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消滅の予兆①


 第52章


 次の日、ホーリーとプレジーは、沢山の本、食料、お菓子、日用品と共にホーリータウンに戻って行く。


 「ただいま戻りました」と、自宅のドアを開けるとなんだかお酒の臭いが充満している。どうやらホーリーが留守の間にお酒を飲んだらしい『最悪だ!!』開けたドアをもう一度閉めて、グリークさん達を探しに出る。


 現在建築中のゲストハウスは、完成が近い、この後の仕事がなければ、もう1軒頼めないか聞きに来た。


 「グリークさん、ごめんね、忙しいですか?」

 「もう、途轍もなく忙しよ。でも、ここが完成したら町に戻れるから、後、ひと頑張りだ」


 「‥‥‥、実は急ぎではないのですが、隣にもう1軒お願いできますか?」


 「え~~~、まぁ、急ぎでないならばいいけど、それなら、こちらからの頼みも聞いてくれるか?」

 「はい、もちろん、いいですよ」

 「資材不足だ。資材を運ぶ魔法陣を動かして欲しい」


 「資材さえあれば、カーズ村に滞在している人足たちが仕事をしてくれる。今は特注が多くて、何もかもが不足している」


 「特注、ええ、まぁ、そうですよね‥‥、研究班からの注文は多いですか?」


 「多いね、何を作っているか、さっぱりわからないが、設計図が精密で僕しか作れないんだよ」


 「ははは、では、明日、一度、街に戻りましょう。私もアパートを片付けてこちらに戻ります。その後、日にちを決めて領主様に申請して下さい」


 「ああ、大急ぎで資材を集めるよ」


 「大変ですから、ゆっくりでいいですよ」

 「本当か?」

 「‥‥‥、すいません、本当に、すいません」


◇◇◇◇◇◇


 お酒臭い中、荷物を運び入れてた翌日、領土の街に転移する。魔力を使う事になれたのか、大きな魔法陣も動かせるようになっていた。その日、帰りたい人足とカーズさん、アレクサンダーと箱馬車、フェリクス先生一行も移動し、彼らはカーズさんの買い出しに同行し、資材と共に戻って来る。


 「では、私はアレクサンダーと家に戻りますね。買い出しよろしくお願いします」と手を振り別れてから、懐かしい出店でウサギか豚か鳥の串焼きを買い、リリーさんに持たされたお弁当と共に、異次元生活空間の自宅に戻る。ここまで近代化している部屋で気づけよ!!なぜ、数学が鍵だったのだろう?と、思いながら久しぶりの居候邸に戻った。


 「やはり、留守か‥‥‥」と、呟き、倒れ込むようにそのままベットで眠った。


 夢は、この世界ではない前世の世界、小さい頃は父親が大好きで懐き、年ごろになると反抗して泣いて怒って、暗い道を歩くが後ろを振り向くとお父さんは着いて来てくれて、コンビニで好きな物を買ってくれる、懐かしい思い出だ。


 「お父さん‥‥、死んじゃってごめんね」と言った所で目が覚めた。


 「はぁ~~、最悪の目覚めだ。食事をしよう。リリーさんに怒られる‥‥」


 「お母さんってどんな感じなのかしら?リリーさんは理想のお母さん?料理が上手であたたかい‥‥」

 

 「ああ、思い出せない事は、なんだが本当に怖い」


 その日は、ホーリーの部屋の物すべてを処分して、ミルサーチの私物をホーリータウンは少し持って行く。お気に入りのスリッパや部屋着等、この世界に相応しい物だけを選び抜いた。


 王都で購入するよりもこの街で買い物した方がずっと安い、早くこの事に気付くべきだったと思いながら、次の日、アレキサンダーを馬専用舎に迎えに行った。アレキサンダーは、散歩中にワイバーンを見つけてから、また、機嫌が悪くなったので、今回の遠出は久しぶりの2人旅にした。


 「アレクサンダー、帰ろうか、この街から帰る道を覚えてる?何度も通ったね。さぁ、家に帰ろう」


 開門のスタートラインに立ち、いつもの様に一斉にスタートを切り、アレキサンダーの上で大きな声で笑いながらホーリータウンを目指す。街から郊外に向かう道はのどかで昼食を取った後は、かなり眠くなる。こうなると寝るしかない‥‥


 「アレクサンダー、後は頼む、今回は箱馬車で眠るからよろしくね」と言って箱馬車に入り、目が覚めた時は、カーズ村に着いていた。


 「ホーリー、起きろ、着いたぞ。また、眠って来たのか、まったく、呆れるよ!」

 「アッ!着いた。ただ今、良かった、流石だねアレキサンダー」


 久しぶりに見るカーズ村は、復興の跡が残る家の存在するが、商人達も多く往来していて活気がある。


 「カーズ村って、こんなに活気があったの?」

 「ここ最近はすごいんだよ、ホーリーの植木鉢や置物まで売れたぞ」

 「凄いね、アデル達の手間賃が増える一方だ」

 「ああ、メチャクチャ楽しみにしている」


 「それで、街はどうだった?」

 「別にいつも通りよ、なんで?」


 「ちょっと、家に寄ってくれないか?」とケルフが真面目な顔で話す。


◇◇◇◇◇◇


 カーズ邸の大きな執務室は、今、ケルフが使っている様で、すぐに、お茶が運ばれてきてドアが閉められる。

 「どうしたの?何かあった?」

 「第2皇子から手紙が来た。通信魔術具を使いたくないようで、カーズ村村長への親展になっている」


 「ケルフはもう読んだの?」

 「うん、すぐに読んだ。ホーリーも読んで、どうしたらいいか聞かせて欲しい。先生たちに知らせた方がいいとは思うけど、こんな凄い情報を話していいのかわからない‥‥」


 手紙を読むと、小麦粉はしばらくホーリータウンで貯蔵する事、理由は、ホーリータウンが開放していないので安全だからと書かれている。その後は契約金額、うんむん、その他は、第2皇子直筆サイン。


 「2枚目の手紙に少し魔力を流してみて‥‥」


 白紙に見える2枚目には、第1皇子に同行していた領主邸の消滅が始まったと記載されていた。


 「フェリクス先生の兄上って、第1皇子と一緒に帝国に同行していたよね?ミスドルもそうだよね?この事実をどうやって伝えたらいい?相談できるのはホーリーだけで、どうしたらいいかわからないよ」


 「こ、これ‥‥、昨日、届いたの?」

 「うん、そう、通信魔術具は盗聴されやすいから、僕宛に手紙を書いたのは理解できるけど、親展だし、どうしようかと思って」


 「今は、フェリクス先生はいらっしゃらないし、ミスドルは殆どの時間をワイバーンと過ごしているから、私が預かってアガシー先生に相談する。これでいい?」


 「うん、助かる。昨日から寝られない、先生やミスドルの事を考えると心配で‥‥」


 「先生は、覚悟できていそうだけど‥‥」


 (アナベルとグレイは領主邸で暮らしていると、ケルフには言い出せない。ホーリーがいない間、3人はとても仲良くしていたと、聞いたばかりだ。心が苦しい、どうしたらいいの‥‥)


 「ホーリー、ホーリー、大丈夫か?」


 「うん、大丈夫、大丈夫、とにかく手紙を預かっていい?明日、また、こっちに来るから、この事は誰にも言わないでね、わかった?」


 「わかってる」ケルフは強く頷いて、手紙をホーリーに手渡した。


◇◇◇◇◇◇


 その頃、フェリクス先生一行は、グリークさんの工房を中心に色々な物を買い付けて、広場に運んでいた。


 「坊ちゃん、珍しく金属粉を置いている店を見つけましたが、買い付けますか?」とユルが聞く。

 「そうだな、あるだけ全部、購入して置いてくれ」


 「坊ちゃん、家のカーテンを交換してもよろしいでしょうか?この生地の方が厚手ですので」

 「欲しい物は、すべて買って、広場に届けさせておくように、マリアもいちいち聞かなくてもいい」


 「はい、わかりました」

 「こちらのティーセットもよろしいでしょうか?」

 「家で使うならいいのでは?」

 「ありがとうございます」


 「シママ、床に貼る大理石はあるか?どうも木の床は落ち着かなくてな」

 「はい、あちらの店で扱っています」

 「ホーリーは、木の床を気に入ってましたけど‥‥」

 「彼女とは、感覚が違うからナ」


 どうしても休暇が欲しいグリークは、シママをフェリクス先生一行に推薦した。ホーリータウンの事は誰よりも詳しくて、ホーリーとも仲がいいと説得して、開放してもらったようだ。


 

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