクサンダーで、村中が大騒ぎしている時に、ホーリーを背に乗せて家に戻って来たが、ホーリーは眠ったままだ。


 その後、フェリクス先生も近くの村で保護され、ワイバーンもミスドルの元へ戻って来たが、フェリクス先生もホーリーも目が覚めない為に、事情がわからない。


 しかし、波動の余波で国の1部が消滅し、行方がわからなかった国王陛下の派閥は全滅し、第2皇子はまた表舞台に戻って、初めて国民への説明責任を果たす。


 その内容は衝撃的で、皇室が長い歴史の中で隠蔽してきたことを明かす事になった。王都の魔法陣の事も、我々を守って下さっていたのは女神様だったことも、助かる道は、森の結界を解く事だけだと言う事も正直に話し、国民に許しを請う。


 そして、ホーリータウンは、ホーリーの目が覚めないので、多くの研究者を迎え入れられない為に、第2皇子とアガシー先生たち、バーグ先生たちも王都へ戻る事になった。


 「我々は王都へ戻る、そして、国中の研究者が集まり森の魔法陣の研究を始める。しかし、母上はここに残してもいいだろうか?」


 「わたくし達が、命に代えても王妃様をお守りいたします」と、女官やメイド、フェリクス先生の従者たちも跪いて承諾してくれた。


 スプリンドとミスドルは、「僕は、ここで調査を続けます」と主張し、ホーリータウンに残る事にした。


 出発前、マリアさんが、第2皇子に駆け寄り、

 「王都の平民神殿の神官をこちらに派遣して下さりませんか?坊ちゃんとホーリーを助けられるには彼らしかいません、お願いします。どうか、お願いします、お願いします」


 ユルとジモールも跪いて、第2皇子一行に頭を下げると、その場の全員も一緒に跪いた。


 「わかった、そうするよ、これまでの行いを謝罪して、彼らに、ここに来て2人を診てもらうようにお願いしてみる」


 「ありがとうございます」


 

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