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貴族学校2回生⑪


 第41章


 「これって完全に数学だわ、古代数式って数学だったの?でも、私、数学ってどこで習ったのかしら?どうして、これらがわかるの?いつの転生‥‥思い出せない」


◇◇◇◇◇◇


 ページをめくっても、本を替えても、そこに書かれているのは中学から高校の数学で必要な事ばかり、移し始めると解きそうになって、手を止める。頭の中でどうしたいのか理解できない、いいえ、理解できる二次関数と因数分解だ。Ⅹを求める式は‥‥、解いてはいけない、違う!違う!混乱していて頭がおかしくなりそうだ。


 (写すだけ、私は代筆屋なの、丁寧に書き写せばいい、考えるな!でも、手の震えが止まらない)


 ホーリーは、またもや前回の教訓を生かせず、魔力を使いひたすら書き写し、その場で倒れた。


 目が覚めた場所は、神殿の一室で、プレジーが側に居てくれた。


 「プレジー、私‥‥」

 「魔力切れだって!神官様が、運んでくれて、治療もしてくれた。第2皇子の護衛達も外で待機してる。大丈夫か?こんなになるまで、ホーリーが頑張る必要があるのか?これはお貴族様の仕事だよ!」


 「そうね。プレジーの言う通りよ。お貴族様の仕事だわ、心配かけてごめんなさい」


 「泣くなよ‥‥」

 「でも、プレジーが泣いているから‥‥」


 2人で泣いていると、さっきの神官様が入って来て、体調を診てくれる。


 「これからは、魔力を使って書き写す事は止めた方がいい、ミルサーチさんのように魔力欠乏症になって起きられなくなりますよ」


 プレジーが真っ青な顔をして神官様の言葉を聞いているが、神官様は席に座り優しい声で聞く、


 「ホーリーは、自分の中にある魂を意識した事はありますか?ここです、この辺りに有ります」


 「いいえ、よくわかりません」

 「そこは魔力が溜まる場所と、意識しながら暮らしてみると良いでしょう。そうすると魔力がなくなるまで、無理をする事がなくなります。今回は、神殿内で倒れたから良かったですが、場所が違えば最悪な状況になりますよ。この後1週間は休息が必要ですが、診療所に入りますか?」


 「いいえ、私の家に帰ります。あそこは自分の魔力が漂ってますから、ありがとうございました」


 その後、駆け付けて来たルーツィに写本を渡し、ホーリータウンへ帰省する理由を話し、アレクサンダー馬房の移動魔法陣を発動してもらい、ホーリーとアレクサンダーは家に戻った。


 見送るプレジーの泣き顔がぐちゃぐちゃで、少し笑って手を振った。


◇◇◇◇◇◇


 「とにかく寝よう」今のホーリーには、ただそれだけだった。


 たまに寒さで目が覚める。それだけで、王都ではないと分かった。家に戻って来たんだと安心して、また、眠る。‥‥眠たいが、寒い、ストーブを点けると暑すぎて部屋の植物もぐったりしてる。


 クズ紙の布団では冬は越せなったね。帰ったら、王都で毛布と布団を仕入れようなどと考えるが、今はどうしたらいい?しばらく悩んでから、湯たんぽを作ると決めて起き上がるが、寝すぎて足がもたついて転んだ。


 「イタタタ‥‥湯たんぽって、この国にあるの?それは、どこで見たの?」


 この国でのホーリーの記憶は、7歳で亡くなったホーリーから引き継いでいて、この家もきっとペーター家で住んでいた離れを参考にして建築したと思っていたが、本当にそうなの?貴族と平民の差では説明できない何かで、この家は施工されたの?いやいや、今までの転生先の知恵でしょう‥‥多分


 「考えるのは止めよう。魔力欠乏症にならない為には、今、持ってる知恵を使わなくては‥‥」


 冷え冷えした作業部屋に入り、粘土で湯たんぽの形を成形して、中にコンロで使っている魔石を入れて火を点けてみると、メチャクチャ熱くなって持つことできない。


 「あっつ、あっちちち、これは駄目だ、火傷する。湯たんぽなんだから、お湯を入れればいいのか」


 陶器の湯たんぽから魔石を取り出し、お湯を入れると、周りがいい感じになり、この温度を持続させる為に小さい魔石を投入し、湯たんぽに結界を張る。


 上手に出来た。タオルに巻けば布団の中に入れられる。蓋は‥‥、使い捨てと思って粘土で蓋をした。


 そして、また、寝る。魔力欠乏症の人は食べなくてもいいらしいから、ミルサーチも最初はそのような設定を引き継いで生きていた。すごい人だよ‥‥


 「でも、魚が食べたいな、大根おろしをつけて、明日、起きたら釣りでもしようかな~~キャンプで使う折り畳みの椅子とか便利だよね‥‥、あ~~、キャンプとか言っちゃって、バカバカバカ!!考えないで寝よう、とにかく、明日まで寝よう」


◇◇◇◇◇◇


 どれくらい過ぎたかもわからないけど、体調がいい、魂に魔力を感じ取ると腹が空いて来た。


 家の氷室には冷凍されたパンが残っていて、フライパンにバター引いて温め直して食べる。お茶はフェリクス先生の好みに変えられたが、このお茶も好きだ。


 外に出ると、アレクサンダーがじっと立っている。


 「心配かけたね、もう、大丈夫だよ。ずっと待っていてくれたの?ありがとう‥‥」


 「今日は、釣りに行こう!大根もその辺に有るよね‥‥、シマッタ!醤油はないか‥‥」


 建築当初に人足が残して行った釣竿を探し出し、家から一番軽そうな椅子も運び、クッションも置いて、ゆっくりと水面に糸を垂らす。


 「リハビリには無心がいい、何も考えずに夕食のご馳走を待つだけが治療になる。アレクサンダーここにいるからお散歩に行っていいわよ」と、アレクサンダーを散歩に送り出す。


 可愛いアレクサンダーは、心配そうにノソノソと出かけて行った。


 「無心、無心と思いながら水面を見ていると、お父さんに会いたいなと呟いている。お父さんの顔は鮮明に覚えてるが、お母さんは、まったく思い出せない。大学入試に苦労した記憶が‥‥、あ~~、数学ができなかったに違いない。転生しても数学に悩まされるなんて‥‥‥、あ~~、ダメ、ダメ、無心に戻ろう、無心、無心、ここで意識が飛んだらどうする‥‥考えるな!」


 釣り糸を垂らしながら、暴れているので、魚は全くかからず、今夜のおかずは野菜とウインナーだと思って後ろを振り返ると、アレクサンダーがウサギを銜えて待っていた。


 「アレクサンダー、予想通りと言う顔は止めなさい。それに、ウサギは裁けないから食べれないのよ」


 「ごめんね‥‥、夕方になるから帰りましょう」


 「明日は人足の仕掛けを使って見ましょう。釣りの才能はなさそうよ」と言って、アレクサンダーと一緒に家に帰る。


 「でも、こういう日常が一番いいよね、アレクサンダー」


 その日からは、現代の知識を活用しながら生活をしていく、フェリクス先生のソファとホーリー用のソファがあるのに低いテーブルがない。こたつがいいのでは?と思い、廃材で大きなこたつを作る事にした。熱源は湯たんぽを活用する。街で買いだめした布を使って大きな紙布団も作る。こたつは魔物なので、小さなキャストで周りを固めて、自分が、ぐうたら出来るようにした。


 「観葉植物も必要だけど、何がいいかしら?鑑定してみる?」


 バーグ先生に教えてもらった植物の鑑定は、ここでは非常に役立つ。野生の草には薬草もあるが、毒草も存在していて、鑑定無しの拾い食いは、絶対にやめるべきだと心から思った。


 インテリア用のスタンドも陶器で作った。まぁ、窯で焼いた為に作り過ぎたが、夜が明るいのは助かる。


 あの日の夜、アレクサンダーの悲しそうな顔に負けて、ウサギを裁く事にも挑戦した、リリーさんのようには出来なかったけど、血抜きをして泣きながら謝って肉の形にした。翌日から魚も仕掛けに入っていたので、塩焼きにして食べた。美味しかった~~


 「ここの生活、最高じゃん!」などと言って貴族学校をすっかり忘れていると、カーズ村から木を叩く音が聞こえて来た。


 「カーズさんかな?用事があるのかしら?結界が張ってあるから招き入れないと入れないのよね」


 しかし、そこに待っていたのは、マコーミットさんだった。


 「どうしたのですか?」

 「ホーリー、君は1ケ月以上も欠席している。今、王都が不安定な状況で、麦の確認がしたいです」


 「そんなに経ちましたか?」(カレンダーつくるか?それともあるのかしら?う~~ん、そこから?)


 しばらく考えていると、気まずい雰囲気になってしまっている。


 「マコーミットさん、どうぞお入り下さい。王都から馬車でいらしたのですか?」


 「そうです、移動魔法陣もホーリータウンの結界に阻まれてしまって、通信魔術具も持っていませんよね?第2皇子がリンさんに頼んでくれたのですが、役に立たなかったので、僕が直接来ました」


 「あ~~、神殿に入る前に魔術具を全部外したの忘れてました。すいません」


 

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