表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
56/69

その頃、第2皇子


 第56章


 相変わらず重たい空気が流れている王宮の廊下を、第2皇子一行は難しい顔で歩いている。王妃からの呼び出しだ。国王陛下が倒れられてからの王妃は、事実上の摂政、しかし、宰相の意見をそのまま聞く事が多く、第2皇子の言葉は届かない。第2皇子から見た王妃は、すでに傀儡の女帝になっていた。


 「王妃にご挨拶申し上げます」

 「ようこそ、第2皇子、これから話す事を、驚かず聞いて下さい。第1皇子が帝国で消滅したようです。側近たちもすべて同時刻に消え去りました」


 「そ、それは、国内で起こっている現象と同じですか?」

 「そうです。その数日後、側近たちの家門も消滅、領主だった家門は領主邸ごと消えたようです」


 「国王陛下は大丈夫なのでしょうか?」

 「今はまだ眠ったままですが、第1皇子と同じように消滅する可能性があります」


 「‥‥‥」王妃は長い間を置き、遂に、第2皇子に命令を下す。


 「このままではこの国の崩壊は免れません、第2皇子、王位を継承し玉座に座り奉納して下さい」


 「母上は、僕に、父上や兄上のようになれとおっしゃるのですか?このような状況で‥‥」


 王宮の窓を背に、王妃の後ろで、薄っすら笑顔を貼り付けている宰相を、睨む事しか出来ずに第2皇子は、承諾の返事をして退室した。その後、崩れ落ちる王妃の姿を見ることはなく‥‥


 王妃との会談を終え、また長い長い廊下をどのように歩いて部屋に戻ったのか、記憶は残っていなかった。兄上の死を覚悟していたとは言え、血が滲むほどに手を握り締めて、震えながら報告し命令する母をただ悲しいと思った。


 「第2皇子、大丈夫ですか?」とルーツィたちは心配そうに顔を覗き込むが、今は頷く事が精一杯で、長い長い廊下を歩く事だけに集中していた。部屋に戻ってからは、落ち着きを装い、前々から考えていた事を側近たちに話す。


 側近たちは、幼い皇子を尊重してくれて、第2皇子は、側近たちに感謝を表し、今後の予定を発表する。


◇◇◇◇◇◇


 後日、第2皇子の希望を通し、即位式は玉座の間で内密に行われた。国民の不安を払拭する為に、盛大に行った方が良いという王妃側の意見を完全に無視する事になり、王妃と側近はその場から立ち去った。


 そして数日後、長い長い廊下を、数人のメイド達を引き連れて、王妃は面会の予約もなくやってきた。


 「なぜ、このようなやり方で王位継承の即位式を冒涜するのですか?」と、いきなり怒鳴り始めイライラをぶつけるが、第2皇子は、冷静に書類に目を通しながら、


 「王妃、これから、国王陛下の執務室に移動しますので、そちらで話し合いましょう」と、国王になった第2皇子は、じっと王妃の目を見て話す。


 「国王陛下の執務室に移るのですか?あなたは、国内外にも発表していないのに?どうして‥‥急にそのような‥‥心変わりをしたのですか」


 「母上のおっしゃった通りに、王位を継承したのです。当然ではありませんか、これから、重要な業務の担当者も指名して、国を導いていきます。ですから、時間がありませんので、お話は後程伺います」


 「‥‥‥、なぜ、今、このようになさるのですか?」と、今でも泣き出しそうな顔で王妃は聞くと、

 「母上こそ、なぜ、このようになさったのですか?あなたは、宰相や側近の助言だけを信じて国を導いて来たのではないですか?僕に兄上の状況も知らせず、僕の意見など聞かず、身勝手に振舞い、彼らに従っていたのではないですか?」


 「しかし‥‥彼らはもう‥‥、いません。第2皇子、わたくしは、どうしたらいいのですか?」


 「母上、私に意見を求めるのが遅すぎました。母上、私は王位は継承しましたが、玉座には一度も座っていません。この意味がわかりますか?そして、これからも第2皇子を名乗るつもりです。例え、国王陛下がご逝去なさっても、数年は秘密になさってください。これはたった1つ、すべてを無くしたあなたへの忠告です。出来ますか?」


 ルーツィが目配せをして、メイド達に王妃を連れて帰るように指示をだすと、王妃は静かに従いそのまま部屋に戻って行った。


 「第2皇子、よろしかったのですか?」


 「王妃に言われた通りに王位に就いたんだ文句はないだろう。本来ならこの地位を宰相に譲り、自由になりたかったくらいだよ。その方が僕には良かった‥‥」


◇◇◇◇◇◇


 ルーツィと側近が、第2皇子の執務室で報告を始める。


 「現在、残っている家門の殆どは第2皇子派が多く、フェリクス先生の家門のように領主邸が消滅し、貴族の証のステッキが消滅した家門も数件ございます。先ず、こちらをどうするかですが、第2皇子のお考えを聞きたいと、王宮で当主たちが待機しています」


 「ステッキが消滅してしまったのは、王室ではどうする事もできないだろう?何か方法があるのか?あればそちらの意見を聞くが、ステッキをこちらで用意する事は出来ない。ステッキは創世の時から伝わる品物で、文献にも貴族の証としか残っていないと教わったが‥‥」


 「‥‥‥彼らは平民になるしかないか」と、ルーツィは呟き、他の側近の報告が続く、


 「それと、残っている貴族からの問い合わせですが、ステッキは、代々領主邸の起点と同化しているので、それを取り出す方法を教えて欲しいとありますが、いかがなさいますか?」


 「我が国で、1番の歴史研究者は誰だ?王宮で僕に教えていたあのお爺さん先生か?」

 「あの方は、すでに亡くなっております。年も年でしたし‥‥」


 「う~~ん、ありのままを報告するしかないな、それで、アガシー先生たちとは連絡は取れたのか?」


 「はい、ずっと通信魔術具を探らせていましたが、やっと、反応が見つかりまして、検索した所、ホーリータウンにいる様です。そして、ホーリータウンへの移動魔法陣を調べたところ、バーグ先生もメイドや従者を連れて移動したようで、ホーリータウンにはミスドルもいますので、ミスドルの妹と従妹もバーグ先生と同行しました」


 「あそこには、フェリクス先生も滞在しているよな?あの家に滞在するには定員オーバーではないか?」


 「カーズ村には宿屋もありますし、カーズ邸もそれなりの大きさがありますので、そちらでお世話になっているかも知れませんね」


 「しかし、みなさん、小さい子供に頼り過ぎに感じるが、大丈夫なのだろうか?」


 「考え方次第ですが、あそこは安全で便利ですよ。領主の手は届かない、商人開放もしていない、水も食料も豊富で、王都の商会とも取引が出来て、人目を気にする事もない安全でいい場所です」


 「そう考えると、今のこの国の影響を1番受けない場所だな‥‥羨ましいな、さぁ、会議に向かおう」


◇◇◇◇◇◇


 王室の大会議室にはすでに大勢の貴族が集まっている。ほとんどが第2皇子に忠誠を示していた貴族が多く、貴族の証を無くした貴族の姿も見える。


 「それでは、この国の存続を話し合いましょう」と第2皇子が宣言してからは色々な研究データが発表されたり、移住についての提案もあり、ステッキを無くした貴族についての話し合いも始まったが、これと言った名案はなく、領主がいなくなった領土については、その土地の代官にそのまま土地の維持を任せる事にきまった。


 1つ1つ解決するしかないが、宰相によって、伏せられていた詳しい国内の惨状の報告を聞き、すでに諦め始めた貴族たちは、暴動を起こす事もなく静かに話し合いを進める様子に第2皇子は感謝を述べた。


 「第2皇子、少し前なら我々はどうにかしてこの国の存続を訴えたでしょう。しかし、この状況で、国の中枢にいる我々でも名案が浮かびません。戻れる故郷があれば、自分の領土に戻り静かに暮らすのはどうでしょうか?領民が受け入れてくれれば、私は自分の生まれて故郷で最後を迎えたいと思います」


 と、1人の伯爵が申し入れ、それに続く貴族も多い、既にステッキを無くした貴族も諦めたのか、その伯爵の言葉に同調していた。


 「そうですね、現在、私たちではどうする事も出来ない事態に陥っています。最後の時を待つ事が、全員の総意でしたら、王室が出来ることは、王都を開放し、王宮を閉鎖します」


◇◇◇◇◇◇


 第2皇子は、その日、王都門を開放し、貴族が領土に戻る事の許可を出し、王宮で働く役人やメイド達にも休暇を与え、王宮の封鎖を騎士団に要請した。


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ