消滅が続く中②
第58章
「ホーリー、どうしたらいい?母上が玉座に座ったんだよ‥‥、僕のせいだ‥‥」
アガシー先生とスプリンド先輩は、既に、第2皇子側から相談されていたようで、動揺は見られない。
「それはどういう事ですか?」
「玉座に座ると大量に魔力が奉納される。この国を保つ為には皇族は身を削って奉納していると言う事だ。しかし、王妃様は、直系の人間ではない為に、お体に負担がかかってしまわれて‥‥」
「魔力欠乏症に罹ってしまったのですか?」
「そうだ、今、魔力欠乏症になると言う事が、どういう事かわかるか?」
「このままですと、消滅‥‥、でも、どうして私なんかに相談するのですか?」
「スプリンドのお母様は魔力欠乏症で亡くなっていて、君のお母様は魔力欠乏症に罹っても神官の治療で回復していると聞いた、君には違いは何かわかるか?」
「いいえ、まったく、わかりません。王妃様は、私のように寝ているだけでは駄目なのですか?」
「魔力欠乏症の貴族は、誰一人も回復していないし、ペーター家の魔力奴隷たちも実は亡くなっている。‥‥君たちは特別だったんだ」
(それは、そうだろう、本物のミルサーチとホーリーも亡くなっていたのだから‥‥)
「第2皇子は、私にどうしろと‥‥?」
「平民神殿の神官に頼んで欲しい」
「まさか、王妃様を平民にするのですか?」
「そうだ、もちろん、僕もだ。僕が平民になれば、貴族全員が平民の身分に降下できる」
「では、国はどうなりますか?今、王都が開放され、平民たちは略奪や盗賊たちに怯えて暮らしているのですよ。誰が、指揮を執って下さるのですか?まさか、第2皇子は、国民を見捨てるのですか?」
「見捨てるも、何も、魔力を奉納しなければこの国は終わるのだ。僕が玉座に座ったとしても支える事ができるかどうかわからない‥‥僕が平民になっても、玉座に座っても、国は消滅の道をたどる。だから、ホーリー、お願いだ、国が滅びる前に母上に謝りたい。冷たく突き放した事を詫びたいのだ!」
「もう一度、目を覚まして、僕を抱きしめて欲しい‥‥」
「‥‥‥」
「王族の方は、どうすれば平民になれるのですか?平民神殿の神官は絶対に貴族を見ませんよ、それはフェリクス先生が証明しています」
「絶対か?皇室を離脱を宣言してもダメなのか?もちろん王位も捨てる」
「そのような事は、すでにフェリクス先生が試していますよ。この際、神官に頼るのを諦めて、平民神殿の神官が使う治癒魔法を試してみませんか?この前、私が魔力欠乏症に罹った時に、神官様が唱えていた祈りのような言葉があるのですが、それを試してみますか?」
ホーリーがなぜこの提案をしたのかと言うと、第2皇子の言葉に引かれたからだ、「母上に謝りたい。冷たく突き放した事を詫びたい」その心情をホーリーもどこかで思った事がある。どの世界かは思い出せないが、自分にも確かに母親が存在している、そう思えた瞬間でもあった。
(あの時のあの場面を思い出せれば‥‥、お父さんの隣にいた女性は誰なの‥‥本当のお母さん?)
「ホーリー、ホーリー、どうした?」と、スプリンド先輩が呼びかける。
「少し待って下さい、思い出しますから‥‥、思い出します」と、言いながら椅子に座っているホーリーが魔力を使っている事が周りの人間にはわかった。
「ホーリー、ホーリー駄目だ、何してる魔力が漏れているぞ、君も魔力欠乏症になりたいのか!!」と、スプリンド先輩が急いでホーリーを呼び戻す。
「え?わたし、どうして‥‥」
「どうしても、こうしても、ない、ダメだ、君は何かに集中する時、無意識に魔力を使う癖がある。今のままでは駄目だ、必ず失敗する」
アガシー先生が、
「ホーリーが伝えたい言葉は、魔力を使う呪文なのかも知れない、ホーリーには危険でも第2皇子の魔力でしたら大丈夫かも知れません、ホーリーがその言葉を第2皇子に伝えながら王妃様に魔力を送るのはどうでしょう」
それから、何度も試みるも、ホーリーの魔力の洩れを止める事が出来ずに、一時、休憩になる。
「ホーリー、別室で眠るかい?」と、ルーツィは、いつになく優しく聞く
「お腹が空いてますし、眠りたいです」と半目になりながらホーリーが答えた。
ルーツィと側近たちは、別室をホーリーの為に用意して、ホーリーに食事と休息を取らせ、アガシー先生たちと冷静になった第2皇子は、話し合いの場を設けた。
◇◇◇◇◇◇
「すまない、国王が取り乱し、国を捨てるなどと失態だ」第2皇子は年相応の子供らしく涙を拭き周りの大人たちに謝る。
「第2皇子、もしかして国王陛下も‥‥、その‥‥」
「数日前に消滅した、僕と決別した母上は父上に付きっ切りで、父上の体が消えていくのを見守ったのだ。ショックだっただろう‥‥、その前に、母には父上の死を国民に隠すように指示を出していたし、誰にも相談できずに、国の為を思って玉座に座られたのだ。母上が、あのようになったのは、僕のせいだ」
涙を流しながら説明する第2皇子は、これまで貴族間で威厳を保っていた青年ではなく、誰も答えを出せない問題を1人で立ち向かっているか弱い子供に思えた。
「王妃様の側近たちはどうなさったのですか?」
「メイドや女官には暇を出し、彼女の周りの取り巻きたちは、すべて消滅した」
「あの宰相もですか?」
「彼は、領土のほどんども消滅し、王都の屋敷もすっかり穴が開いたように消え去った。彼の家門は全滅で、誰一人も残っていない。街の愛人宅も消滅したと報告があった。ペーター家と同じだ」
「第1皇子派はどうしたのですか?」
「ほとんど宰相と同じような運命をたどっているよ」
「では、第2皇子派は‥‥」
「故郷で最後を過ごす為に王都を出て行った。その後の事はわからない、僕が許可をだした。調査を頼んでいた文官たちにも暇を与えて、避難するように言った。僕の側近たちにも退去するように言ったが、彼らは残ってくれたんだ‥‥」
アガシー先生は、第2皇子の側近5人に目をやる。
「彼らの家族は避難が終わってますか?」
ルーツィが答える「ああ、完了している。私を含め彼らは第2皇子のお側を離れないと決めている」
「では、自己紹介をお願いします。後、卒業研究の内容とワイバーンを乗りこなせるかをお願いします」
◇ ルーツィ、卒業研究は、意外にも虫の魔獣化の研究をしていて、ワイバーンには乗れない。
◇ シモーク、卒用研究は、剣の魔法陣、ワイバーンには乗れない。(剣士)
◇ ライジュ、卒業研究は、浮上魔術、ワイバーンには乗れない。
◇ サド、卒業研究は、帝国の情報を集め、ワイバーンには乗れない。(情報収集)
◇ カイル、卒業研究は、魔力を持った実から魔力を抜く事、ワイバーンには乗れない。
「全員、ワイバーンには乗れないのか、第2皇子が王室留学する時はどうする予定だったのだ?」
「この秋からグリフォンで練習する予定でした」
「王室にグリフォンは残っているのか?」
「王宮の閉鎖の為、世話役がいなくなり、帝国に戻る商人に売り払いました」
「食事とかはどうしてるのか?」
「皇子付きのメイドが3名、王妃様付きメイドも数名残っていますので、彼女たちが用意してくれてます」
「王妃様か‥‥、どうにかなると思うか?」と、アガシー先生はスプリンドに聞く、
「わかりません、ホーリーは自分の母親も連れて行きたいと思います、彼女の村ですから」
「そうだな、ホーリーが寝ている間は動けない、誰か平民神殿に使いを出してくれないか?ホーリーを母親を彼女の村に避難させると‥‥」
「ホーリータウンへ向かうのですか?王妃様も連れて?」
「そうだ、現状では、あそこ以上に安心安全な場所はない、近くの森は魔力が満ちていて消滅の危険が薄い場所だ」
「しかし、あのように何もない場所に王妃やホーリーの母親を連れてはいけません」
「今、村は建築ラッシュで、どうにでもなる。ただ、王宮に残っている食料はメイド達に集めさせて、氷室に入れて一緒に移動した方がいい。王宮専用魔術具や側近たちの荷物も準備を始めろ!急げ」




