消滅が続く中③
第59章
アガシー先生の号令で、ホーリーが寝ている間に、何度もホーリータウンに荷物が運び込まれ、その日はそのまま王宮で寝てしまったホーリーは、翌朝、目が覚めてからアガシー先生から説明を受けた。
「私はいいですけど、人足たちは、お城を建てる技術は持っていませんよ?大丈夫ですか?」
「大丈夫だろう、第2皇子は平民になる覚悟をお持ちだ」
「それは、きっと、気が動転していたから‥‥」とホーリーが言いかけると、スプリンド先輩が、
「この後の事は誰にもわからないけど、彼らがお世話になるのは、平民の村だと言う事を君が教えなければいけないと思うよ、そうしないと彼らはただの無能者になる」
「彼らを、村で働かせるのですか?」
「当たり前だ。森の研究を進めなくては本当に破滅するぞ!」
「それから、バーグ先生たちも、本格的に移動の荷物を運び入れる事にしたようだ。そして、君の母上だが、最近は、目が覚めていないらしく、今、移動するのは危険がともなうと神官に断られた」
「そうですか‥‥」ホーリーの寂しそうな顔を見て、スプリンドが、
「君は、神官に許可を与えたのだろう?彼は魔力持ちで、母上が目覚めて調子が良くなったら、移動を考えてくれると言っていた。今は、母上の回復を待つしかない」と、優しく話してくれた。
◇◇◇◇◇◇
夜通しの作業の中、ホーリータウンにどの位の荷物が運ばれたが不明だったが、ホーリーの寮の部屋を退去する事にした。ケルフとプレジー、ミスドルの部屋、マコーミットさんが借りていた職員寮も退去の指示があった。
それぞれの荷物を片付ける為に、ホーリータウンの人足たちも呼び出されていた。
「初めて王都にやって来たけど、やはり王都は凄いな~~」と口を揃えて頷いている姿が印象的で、また、来ればいいと声はかけられない‥‥
「そう言えば、ベル商会の皆さんはどうしたのですか?」
「ああぁ、リンさんは、ここ数日で森の近くの土地を買い占めて、店ごと移転するらしい‥‥」
「それって?」
「そうだ、彼は不可侵の森を広げようとしている。知り合いの商会たちにも移転するように話している、プラザ町の店や研究所は、カーズ村に移転魔法陣を設置するらしい」
「カーズ村からは許可が出たのですか?」
「とっくに出ている。ここ最近、ケルフの姿が見えなかったのはリンのせいだ。カーズ村に色々な物を取り入れて、根回ししていたからな、あそこは商人開放しているだろう?プラザ町の商売をカーズ村に移すようだ」
「リンさんって、商売人ですね」
「あぁ、根っからの商売人だ。だから、この国のいい品物を帝国に売りに行きたいらしいぞ」
「それって、ワイバーンの乗りたいって、遠回りに言ってますね」
「ハハハハハ、実際の帝国は、大変らしいがな‥‥」
「森の結界が広がって、リンさんの夢が叶うといいですね」
「この状況で夢を見ている奴はあいつくらいだろうな‥‥」とアガシー先生はしみじみと言った。
夕方には移動が終了し、王宮は完全に閉鎖され、王宮に守りの結界が張られ、騎士団も解散となった。その中で、野営に慣れている騎士団員数名は、第2皇子との同行を望み、ホーリーは許可をだした。
「ホーリー、母上が最後だ。今更だけど、よろしく頼む、最年少の君に色々な事を頼むのは心苦しいが、今は、君たち以外に道が見いだせない‥‥」
「‥‥‥第2皇子、そんな弱気ではホーリータウンで暮らせませんよ。あそこで暮らす全員がまだ諦めていないのですから、今回、第2皇子達を誘ったのは、きっと、皇子と側近たちに仕事をさせるつもりです。だから、お母様と一緒に最後を迎えるつもりで向かうなら、王宮に残った方が良かったと後悔しますよ」
「‥‥そうか、彼らは諦めてないか‥‥では、その心づもりで行くよ。とにかく、ありがとう」
「では、出発だ!!」
吹っ切れたような大声で第2皇子は、貴族学校の馬房に向かうと、すでに向かい入れの用意が整っているのか、フェリクス先生、バーグ先生が並んで待っていた。
「では、行きましょう。ホーリータウンへ」
◇◇◇◇◇◇
1晩で国王陛下を迎い入れる事になったホーリータウンは、物凄く大変だったようで、カーズ村の住民たちも、大勢駆り出されて整備が行われている。その結果、ホーリーの家は現在増築を検討中で、家の中に、アガシー先生たちが存在していた形跡は跡形もなく、自慢の食堂には王宮から持ち込まれた家具が無造作に置かれていた。
フェリクス先生が、
「王妃様とメイド、女官達は2階の個室を使う。1階は当然、ホーリーの居場所になっているが、作業部屋は、第2皇子のメイド達の部屋にさせてもらった」
「ここは女性だけの家になりますけど、それでいいのですか?」
「そうだ、安全面で多少の不安があるだろうが、この家には持ち主の結界が張られているし、外は騎士団員に警備させているので大丈夫だろう。すまないが、彼女たちを招き入れてくれないか?」
「では、皆さん、どうぞ、お入りください」
「家の結界は前のままで大丈夫でしょうか?」
「今の所、このままで大丈夫だ。ホーリーのベット等はそのままにしてあるから、君も早く休みなさい」
王宮で眠り続けた事を、心配されているのか周りは騒がしいが、誰もが休め、休めと言って来るので、お風呂に入って、並べられている食事を取り、この日は就寝した。
(おやすみないさい、ただ、疲れてひたすら眠りたかった)
◇◇◇◇◇◇
結局2日間眠りについたホーリーは、体調が良くなり目が覚めた。その間、1階のカーテンで仕切られているだけの部屋には、ホーリーの様子をメイドや女官が、確認にやって来たようだがまったく覚えていなかった。
目が覚めると、髪をキッチリ結んでいる35~40歳くらいの女性が入って来た。
「お目覚めですか?」
「おはようございます。はい、気分良く目が覚めました。皆さんは眠れましたか?」
「ええ、おかげ様で、お食事はどうなさいますか?」
「食べます。カーズ村から何か届いていませんか?」
「食事のご用意は出来ておりますので、お着替えを終えてから出て来て下さい」
「わかりました」
ホーリーは、カーテンの後ろを開けて、浴室に入り、トイレを済ませ、ついでにお風呂も入って、身なりを整えてからカーテンを全開にした。
「ホーリー、おはよう、みんなが待ってるよ」と、第2皇子は眩しい笑顔で挨拶をしてくれる。
「おはようございます。皆さんはもう仕事を始めたのですか?」
「ああ、思いっきり仕事を割り振られて、働いているよ。ホーリーの今日の予定は、彼女、マダミランが、教えてくれる。彼女は母上の女官だが、文官の仕事もできるし、生活のサポートも出来る。母上のお世話が1番の仕事だが、手が空いている時は、僕とホーリーのサポートもしてくれる」
「そ、それは素晴らしい方ですね‥‥、私なんかが、ご迷惑をおかけしていいのでしょうか?」
「君は魔力の使い方が下手過ぎるので、誰かが見張っていた方がいいと言う結論になって、彼女が選ばれた」
「それで、今日の予定だが、ここを増築する許可を出して欲しいのと、母上への治療を再開して欲しい、お願いできるか?」
「はい、今日は快調ですし、王妃様に魔力を流すのは第2皇子が行うでよろしいでしょうか?」
「それで、いい、食事の準備が整ったようだ。しっかり食べてから仕事の段取りを始めよう」
「はい、しかし、ここ、随分と変わりましたね」と、ホーリーは話しながら、食事を始めるが、心の中では野菜が多いと思っている。
「母上の物が多いからな‥‥」
「第2皇子はどちらで休まれたのですか?」
「フェリクス先生の所で、側近たちと寝起きはさせてもらっている。バーグ先生の所には騎士たちも世話になっているが、どこも、風呂とトイレが不足していて、今は、その2つを増やしているようだ」
「へ~~、そうですか‥‥」
「後、言い忘れたが、マダミランの仕事の1つに君の偏食の改善も入っている。これは、ここに住んでいる全員が思っていた事らしい、頑張って偏食をなくして健康になる事だ」
「え~~~、そんな!食の自由が‥‥」




