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ホーリーが消えた貴族学校⑤


 第47章


 「アガシー先生、第2皇子から資料を預かって来ました」とスプリンドは魔法陣に熱中しているアガシー先生に話しかける。


 「第2皇子からか?じゃぁ、例の古代数式がこの目で見れるのか?どれどれ‥‥」

 「ホーリーは、その数式を写して魔力欠乏症で倒れたらしいです。第2皇子は、1ケ月くらいは静養させると言っていました」


 「先生、彼女は、本当に数式を写すだけで、魔力欠乏症になったと思いますか?」

 「それは、本人に聞いてみないとわからないが、君の父上の研究内容は残っていないのか?」

 「はい、ここ数年は、王都の屋敷に訪ねて来た事も有りませんでしたし、母上が亡くなってからは領主邸からも出なかったようで、どこまで研究が進んでいたかもわかりません」


 「君は帰らなかったのか?」

 「父上は、僕に爵位や王都の屋敷に土地の起点も譲っていたので、貴族学校に入ってから領土に戻った事はありませんでした。幸い、父の部下たちは優秀で領土の政はすべて引き継いでいましたから、領民は、今でも、研究の失敗で穴が開いたと思っているでしょう」


 「君は、ホーリーの母親の事を聞いてどう思った?重度の魔力欠乏症から目覚めたのだ。知りたいとは思わなかったか?」


 「はい、知りたくて僕なりに調べました。ホーリーの母親は、倒れてすぐに神官によって治療を受けています。派遣された神官は平民神殿の神官で、僕の母親と違う所はここだけでした。そして、古代数式が残っていたのも平民神殿だけだったのです」


 「平民神殿か‥‥貴族は入れないし、平民神殿の神官も呼べないな‥‥」


◇◇◇◇◇◇


 古代数式を手に入れてから、学生たちは色々な魔法陣に古代数式を埋め込む作業に取り掛かったが、国王陛下の容態が発表されると学生は領地や屋敷に戻され、作業は中断するしかなかった。第2皇子からは、古代数式の解析の催促がきても、アガシー研究所で対応するには人手が足りなかった。


 「今日、屋敷に戻り、息子に爵位を渡してくる。明日、リンの所に出発するが君はどうする?」


 「僕も爵位の授与式が済んでいませんので、王都を出る事が可能です。一緒に行きます」


 王都の門は厳しい審査があるが、2人はグレーな立場で何とかプラザ町に向かって出発できた。


 「アガシー先生、引っ越すと疑われてますよ」

 「ああ、それぐらいの覚悟で来てる。これだけ持ち出せば後世に残すには十分だ。ハハハハ」


 ベル商会は古びた小さな商会を装っているが、奥には魔法陣があり、リン氏に研究所に向かう事が出来た。


 「本当に来たのか?本は持って来たのですか?」

 「ああ、今までして来た研究のすべてを持って来た。それで古代数式は見たか?」

 「はい、ご丁寧に第2皇子の側近が持って来ました」


 「それで、国王陛下はどのくらい眠りそうだ?」リンは静かに聞く。

 

 「どうだろう、目覚めるのか?スプリンドはどう思う?」

 

 「僕ですか?重度の魔力欠乏症から回復した人はホーリーの母上しか知りませんが‥‥」


 「父上は人生をかけて研究していたのにか?」


 「はい、そうです。領主邸が消滅するまで研究していましたが、不思議な事に、数年前からは、国王陛下より研究費も頂いていたみたいで、代官が報告に来たことがありました」


◇◇◇◇◇◇


 「君には妹さんがいたらしいな」

 「はい、妹は、生まれた時から虚弱で、母はいつも寄り添い面倒を見ていました」

 「でも、妹さんが亡くなり、その後、母上は魔力欠乏症になり亡くなって、それから、父上はずっと魔力欠乏症について研究している?これで合ってるか?」


 「母が亡くなってから8年、その前、眠り続けたのは2年です」

 「母上の遺体は見たか?」とアガシーは聞く。

 「はい、墓に埋葬する前に会いました。魔力欠乏症でしたが綺麗な母のままでした」


 「そうか、そこが、違う所だな」

 「どういう事だ?」

 「ペーター家で発見された魔力奴隷たちは、全員魔力欠乏症の眠りについていたらしい」

 「それで?」

 「診療所に入り、医師にも見せたし、神官も呼んだらしいが、しばらくしたら全員が消えていなくなっていたらしい」


 「恐れしくて、目覚めて逃げたのではないか?」

 「ホーリーと母親は眠ったままで、他は逃げたのか?そんなはずないだろう、領主は、彼女たちにこの事実は伏せているらしいが、僕は土地と同じように消滅したと思っている」


 「ではなぜ、2人は生き残ったのでしょうか?」とリンは質問した。


 スプリンドが静かに話し出す。

 「父と僕は、妹は、ホーリーのように自分の魔力を上手く扱えなかったのでないと考え、それで、母は妹が倒れた時に、自分の魔力を妹に注ぎ込んで魔力欠乏症に陥ったのではと言う仮説を立てました」


 「だから、母が眠りについた2年間、父も僕もどうにか魔力を母に与える事ばかり考えていました」


 「しかし、それは、成功しなかったのだね」

 「はい、そうです」


 「国王陛下からの援助はいつ頃から始まったのだ?」

 「母上が亡くなってしばらく経ってから‥‥、え~~と、第1皇子が留学されてからでしょうか」


 「君の領土には魔力奴隷は存在したと思っているか?」

 「‥‥‥、父は自分の魔力に自信のある人間でしたので、他の誰かを頼る事はしないでしょう。僕は、あの時、平民神殿の神官の存在を知っていれば、必ず、頼っていました」


 「平民神殿の神官は平民しか診ないのだぞ」

 「それなら父も僕も、きっと、平民になりましたよ」


 「なぞは残るが、しばらくは数式の解析を進め、1カ月したらホーリーに会いに行くか?」


 「なぜ1ケ月?」

 「第2皇子が1ケ月の静養が必要だと力説していたからだ」

 「それは、意外に過保護ですね」


◇◇◇◇◇◇

 

 それから数式の解析に取り掛かった3人は、地獄を見る事になる。リンの研究所は広く環境もいいが、人手がなく、部屋はどんどん汚れて行く、たまに、広場で魔法陣の実験をするが、失敗続きで土地に穴が開き、それを土魔法で直す余裕もない。


 食事は、ベル商会の人間が用意してくれるが、手を休めたくない3人は常に栄養が偏った状態になり、不健康そのもので、常にクリーンで過ごしている為に顔色も悪くなってきた。


 「従者も連れて来るべきでしたね」

 「リン、この町で誰か雇う事は出来ないのか?」


 「王都と違って魔力持ちがそんなにいませんし、お貴族様に仕える人間は存在していませんよ」


 「そろそろ、風呂に入るか?それとも寝るか?」

 「アガシー先生、僕は寝ます」と言ってスプリンドはそのまま倒れて眠った。


 結局、1ケ月を待てずに、プラザ町を出発し、ホーリータウンを目指す事になった。


 「僕はあの領土の街に知り合いがいるから、街からは時間短縮の為に移動魔法陣を使おう」


 「ホーリーの家には色々な魔法陣があるのですね?」


 「起点が存在しているからな、そう言えば、彼女は、魔馬の上で眠りながら移動していたと聞いた事がある」


 「そんな事しているから魔力欠乏症になるのですよ」と、スプリンドは呆れている。


◇◇◇◇◇◇


 ホーリーの領土の街に着いたリン一行は、グリーク工房を探し移動魔法陣の許可申請をした。


 「本当に、ホーリータウンにベットや資材を運び入れるだけで大丈夫ですか?」


 「ああ、大丈夫だ、魔力の心配はない、それで申請してくれ、そうだ、ベットの他に布団も3人分用意してくれ」

 「先生、ベットと一緒に、机や本棚も必要ではありませんか?」


 「リンさん達は、ホーリーの家に数日、泊まるだけですよね?」

 「そうだ、その為に準備は必要だろう?」


 「確かに、今は1人で住んでますから、ホーリーに許可は取っていますよね?」と心配そうにグリークは聞く。


 「許可は着いてからとる予定だ。グリーク、こちらの方は、ホーリーの先生だから心配ない」


 「実は、ホーリーの担当の先生と言う方が、数日間にもいらっしゃって、家を建てたのですが‥‥」


 「‥‥‥」


 

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