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消滅が続く中①


 第57章


 一方、ホーリータウンでは、移動魔法陣が光り、大勢の人足とグリーク一家、沢山の資材や家具、日用品に食糧等がフェリクス先生と一緒に現われた。


 「フェリクス先生、どうしたのですかこの大人数‥‥」

 「ああ、ここの領主邸が消滅した。折角、平民神殿に入れると思っていたのに先手を打たれたよ」


 嘆くばかりのフェリクス先生をかわし、グリークが前に出て説明する。


 「昨夜、領主邸が、突然、消えたんだ。2つの神殿や領主邸に併設されていた建物もすべて、領主邸で働いていた使用人たちは投げ出され。領主邸が消えた後には大きな穴が開いている様で、街は大騒ぎだ」


 「僕は、フェリクス先生から準備するように言われて、ホーリータウンに出稼ぎに行ったことのある人足たちに、数日前から声をかけた」とシママはホーリーに話す。


 「フェリクス先生の言葉を信じたグリークさんは、伝言しながら資材や家具を集め、俺ら家族の事を心配して下さったのです。街の移動魔法陣にはまだ仲間が待っています。ホーリータウンに避難させてくれませんか?持ち込める物はすべて持って来ました。お願いします」


 見慣れた人足たちは一斉に頭を下げるが、人足たちの家族も一緒なので1回の移動では済まなかったのだろう、何か焦っているように見える。


 「ホーリー、彼らの人となりは、すでにここで証明されているだろう?落ち着くまででもいい、だめだろうか?」とグリークさんは小声で聞いて来る。


 「勿論、いいですけど、領主邸だけではなく、街にも、消滅の危険が迫っているのでしょうか?」

 

 「それはわからないが、王都が開放され、国中で避難が始まった」フェリクス先生の難しい顔で話す。

 「それは‥‥」


 「国中が混乱すると言う事だ。貴族たちもどうしていいのかわからず、王都を見捨て、国中で消滅の危機がある、そんな中、略奪や盗賊も現れるだろう。その為の避難だ、ここは結界で閉鎖されていて1番安全だと判断した。すべての平民の避難は出来ないが、君が知っている彼らだけでも、危険から遠ざけたいと思って移動して来た」


 「わかりました、次は、私が迎えに行きましょう」


◇◇◇◇◇◇


 この後、1度の移動魔法陣では運びきれなかった人足とその家族や財産を何度も移動させ、ホーリータウンは、再び建設ラッシュが始まった。フェリクス先生とグリークさんは、すでに構想を練っていたようで、ホーリーがすることは、ひたすらレンガとパンを焼く事だった。


 村全体が忙しい中、王都が開放されたと聞き、リンさんは、王都のベル商会に向かった。


 「リンさんは、貴族学校を退学して以来、初めての王都ですね」


 「王都には入っていたないが、通信魔術具と映像魔術具を使って色々な場所を知っているので、久しい感覚はないらしいぞ」とスプリンド先輩は教えてくれた。


 「そうでなければ、あのように手広く商売は出来ませんよ、商店街すべてがベル商会の店だったのですよ、凄すぎます」


 「ベル商会は平民相手だから、店を閉める事はしないだろな‥‥」

 「本来なら、ここの小麦粉もベル商会に卸す予定でしたが、どうするのでしょうかね?」

 「さぁ、王都にどの位の人が残るかによってだな‥‥」


◇◇◇◇◇◇


 バーグ先生と従者、メイド、アナベルとグレイ、そして、ミスドルは3番目に建設されたゲストハウスに住み始め、平民たちはフェリクス先生に指定された場所に家を建て始める。


 「小麦畑は町の中心地に変貌するのですか?」とホーリーはフェリクス先生にたずねた。


 「農地は、少し離れた場所に集中させる予定だが、いいか?」


 「はい、私には、わからない事ばかりで、助かります。所で先生のご両親は呼ばないのですか?」


 「彼らが王都を離れる事は無理だと思う、貴族でなくなった彼らを、領民が受け入れてくれるとも思えない、それに、まだ、兄上の事も諦めきれず、屋敷で帰りを待つと言っていた‥‥」


 「そうですか‥‥、わたし、なんて言ったらいいか‥‥」

 「覚悟は出来ていたんだろうが、多分、今は認められないのだろう、政敵を作らない為に息子を帝国に送り出したんだ、それを思い出せばいい‥‥‥‥」


 「‥‥‥」そう話すフェリクス先生の顔があまりにも辛そうで、ホーリーはかける言葉が見つからなかった。あまりに突然の悲しみは、時間が経つにつれて大きな悲しみに変わる、だから、今は、フェリクス先生がしたいように村を作ればいいと思っている。


◇◇◇◇◇◇


 バーグ先生とアナベルとグレイ、ミスドルの領地は安定している様で、彼らはここを離れる予定がないらしいが、良くカーズ村の農民たちと一緒に作物について話をしているので、彼らが見た事もない植物をバーグ先生は見せたいようで、従者を連れて王都の温室に戻ったりもしている。


 「ホーリー、私達は王都の温室に行ってきますね」とアナベルが報告に来た。

 「ええ、王宮が閉鎖されたとは言え、貴族学校も安全ではありませんから気をつけてね」


 「いってきま~~す」


 手を振るアナベル達や家を作る人足、畑を耕す農夫、研究に没頭するアガシー先生たちがいる日常が、普通になって来ている事に驚きながらも、どうにかこの国が消滅しないで欲しいと思うようになってきた。


 「ホーリー、ちょっといいかな?」とシママが話しかける。


 「何?やっと、暇が出来たの?」

 「ああ、もう、何日もどうやって寝たのかも覚えていないよ」

 「人足は大雑把だから、シママは大変だよね」

 「貴重な建築用品を無駄には出来ないからね」

 「王都で調達してもらえば?」

 「人足たちに王都でのクギ1本の値段を言ったら、驚いて仕事ができなくなるよ」

 「ハハハハハ、それは言えてる。それで何?相談?」


 「ホーリーも忙しいよね?」

 「まぁね、昼間はレンガとパンを焼き、夕方からは魔法陣の清書をさせられてるからね暇はあまりないけど、相談には応じられるよ。一応、村長ですからね」


 「そっか、ありがとう、実は母さんが薬局を開きたいって言っているんだけどどうかな?今日、バーグ先生たちが薬草を仕入れてくれるみたいで、母さんもバーグ先生に色々教えてもらいながら、ここで薬草の研究をしたいし、小さな子供達も増えたから薬局も必要ではないかって‥‥」


 「別にいいじゃん!どうぞ、今は暖かいけど、冬になったら風邪が流行るかも知れないからお願いしたいね」


 「そっか、じゃ、フェリクス先生に言えばいい?」

 「うん、そうだね、リンさんが帰って来てからの話し合いになると思うけど、建物はフェリクス先生の意向が通ると思っていてね」


 「わかった」

 「アナベル達に聞いたのだけど、ホーリーも鑑定って出来るの?」

 「まだ、バーグ先生に合格は1度も貰ってないけどね」

 「イヤ、でもスゴイよ。毒きのこがわかるんだろう?」

 「まぁね」


 シママと久しぶりのふざけ合いの会話を楽しんでいると、アガシー先生とスプリンド先輩がやって来て、

 「ホーリー、第2皇子から呼び出しだ。王都の王宮に向かうぞ」


◇◇◇◇◇◇


 久しぶりの王都、アレクサンダーと箱馬車、アガシー先生とスプリンド先輩は自分たちの馬車を伴い移動する。貴族学校の馬房に到着した時には、既に、ルーツィと騎士団が待機していてくれて、軽く挨拶をするとすぐに王宮へ向かった。


 「アレクサンダー、王宮の魔馬専用舎で大人しくなっていてね。早く戻ってくるから‥‥」


 賑やかだった王宮は冷たい石壁だけが目立ち、夏だと言うのに涼しく感じた。ルーツィと騎士に守られながら長い長い廊下を歩き、最奥の部屋に通され目にしたのは、天蓋付きのベットに横たわる綺麗な女性に付き添う第2皇子だった。


 「ホーリー、どうしたらいい?母上が玉座に座ったんだよ‥‥‥」



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