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その頃、フェリクス先生


 第55章


 帝国の友人の話を聞いた後からフェリクスは、この国の滅亡を予感している。


 なぜなら、フェリクスの兄が第1皇子の皇室留学の同行者に選ばれた時に、偶然、両親と兄の会話を聞いて知ったのだ。冷たい廊下での盗み聞き、2人は知っていたに違いないが聞こえる様に話してくれた。


 「父上、国王陛下の急な中立派の取り込みはどうしてだと思われますか?」


 父は、しばらく考えた後に、ゆっくりと話し出す。


 「これは、私の父上、お前の祖父が言っていた事だが、国王陛下はこの国の魔力持ちから魔力を集め、維持していると‥‥」


 「それは、どういう事でしょうか?」

 「国を維持する為には莫大な魔力が必要で、その為、国の頂点に立つ者は、必ず、膨大な魔力量が必要だと理解できているだろう?言い換えれば、その為の国王だ。莫大な魔力量は皇室にしか受け継がれず、皇室は、その魔力量で何千年もこの国を治めている。我が国で一度も内乱が起こらないのは、魔力量の為で、他の人間には変われない」


 「では、帝国がなぜあれだけ皇室留学を認めているか、考えた事はあるか?」

 「いいえ」


 「帝国のアカデミーにすべての皇室の後継者が集まる、それだけでどれ程の魔力が集まるか考えて見ろ、莫大だ、その魔力を使えば発展など容易く、国力をどんどん上げる事が出来る」


 「そして、今、皇室によって、中立派が取り込まれようとしている。意味がわかるか?」

 「すでに、国王陛下の側近達だけでは、どうしようもなくなってきているのですか?」


 「今回の多くの中立派への突然の伝令で、そう思う以外は当てはまらない」


 無能だと思っていた父は意外にも情勢を見る力があり、これから送り出される兄上の動向を探る必要があると、その時から考えていた。その後、予想通りに不穏な国内、帝国の友人とのやり取りは重要で、情報を聞き出す為、第2皇子やホーリー達も利用し、大量のワインを用立てたりもした。


 しかし、兄上たちが、魔力奴隷を買いに行かされてるとは予想外で、あまりにも斜め上の所業だ。


 そして、ホーリータウンにやって来て、結界を張って気づいたことがある。それは魔力量の多さだ。アガシー先生たちも気づいているが、公言は差し引かえてる。森が近く、野ウサギまでも魔物化している程の魔力量だ。


 現在のフェリクスの考えは研究者に近く、なぜかあの土地は残る事が前提で、街での買い物を進めていると、マリアの持っている通信魔術具に大勢の人間から連絡は入る。


 「坊ちゃん、お屋敷の同僚たちから何度も連絡が入っていますが、どういたしましょうか?」

 「屋敷で何か起こったのではないでしょうか?」と、ユルとジモールも心配そうな顔でたずねる。


 「坊ちゃんの通信魔術具に連絡は来ていないのですか?」

 「ああ、通信を切っているからな」

 「‥‥‥」


 3人の不安な顔を無下にも出来ずに、屋敷に連絡を入れると、領土の領主邸が消滅したとの知らせだった。領土に戻っているフェリクスと、従者、マリアの安否を心配していたようだ。


 「坊ちゃん、これから王都に戻りますか?」

 「イヤ、父上は領主邸の起点に家門のステッキを同化させていたらしく、どうやら我が家門は廃爵の危機に陥っている様だ。他の領主邸の消滅も進んでいる様で、この状況をどうするか王宮との話し合いを待つしかないらしい‥‥」


 「それでは、坊ちゃんは貴族ではなくなったのですか?」

 「それは、今の段階では未定らしいが、もしも、平民になったのなら平民神殿に入れるのかなぁ?」


 マリアは貴族でなくなったフェリクスを心配して泣き出し、ユルとプレジーは平民神殿に入れる可能性が出て来たと喜ぶフェリクスに呆れてる。


 「坊ちゃん、我々はしつこく何度も平民神殿を訪れているので、いきなり坊ちゃんが平民になったと言っても、あそこの神官たちが快く坊ちゃんを平民神殿に入れてくれるとは思えませんよ」


 「確かに‥‥」と4人は頷いた。


◇◇◇◇◇◇


 フェリクス一行が、街に到着後、最初にしたことは領主邸への陳情だ。ここの領主は中級貴族の下で、上級貴族のフェリクスの訪問は、この時期、警戒レベルを最大にするような出来事だった。理由は簡単で、ここの領主も魔力欠乏症に罹っていたからだ。勿論、対外的には伏せている中での上級貴族の訪問、それも、移動魔法陣の申請と、平民神殿で奉納がしたいと言う突拍子もない要求だった。


 応接室で待たされた時間も長く、領主邸での話し合いに時間がかかったようで、レアテム代官が2人の文官を連れてやって来たのは1時間後だった。


 「大変、遅くなりました。ホーリータウンへ建築の町から移動魔法陣を動かす許可が下りました。魔力は、フェリクス様でよろしいでしょうか?」


 「登録できるのなら、従者とメイドの他にホーリーも入れて置いて欲しい」

 「はい、彼女はあの村の持ち主で、すでに許可済みです」


 その後、それぞれのブレスレットに移動魔法陣の許可を入れてもらう。その登録をしたのは、カイルとドットで、レアテム代官は愛想よく2人を紹介する。


 「彼らがホーリーにあの土地を進めたのですよ。ホーリーは母親の面倒を見ながらの生活で、彼女が貴族学校の芸術教室に入室許可が出る程に、優秀だったとは思いませんでした」


 ドットは、多少、遠慮気味に、ホーリーの近況を尋ねる。


 「彼女は元気だ。あの村も発展して、これから多くの家が建つだろう、その為に私が来たのだ。変な家を増やして欲しくないからな‥‥」


 「ホーリーの家は、しばらくの間、建築の町での大きな話題でした。あの基礎工事を真似て今では多くの場所で応用されていますよ」


 「そうなのか?建築の世界にあの基礎工事が浸透しているとは思わなかった。実は、僕もあの基礎を採用して家を建てたんだ」


 「それは、凄いですね。時間が許せば見に行きたいですが、今は、少し忙しくて行けそうにありません」


 見習い文官2人は、本採用の文官になってから死ぬほど忙しいらしく、ホーリータウンへの視察も許されないだろうと、残念がっていた。その後、レアテム代官が汗をかきながら平民神殿の説明を始める。


 「はやり、平民神殿での奉納は受け入れられないようです。どうしても奉納をお望みでいらしたのであれば、貴族神殿でも可能だと貴族神殿の神官は言ってましたが、いかがでしょうか?」


 「やはり、そうですか。各地の平民神殿を訪ねていますが、必ず神官に断れます」


 「そうですか、領主としてもフェリクス先生のご希望を叶えたいのはやまやまですが、神官の許可が下りませんので、申し訳ございません」


 カイルとドットは、このように謙るレアテム代官を初めて見たと心の中で思い、小さいホーリーが、貴族学校の先生に頼んで村を作っている事にも驚いた。


 「なぁ、ドット、ホーリータウンはこれからどうなるのだろう?」

 「さぁ、我々の想像が追い着かないな、当時の建築であれだけ驚かされたんだ。これからはフェリクス先生の構想も入って、すごく発展しそうだ」

 「きっと、美しい村になるのだろう、貴族学校は、別世界のように綺麗だったからな~~、でも、レアテム代官でも上級貴族から王都の話は聞けなかったようだな、王都や他の領土はどうなっているのだろう?」


 「昨日、王都の友人に通信魔術具で聞いたけど、教えてもらえなかったよ」

 「一体、どうなっているのかね?それこそ、ホーリーに聞いてみたいね」


◇◇◇◇◇◇


 領主邸を後にしてからは、毎日、資材や生活必需品の購入、カフェでの一休み、夕方の平民神殿への訪問が日課になっていた。


 1週間、毎日のように平民神殿に通っていると、流石に警戒され始めて、夕方になるとすでに神官が神殿の前に立ってお断りの準備も始めていた。


 「平民か貴族か不明な立場のまま、また、訪れるのはいかがなものでしょうか?」と冷静にマリアは助言するが、

 「イヤ、曖昧な立場だから、行く価値がある。しかし、君たちはまだ下級貴族なんだろう?いいな~~」


 「ヤメて下さい。坊ちゃま!!泣けてきます」


 4人が宿屋でそんな話をした翌日、街の領主邸は消滅し、貴族神殿も平民神殿も消えていた。


 

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