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ホーリーが消えた貴族学校④


 第46章


 アナベルはその場で泣きながら何度も頷き、「ありがとうございます、ありがとうございます」と言い続けた為に、フェリクス先生はアナベルを領主邸まで送る事になってしまった。


 領主邸の門は、要塞のように聳え立ち、門番までもが大柄でプレジーは怯えながらフェリクス先生の身分を告げる。


 「アナベル!!」と叫びながら駆け寄って来たのはグレイで、フェリクス先生を見て驚いている。


 「君たちと僕は接点はあったか?」

 「私達はバーグ先生の教室の生徒で、ホーリーとケルフと一緒に学んでいます。彼らの影響で、私達もフェリクス先生の教室で学びたいと思っていました」


 「彼らと君たちの目標は違うだろう?」


 「先生、少し、わたくし達の話を聞いて下さいますか?」と言われ家に招かれた。


 「フェリクス先生、ようこそお出で下さいました」と2人は頭を下げて挨拶をする。


 「旅の途中で立ち寄った街だ。いい街で1週間も滞在しているが、ここは鉱山が有名らしいな?」

 「はい、鉱物には困りませんが、食料自給率が著しく低いのです。今まではお隣の伯爵領から買い入れてましたが、伯爵領があのような事になり、困っているのです」


 「あぁ、そうか、それでケルフやホーリーと仲良くなったのだな。農業の事は彼らに聞くといい、ケルフは何でも知っているし、ホーリーの村の土はいいぞ、緑魔法ですぐに芽が出たくらいだ」


 「フェリクス先生は、ホーリーの村にいらした事があるのですか?」

 「ああ、ホーリーが植木鉢に植えた桃の種を発芽してみた。あのような事は初めてだ。土の養分が違うらしい」


 二人は手を合わせ『尊敬~』ビームを送って来る。


 「桃は、あの甘くてみずみずしい桃ですよね、素晴らしいです。今、我が領土に伯爵領からの難民が押し寄せて来ているので、彼らの経験を生かして田畑を耕しているのですが、地面が固い為に土魔法を導入しても、作業がなかなか進みません。私達も一緒に魔法で耕しながら鑑定を行っているのですが、馬房の土にも及びません」


 「馬房の土って、アレクサンダーの馬房か?」

 「はい、そうです。今、ホーリータウンが閉鎖されているので、ケルフが馬房の土を植木鉢に入れて持って来てくれました」


 「君たち、それを鑑定してみたか?」

 「はい、凄い魔力量と馬糞が混ざった土でした」

 「‥‥‥」

 「その植木鉢はあるか?」

 「はい、ございます」


 フェリクスは、植木鉢を持って鑑定してみると、何かが植わっていたらしく発芽した。


 「先生!!凄いです、本当に発芽しました。私達が毎日のように挑戦しても発芽しなかったのに!」


 『尊敬~~』


 「嫌、おかしいだろう、この土の中に何か入っていなかったか?」

 「実は入っていました」と、言ってグレイは薄紫の魔石を取り出した。


 フェリクスは、貴族らしくなく大声で笑いだした「ははっははははは~~、すまない、この馬糞が混じった土は素晴らしい肥料になっている。ホーリーが戻ったら君たちに売るように助言しておくよ」


 2人には理由がわからないが、『尊敬~』の眼差しを向けたまま感謝を表した。


 その後、昼食に招待され、この領土に来た目的を話す。


 「伯爵邸の消滅の後を見に行くのですか?」

 「そうだ、君たちは伯爵邸に遊びに行ったことはあるのか?」

 「はい、フリーネ様とは同い年でしたので、小さい頃にお邪魔しました」

 「伯爵邸の敷地内に神殿はあったか?」

 「はい、親戚があちらの領土に嫁いだ時は、貴族神殿で式を挙げてました」

 「平民神殿はどうだ、在ったか?」

 「覚えていません、しかし、普通の領主邸には2つの神殿がありますよね。我が家にも2つあります」

 「そうか、まぁ、探してみるよ」

 「お力になれずに申し訳ございません」

 「所で、さっきの種は、何の種だったんだ?」

 「はい、ケルフが言うには枇杷と言う木の種だそうです。成長するまでには時間がかかるようで、楽しみにしています」

 「ははははは~、それは随分と時間がかかる贈り物だな、旅の終わりに、ホーリータウンに寄るので2人に発芽の話をしておくよ。ご馳走様」


 プレジーとユルも使用人用の部屋で食事を頂き、アナベルの屋敷を後にした。


 「坊ちゃんは生徒さんに、尊敬されていらっしゃるのですね」ユルは嬉しそうに話す。

 「最近は彫刻以外が多いのは‥‥なぜだ?ホーリーに使われ過ぎているな‥‥」


◇◇◇◇◇◇


 翌日の早朝、フェリクス一行は、伯爵領があった場所を訪ねた。ペーター家と同じような惨状で、あまり見て回る場所はなかったが、領土に残った途中の村で、カーズ村の農民のように畑を耕し、昼食をとっている風景を見る事が出来た。


 「ここは、すべての領土がなくなった訳ではないのですね」

 「そうだな、そう考えるとおかしくないか?その領土によって魔法陣の大きさや効力が違う事になる」


 「面積の違いもあるのではないでしょうか、ペーター家の領土の方が狭かったように思えます」

 「そうか、そういう考えもあるな、しかし、領主邸はあの空間のどの辺に在ったのだろう)


 ユルは通りかかった村人に聞く、

 「この辺りに平民神殿はありますか?」

 「神殿?お貴族様のしかなかったな~~、領主様は平民が嫌いだったからナ」

 「え?どうしてですか」

 「今は、いなくなったから言えるんだけども、出自がどうやら平民らしい、先代の妾の子供が領主様だ。平民の子供なら、もっと平民を大切にしてくれたらよかったのにな~~、そうすれば、こんなことにはならなったって、みんな、言っている。農家の娘をもらったから穀倉地帯に変われたのに、恩を仇で返した罰だな」


  フェリクスは土を鑑定してみる。やはりわずかだが魔力を感じられる。先代の奥方は緑魔法の使い手で貴族学校に在籍したことがあるんだ。それなのに‥‥なぜ、魔力奴隷が必要になったのか?


 「う~~ん、わからないし、神殿は存在しないし、王都も不安定だし、ホーリータウンに向かうとするか」


 「そうですね。しかし、ここからは10日はかかりますよ」


 「そう言えば、もう1カ所、消滅した領土があったな、そこは、帰り道で寄れそうか?」

 「はい、アガシー先生の生徒の領土ですが、ここから3日くらいはかかります。寄りますか?」

 「ここまで来たんだ。寄って行こう」


◇◇◇◇◇◇


 スプリンドの領土は、伯爵家の領土よりも広くなく、山に囲まれた地域だ。ここまでの道のりは整備されていて、道の両脇は小さい村が存在している。


 「村人たちは、街道で作物や日用品、服などを売っている様ですね」

 「この先だな、しかし、良く村人は助かったよな?みんな普通に生活している」

 「はい、不幸を嘆く人々とは思えませんね、ここは誰の領土なのでしょうか?」

 「すいません、ここの領主邸はこの先ですか?」

 「ここには、領主様はいらっしゃらない。随分前にこの辺り全部を代官様に割り振ったんだ」

 「え、どういう事ですか?」

 「領主様は、数年前に、消滅した領主邸で研究したい事があるから、領主の仕事を代官様に割り振ったんだ。代官様たちが村長になって村を仕切って税を集めてる。代官様は領民の事を考えてくれて、儂らは生活出来ているし、領主様は、好きな研究に没頭できたんだが、研究中に爆発が起こって領主様の土地が消滅してしまった。ここを真っすぐいくと、何もなくなっていて、びっくりするから、言って見ろ」


 「領主は何の研究をしていたのですか?」

 「魔術とか魔法陣とか、よくわからん、領主様は研究者で為政者ではなかったと、代官様は言っていたけど、周りにいた人間も変わり者が多かったみたいだ。何を研究してあんな大きな穴が開くんだ?」


 その後、村の代官にも話を聞いたが、奥方は亡くなっていて、スプリンドは王都の屋敷で育ち、領主邸には領主しか住んでいなくて、メイドや使用人はすべて村からの通いだったそうで、消滅によって亡くなったのは、領主様ただ1人。


 「ここもまた消滅の規模が違いますね」

 「あぁ、でも、なんだか気味が悪いな‥‥」



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