貴族学校2回生⑫
第42章
「体調はどうですか?はい、これ、義姉さんからスープです。随分と眠っていたのですね。体は大丈夫ですか?」
「そ、そうですね。魔力欠乏症は眠る事で魔力が戻りますし、お腹も空かないので、ずっと寝てました」
家に向かおうとして歩き出すと、リリーさんとアデル、ミル、リウスも走ってやって来る。
「ホーリー、入れて!!」と大声で叫ぶので、もう一度戻って招き入れる。「どうぞ~~」
みんなで合流すると、マコーミットさんと女の子3人は、急いで麦畑を見に行って、リリーさんはホーリーの家にやって来る。
「ホーリー、随分と部屋の中が変わっているけど、本当にずっと寝ていたの?ケルフやプレジーの手紙には、ホーリーの病気は眠らないと回復しないから、起こさないようにと書かれていたけど‥‥?」
「へへへ、たまに起きて食事もしてましたよ。でも、あの日から1ケ月以上経っているとは思ってもみませんでした。戻ったら、ケルフとプレジーには謝っておきます」
「ホーリー、貴族学校には戻るの?」
「‥‥‥、わかりません」
◇◇◇◇◇◇
アデルたちは、麦畑から直ぐに戻って来て、驚きながらもこたつに入って来る。
「温かい」
「ぬくい」
「しあわせだ~~」 三者三様だが、概ね好評のようで嬉しい。
「これ、いつ作ったの?」
「最近よ、ストーブを点けると暑いし、点けないと寒いし、これなら、眠くなると寝られるからいいでしょ?」
「いい、すっごくいい、でも、この丸のがないと温まらないのでしょ?」
「まぁね、魔力持ちの特権だと思って許してね」
「うん、許すよ。ホーリーがたくさん魔力を使って、すごく偉いんだって、お兄ちゃんの手紙に書いてあった、でも、その‥‥だから、ホーリーは病気になったのでしょ?無理しないでね」
「無理してないよ。たくさん休めたからね‥‥、気を使わせて、なんか王都の方は大変なのかね?」
「‥‥叔父さんが急いで来たからね。何かあったんだろうって、お父さんが言っていたよ」
リリーさんもキッチンからこたつに入って、5人でお茶を頂きながら、軽食を食べているとマコーミットさんが、戻って来たので4人はカーズ村に戻っていった。
テーブル席に場所を移し、お茶を入れ直し、マコーミットさんと向き合って話す。
「貴族学校は、お変わりないですか?」
「ホーリーがこちらに戻ってから、国王陛下のご容態が発表されて、貴族たちが王都に戻り始めました。その為に、これからが、本格的に国内に変化が起こると言うのが大方の予想です」
「それは、食糧がですか?」
「それもあるが、海外物資の交易も不安定になって来て、物価も上がると予想されるし、何よりも魔力が1カ所に集まり過ぎる」
「マコーミットさん、それって?」
「出発にあたり第2皇子から説明がありました。僕も長年、王都で生活していたが、まったく気が付かなかったよ。正式発表は、国王陛下の体調不良の為だが、平民学生は領土に返される事になりました。貴族の子供達も王都の屋敷内で待機するか領土に戻りますので、事実上の閉鎖になります」
「え?」
「ホーリータウンに戻れる、大丈夫だ、もう、君の魔力がなくなる事はなくなる。安心したかい?」
マコーミットさんの言葉を理解するまで時間がかかったが、涙がポロポロとこぼれ落ちた。その後、マコーミットさんはホーリーが泣き止むまで待ってくれて、今後の予定を話す。
「今日は、ゆっくり、休んで、明日、体調が許すなら移動魔法陣で貴族学校に戻ろう。みんな心配しているし、最後に挨拶は必要だろう?」
「はい、部屋も引き払った方が良いのですよね?」
「いいえ、君たちの寮の部屋は残す事になった。つまり、ケルフとホーリーの部屋は残したままで在学中と言う事になった」
「なぜ?」
「まぁ、君たちが知る過ぎているのもあるが、評価も高い、使い勝手がいいも理由になるかな‥‥」
「そう聞くと、退去したいですね」
「ふふふ、そう言わず、ケルフと一緒に僕を助けて欲しい」
「マコーミットさんは、王都に残るのですよね?」
「そうなるね。だから、麦の搬入が終わるまで、ここの移動魔法陣を開けてくれていると助かる、今回のように馬車での移動は大変だから‥‥、すまない」
「それでかまいません、私にもお金が入りますし、王都での買い物も頼みたいので‥‥」
「この部屋で、足りない物があったのか?」と、マコーミットは部屋の中を見回しながら言う。
「綿の布団が欲しかったです。私の布団の中身は紙くずなので、寒くて眠れませんでした」
「‥‥‥」
◇◇◇◇◇◇
次の日、ホーリーは、マコーミットさんとアレクサンダーを連れて貴族学校に戻った。
人目を気にして、早朝の出発で眠いと思いながらも寮に入り、ケルフに通信魔術具で話しかける。
「ケルフ、おはよう。ただ今戻りました」
「ホーリー、心配したよ、体の具合はどう?本当に心配したんだからね」
「1か月半以上も休ませて頂きましたので、万全です。ケルフはフェリクス先生の所に通っているの?」
「フェリクス先生のお屋敷にもご両親が戻って来ていて、先生も忙しいみたいで、教室に行っても会えないよ。バーグ先生は、いつもあの温室にいらっしゃるから、僕の緑魔法は随分と進んだよ」
「じゃあ、今日は、バーグ先生にご挨拶に伺うわ、待ち合わせは出来そう?」
「ああ、いつもの所でまってる」
3人は、待ち合わせ場所で久しぶりに会う。3人で貴族学校で待ち合わせをする事が嬉しい。
「行こうか?」
「うん、お昼どうする?」
「リリーさんが大量のおかずを用意してくれたの、見て、これ重い 」
「ホーリー、僕が持つよ。バーグ先生の温室も生徒が来なくなって、温室内で食事の許可が下りたんだよ」
「そう、良かった。3人で食べられる?」
「この量ならバーグ先生も一緒に食べる事が出来そうだな」
「え〜、お貴族様はどうかな?」
「そうそう、ホーリータウンにも毒草がいっぱいあって、びっくりだよ」
学校に登校して、お昼や授業の話をしながら歩いていると、懐かし気持ちが溢れて泣きそうになる。
(どうか、このまま時が流れますように‥‥)
久しぶりにバーグ先生に会って挨拶をして、1カ月間、色々と鑑定してきたことを話す。
「そう、薬草は持って来た?」
「いいえ、でも、すべてメモしてあります。コモモリと言う草だけは、毒と薬の両方の結果がでました」
「そう、コモモリとは、このような花が咲いていたかね?」と、本を開き花を指さす。
「花は咲いてません。王都よりも寒いので、花は見かけませんでした」
「では、花が咲いたら気をつけた方がいい、花に多少の毒があって葉は薬草になる」
「そうなのですね。勉強になります」
「‥‥君の村には本はないのか?」
「はい、村には私の家しかありませんし、家に本は置いてありません。今まで何も感じませんでしたが、勉強ができなくなるのですね。バーグ先生が推薦する植物図鑑はありますか?教えてほしいです」
「僕の村には、叔父さんが置いて行った本があるけど、10冊くらいかなぁ‥‥」
「‥‥2人共、これから貴族学校で学ぶ事が難しくなるだろうね、領主邸には多くの本や資料が保存されているが、農村地域で勉強を続けるには、やはり、本が必要になる‥‥か‥‥」
「でも、私達、購入方法を知りません‥‥」
「そうだね、僕に任せてくれるなら、準備しておこう。代金もそんなに高くない様にしておくよ」
「何から何までありがとうございます。バーグ先生、私達はまだ在籍中で寮に部屋ありますので、また、先生を訪ねてもよろしいですか?」
「ああ、僕はこの温室を離れない、ここが僕の居場所だからね、いつでもおいで、待ってるよ」
バーグ先生の温室の中でリリーさんのご馳走を4人で食べた。バーグ先生が美味しいって褒めてくれて、ケルフは嬉しそうに笑っていた。
温室を出てから、フェリクス先生や第2皇子を訪ねたが、2人とも留守、アガシ―先生の研究所は閉鎖されていた。その後、受付でジェシーさんに欲しい物リストを渡し、部屋でリンさんに呼びかけるが、返答はなかった。
こっそり、部屋に来ていたケルフとプレジーも何かを感じたようで、
「僕たちも荷物をまとめて村に帰らないか?」と、真剣な顔で問いかけている。
「そうね、これからすぐに戻りましょう。集合はアレクサンダーの馬房よ」




