女神様②
第61章
スプリンド先輩と一緒に村の様子を見に行く事になった。ホーリータウンは物凄い勢いで整備され、知らない間にお店も出店されていた。
麦畑は村の中心に生まれ変わり、シママのお母さんの薬局や野菜市場、ベル商会までもが出店している。
プラザ村のベル商会の職員たちには、まだ、ホーリータウンへの許可を与えていないので、簡易店舗が出来上がっても店員は派遣できない為に、可愛い看板娘が3人で店番をしている。
「可愛い娘さん達、売り上げはどうですか?」
「ホーリー、久しぶり!外にでてもいいの?」
「大丈夫だよ、たまに出ないと、村がどんどん変わっていて追いつかなくなるよ」
「だよね~~フフフフ」
「店番、楽しそうだね?」
「うん、カーズ村に来ているベル商会の人に色々な事を習ったんだよ。叔父さんに習って、文字が書けて計算ができて良かったと思った。店番はね~~、すごく楽しいよ」
「カーズ村はどう?この時期、商人の往来が多いよね?」
「うん、いつもならカーズ邸から出られなくて良くわからなかったけど、今年は、街から来る人が多いみたい。隣の村にも移住者の申し込みが増えていて、お兄ちゃんが忙しそうにしていた」
「ケルフも大変だね、それで、ベル商会の人たちもカーズ村に家を建ててるの?」
「まさか、そんな暇は全然ないよ。去年よりも農産物を求める商人達も多いけど、ベル商会の噂を聞いてやって来る商人も沢山いるから、今は宿屋に泊まっているよ。宿屋もいつも満室でお母さん達も大変そうなの、だから、ホーリーのお世話ができないのだけど、大丈夫?」
「大丈夫‥‥、王都のメイドが食事の用意をしてくれるの、野菜たっぷりで‥‥」
「フフフフ、ホーリーも大変だね」
「だから、リリーさんのご飯、いつでも歓迎するって言っておいてね!バイバイ~~」
◇◇◇◇◇◇
グリークさんや人足たち、その奥様や子供達までもが、行く先々で挨拶をしに来てくれるので、少し、人の少ない場所にスプリンド先輩を誘う。
「スプリンド先輩、この岩場は私の拙い能力で結界を張ったのですよ」
「どうして?」
「ウサギが魔物に変化してしまったからです」
「え?」
「良く食卓に出るウサギは、魔物です。ほら、あそこにいます」
「‥‥‥」
「それで、私が結界を張っても、アレクサンダーは何故かは入れるのですよ。どうしてでしょうか?」
「君とアレクサンダーの魔力が似通っているとか?それは調べてみないとわからないな‥‥」
「実は、この先には森があって、アレクサンダーは、2つの結界を通り抜けて森に入っているのではないかと思っているのですが、スプリンド先輩に調べる方法はありますか?」
「それは、アレクサンダーに映像魔術具を装着する‥‥あっ、駄目か‥‥」
「そうなんです、多分、魔術具は作動しません、だから、私がアレクサンダーと一緒に森に入っても何もできないですし、うっかり、スタンピートや消滅が起きる可能性もあります」
「どうして、この事を相談しなかった?」
「自分に自信がないからです。第2皇子のような魔力量もなく、森に入った恐怖で魔力欠乏症に罹ると思って、言い出せませんでした」
「僕に話してくれたのは‥‥」
「スプリンド先輩の妹さんも魔力が上手に扱えなかったのですよね?魔力を上手に扱えて、魔力欠乏症にならない為に何か指導して欲しくて話しました」
「僕はね、君はそこまでする必要はないと思っている。この国が消滅するとしても、幼い子供を森に向かわせる事は出来ない。例え、僕の家族が生きていたとしても、僕は君に行くなと言うよ!」
スプリンドは、強く引き留めるが、ホーリーが森に向かう準備していると感じている。
スプリンドとの秘密の話を終えて家に戻ると、今日、ワイバーンで調査に向かっていたアガシー先生たちが戻って来ていた。
「上空で改良した映像魔術具は、使えましたか?」
「いや、まったく駄目だった。地道に頭に記憶して行くしかない‥‥大まかな地形図は空で書いた」
「この前、集めてた葉っぱたちの分析は終わったのですか?」
「人手が増えたので明日には結果がでるだろう」
◇◇◇◇◇◇
翌日、結果が発表され、予想通りに葉や種からは多くの魔力量が検出された。ホーリーは植木鉢に種を植えて、カーズ村での販売を提案した。
「カーズ村には商人たちが多く集まってます。魔力の多い木を販売しましょう。小さな1歩ですが、国の経済をカーズ村から広げましょう」
「このような小さい植木鉢が、国中に流れても魔力不足解消にはならないぞ」
「でも、ひとつの植木鉢を、沢山の緑魔法の使い手が成長を手伝ってくれたら、花が咲いて、種が取れてどんどん魔木や魔花が増えるのではないでしょうか?それに今は少しでも希望があった方がいいと思います」
第2皇子が、
「そうだな、僕らはすっかり諦めているが、国民は不安の中でも普通に暮らしている。僕も魔木や魔花を育てる事に協力しよう。カーズ村での様子を見ながら他の町や王都でも販売を開始しよう」
たった1つ小さな計画が始まった。土魔法が使える人は植木鉢の量産し、ワイバーンで調査に向かう人は、接着魔法陣を体に装着して飛び立った。そして、バーグ先生の指導の下、アナベル、グレイ、ケルフ、ホーリーも発芽が出来る様になった。
「ケルフ、忙しいのにありがとうね。フェリクス先生も発芽を手伝ってくれているけど、人手は多い方が良いから助かるよ」
「何を言っているんだ!この事業には、カーズ村の運命がかかっているんだ当然だろう?」
「もしかして、相当、売れてる?」
「ああ、最近では王都や全国から買いに来てるよ、宿屋がいっぱいだからテントで順番待ちをしている商人もいるんだ。僕が協力しなくてどうする」
「それって、はやり、第2皇子の宣伝の成果だよね?」
「当たり前だろう、第2皇子がカーズ村で販売する魔木や魔花を緑魔法で育てて、領土に植えて欲しいって、通信魔道具で全国に発表したんだ。それは、もう凄いよ。でも、商人たちは第2皇子の生存の確認も出来て、嬉しかったって泣いた商人もいるよ」
「国や皇室も何か対策を練っているって、思ってくれたのかな‥‥、あまりにも小さい対策だけどね」
「ホーリー、ホーリーは、明日、ワイバーンで調査に出るんだろう?」
ケルフや隣にいるプレジーも心配そうにホーリーを見る。
「そうだよ、毎日、ワイバーンに乗る練習を少しずつして、やっとだよ。アレクサンダーの臭いが染みついているのか、ワイバーンに、最初は思いっきり拒否られたよ。それを見て先生たちが難色を示して、時間がかかっちゃった」
「スプリンド先輩がすごく心配していた。上空で魔力を使い過ぎて気を失うのではないかって、本当に大丈夫なんだよね?」
「多分、大丈夫、最近、調査に出る人達がつけている魔法陣を書かせてもらったの、魔法陣を描く事でも魔力を使うのよ。上級貴族は、殆ど下級貴族に書かせるらしいの、どうしてかわかる?」
「魔力に慣れる為?」
「そう、魔法陣をいっぱい書いたからって、魔力が増える訳でもないけど、うまく使える様になると、1日に書ける魔法陣が増えるらしい。下級貴族でも10枚仕上げるのは難しいけど、最近、10枚くらいなら大した負担ではないの‥‥、だから、みんなが許可してくれた」
「でも、僕は心配だよ‥‥」と、プレジーは言う。
「プレジー、大丈夫よ、今度は笑顔で戻って来るから、空を飛ぶのよすごいでしょう?」
「はしゃぎ過ぎて落ちるのが心配だよ」と、プレジーが今度は笑って言い返す。
「ホーリー、これ、お守りを作った。僕、夜、眠れない時に、ミルサーチさんの女神像を作ってる」
「本当?」
「ああ、もう、100体くらい完成している」
「明日、この女神像を持って行ってくれないか?」
「ありがとう、嬉しい、これで、頑張れるよ。でも、100体もあるならカーズ村で売った方がいいよ。フェリクス先生には黙っていてあげるから‥‥」
「そうか?植木鉢と一緒に売るかな‥‥」
「セット販売にしたらきっと売れるよ、カーズ村、村長の女神像だよ。それに、明日ならフェリクス先生も空の上だから、きっと、バレないよ」




