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ホーリータウンの変化③


 第50章


 アレクサンダーの数倍も大きいワイバーンは、空に飛び立ちアレクサンダー攻撃をかわした。


 「良かった、アレクサンダーどうしたの?どうしてそんなに怒っているの?怖いの?怖いよね、私も怖いけど、喧嘩を売っては駄目よ、勝てないから‥‥、売られても買わないでね」


 「すいません、多分、ワイバーンが彼の寝床を勝手に使っていたからだと思います。王都にいる時も喧嘩してましたから‥‥」


 「あなたは‥‥、誰ですか?」


 「初めまして、僕はアナベルの兄のミスドルです。アナベルは君と同級生だと伺ってましたが‥‥」

 「ミスドルさん?アレクサンダーの事を知っているのですか?」

 「はい、ずっとアレクサンダーの馬房の隣と平民男子寮で暮らしていました」

 

 (なぜ????貴族ではないの)


 理解できないホーリーは、ミスドルをじっと見ていと、フェリクス先生が話し始める。


 「最近のアレクサンダーの情緒不安定は、どうやらこのワイバーンの為だったようだ。だから、アレクサンダーの馬小屋から遠く離れた場所に、ワイバーンを繋ぎたいが、どこかいい所はないか?」


 「この前、麦の乾燥の為に馬房に似た小屋を増設した時に、先生たちの馬小屋を作りました。そこはどうでしょうか?」


 「‥‥‥、あそこは麦畑に近くないか?」(フフ、この人、どうやら自分の馬が可愛いらしい‥‥)


 「では、大きな木の下はどうです?雨も当たりませんし、ここからは距離があります」

 「今日は、そこに繋いでおこう」

 「ワイバーンは人を襲ったりしませんか?」

 「しません、調教されてますから、でも、芋か大根はありますか?」

 「え?」

 「餌が無くなってしまって、魔石も食べつくしたので、すいませんが、芋か大根をワイバーンに貰えませんかね?」


◇◇◇◇◇◇


 フェリクス先生がアレクサンダーの馬房に3人を迎えに行った時、既に、ミスドルとプレジーたちは餌について話し始めていた。


 「どうした?君は‥‥確か、第1皇子と一緒に帝国に向かった側近の1人ではないか?名は‥‥」


 「フェリクス先生、お久しぶりです。すいません、第2皇子に、ここに隠れているようにと言われたのですが、餌が無くなって、僕の魔力も限界でして、フェリクス先生の使用人とは知らずに、彼らに聞いていた所です」


 「君の魔馬は草は食べないのか?ここには常備してあるだろう?ほら、あそこに」

 

 「先生、実は僕と彼は、隠れて生活しています」

 「まさか?グリフォンか?」

 「いいえ、連れて行ったグリフォンたちは、僕の魔力では飼育できなくなって手離しました。現在は、魔石も高価になったので、早めに手離して良かったと思っています」


 「そうか、それで餌に何が欲しい?」

 「アレクサンダーの芋と大根が欲しいです。どうも気に入っている様で、無理でしょうか?」


 「‥‥魔馬を見せてくれるか?」

 「あのぅ、その‥‥魔馬ではなくて、今は、見えない魔術がかかっているのですが、ワイバーンです」


 「‥‥‥これは確認だが、第1皇子と他の側近はどうした?」

 「‥‥‥フェリクス先生の兄上も側近の1人でしたよね。良く覚えてます、第2皇子には口止めされていますが、親族は真実を知る権利あると思いますので話します、魔力欠乏症の後、消滅しました」


 フェリクスは、数回、軽く頷き、使用人の3人は驚き震えて泣いている。


 「そうか、やはり、全員か?」

 「はい、僕以外、全員、消滅しました」


 「教えてくれて、ありがとう。さて、どうするか?君がここに隠れているという事は、この事は、まだ、公表されてないと思っていいか?」


 「はい、国王陛下も床に伏していますし、状況が状況なので、第2皇子で止めていると思われます」


 「そうか、君とワイバーンをホーリータウンに連れて行っていいか、第2皇子にお伺いしてみて、許可が下りたら、一緒に移動しないか?」


 「僕はいいですが、その土地の方は許可して下さいますか?ワイバーンとアレクサンダーは仲が良くありませんが」


 「広い土地だ。大丈夫だろう」


 その後、第2皇子とフェリクスは、通信魔術具ではなし合い、許可が出たので一緒に移動魔法陣で移動する事になった。


 「フェリクス先生、その、大丈夫ですか?」

 「あぁ、僕は知っていたからね、帝国には友人がいるんだ、覚悟はしていたよ。この前、君の領土にお邪魔した時に、アナベル達には君の消息も伝えた。帝国で元気にしているとね」


 「本当ですか?本当にアナベルに伝えてくれたのですか?」

 「ああ、ただ、ご両親には内緒にするようにとは言っておいた。王都は、混乱している最中で、国王陛下もご病気で、その上、第1皇子まで消えて無くなったと、発表されたら派閥は大騒ぎだ」


 「君の家は第1皇子派か?」

 「いいえ、中立を保ってくれていればいいと思ってます」


 「第1皇子は、中立派を多く帝国に連れて行ったからな、僕の家門もそうだ。しかし、巻き込まれても文句は言えない状況だな‥‥」


 2人はしばらく考え込んでいたが、ミスドルの荷物の運び込みが終わったとユルに言われ、移動魔法陣を発動し、ホーリータウンに出発した。


◇◇◇◇◇◇


 ミスドルはホーリータウンに来てからは驚きの連続だったが、研究班の3人はいい助手が現れた位の感覚で招き入れた。


 「しかし、帝国でも同じような事が起きる可能性があると考えた方が良いのか?」と、夕食を取りながらみんなで話す。


 「帝国では、他に消滅した人間はいるのか?土地は?」

 「わかりません。僕1人になってからは第1皇子たちに付き添って居ましたし、帝国内も混乱していましたので、新聞を読んでもそのような事は書いてありませんでした」


 「そうなると、土地の魔法量を調べても何の対策にならないな‥‥、土地からの影響ではなく、それこそ神の領域だ」


 「第1皇子は中立派を多く連れて留学していたが、魔力奴隷について反対する人間はいなかったか?」

 「良くわかりません。僕にはただ1日の出来事でしたので‥‥」


 「そうか、そうだな、明日の実験は延期して、しばらく頭の中を整理しよう」


◇◇◇◇◇◇

 

 次の日からは、小麦の本格刈り入れと風魔法を使っての乾燥で、思考停止中の研究者たちは乾燥を手伝い、ついでに小麦を引く機械までも魔術で動かす。その様子を見てリリーさんは、


 「ホーリー、お貴族様は本当にすごいねー、農民5人分の働きをあっと言う間に出来ちゃう」


 「リリーさん、お貴族様でも彼らはトップクラスですから、全員ではありませんよ」

 「それにしても同じ人間とは思えない‥‥」


 「同じ人間、同じ人間か‥‥」と、ミスドルは呟く、

 「どうしたのですか?」

 「魔力持ち以外は消滅していないのかな‥‥と、思って、平民は消滅していないのか?どう思う?」

 「お屋敷の使用人も消えたと聞きましたけど、どうなのでしょうか?」


 「屋敷の使用人でも彼らのように魔力持ちがいる。フェリクス先生の使用人3人は魔力持ちだろう?」

 「そうですね、お貴族様の使用人は魔力持ちが多いのですか?」


 「魔術具を使用するからね。身分の低い使用人は普通の平民だが、彼らは火を灯す事も大変だろう?」

 「ええ、そう考えると、魔力持ちを雇った方がいいですね。魔力の多い使用人は、副業も出来るから結構金持ちだよ。君みたいに氷魔法が使えればベル商会や食堂なので稼げるし、魔法陣が書けるともっと稼ぐ事ができるらしい」


 「それは、この前、スプリンド先輩からも聞きました。でも、私には、魔法陣は難しくてお金を貰うまではいけそうにありません」


 「そうか?でも、彼が指導してくれるなら超一流になれると思うよ。僕は、アガシー先生の教室の脱落者だからね」


 「あそこにいるケルフは2回目で脱落しました」

 「彼も貴族学校に通っているの?」

 「はい、バーグ先生の教室でアナベルやグレイと一緒に鑑定をしています」

 「そうか、時代は変わったナ」


 農作業をしながら話していると、ケルフが近づいて来て、

 「フェリクス先生の通信魔術具にバーグ先生から連絡があって、本を取りに来て欲しいって、どうする?僕は多分、無理だけどホーリーは行く?」


 「ええ、先生に頼んだのは私だから、アレクサンダーと行って来るわ」

 「じゃぁ、プレジーを連れて行ってくれる?なんか、王都に用事があるみたいだから‥‥」

 「マリアさんのおつかいでしょう?」と、ホーリーは呆れたように話す。

 「はははは、多分ね」



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