貴族学校2回生⑦
第37章
午後、アガシー先生の第2回目のテストが始まる。ケルフとホーリーは、昼食の時間を休息にあて、どうにか復活して、テストに望んだがケルフは今回で脱落になった。
「ホーリーだけでも合格して良かったよ」と、ケルフと話しながらプレジーを待っていると、第2皇子と会う。第2皇子もこの教室を選んでいたらしい。
「お久しぶりです、第2皇子」
「ああ、丁度いい、話があるんだ。少しいいかな?」
「私たちは、プレジーを待っているので合流してから伺います」
「そう、では、僕らもここで待つよ」
プレジーはアガシー先生への賄賂、いや、手土産を押しながら登場して来て、状況不明に陥っている。
「第2皇子に、ご挨拶申し上げます」と頭を下げる。
「じゃ、行こうか?」
「え?」
「実はそのワイン樽に用事があるんだよ」
◇◇◇◇◇◇
貴族学校の皇室専用の離宮、メイドによってお茶とお菓子の配膳が終わり、第2皇子は、優雅にお茶を楽しむ。
「ホーリー、聞く所によると、君の村にはワインが大量に眠っている様だね?」
「大量ですか?この樽が、後15樽ほど残っているだけですが‥‥」
「ホーリータウンは、ブドウの生産も行っているのか?」
「いいえ、ブドウが群生している場所がありまして、カーズ村の人たちがすべて収穫してワインにしました。でも、収穫し過ぎて、今年はブドウが食べられないかも知れません」
「しかし、15樽とは多くないか?」
「ええ、私が大人になるまで熟成させるつもりです」
「カーズ村にも同数あるのか?」
ケルフが、「多分、殆んどないと思います。彼らが何年もかかる熟成を楽しみに待つ事はないので」
「‥‥‥」
「こちらのワインは第2皇子に差し上げるワインですので、どうぞお納めください」
「実は、我が国と交易のある国が、ホーリータウンのワインの購入を希望していてね」
「試飲もなしにですか?」
「フェリクス先生は、彫刻が専門だが、ガラスの瓶も作れるようだね」
「はい?」
「美しいガラス瓶に入れたワインを留学時代の友人に送ったそうだ。今回、彼の目的は、宮殿で楽しむ酒類の買い付けだったようで、こちらに問い合わせが来た」
「では、先程プレゼントしたワインを差し上げて下さい」
「しかし、この樽だけでは足りないのだ。交易はお互い様であるように、こちらからも輸出しなくてはならない。だから、10樽を相手国に、2樽を王宮用に売って欲しい。価格は、勿論、カーズ村の人足代も含めて支払うつもりだ」
「いいですけど、残りの3樽は絶対に売りませんよ。大人になってからの楽しみですから」
「わかった、助かる」
「所で、フェリクス先生のガラスの瓶はどのような形をしていたのですか?」
「相手国の役人に聞いたのだが、女性の様だったらしい。フェリクス先生の事も褒めていたようだ」
「‥‥‥」
◇◇◇◇◇◇
その頃、アガシー教授の研究室、
「あの平民は合格してのか?」
「はい、もう1人の平民は不合格になりましたが、ホーリーは合格したと報告がありました」
「今回の本には通信魔術の最新版が掲載されている。これでリンと通信を始めるだろう‥‥」
「先生は、よろしいのですか」と、スプリンドは冷たい顔で聞く、
「ああ、リンは役に立つし、今は、そんな事も言っていられないだろう?君の出身地が消滅したんだ。真相を解明してくはないのかね?」
「貴族学校にいたから君は免れたが、父上は‥‥」
「しかし、我が家門の王都の屋敷は残っています。ペーター家は王都の屋敷も地方の別荘も、数多い愛人宅さえ消滅していました。穀倉地帯の伯爵家は、領主邸すべてと王都の地下だけが消滅、残った土地に平民は移り住んでいますが、難民も大勢出たようで、この違いは何でしょうか?このような事が出来る魔術師が存在するとは考えにくいです」
「う~~、そうなのだが、ペーター家が持っていた領土はすべて消滅したようだが、彼はかなり金銭的に困っていた」
「はい、彼は、農地、産業地、河川の権利までも平民に売却していました。その為に平民の殆どは無事です。購入したのはベル商会のリン会長ですがね」
「そして、リンは、あのホーリー・ペーターの面倒も見ている。君の家は、農民に土地を与えていなかったのか?」
「父上は研究ばかりだった為、農民には与えずに、政を代行する代官たちに割り振り、村の権利も与えていました」
「それで、領民たちはどうした?」
「消滅したのは領主邸のある場所だけ領民は無事です」
「不思議だと思わんか、誰かが調べ上げ、指示を出し、実行しているにしても、そんな魔力がどこにある。この国は、魔力持ちの魔力が増える事はない、これは皇室内でも密かに研究していて、結論が出ている」
「貴族同士は、魔力保持の為に、政略結婚を繰り返し、魔力の多い子孫を残そうとしているし、魔力持ちの平民は、いい仕事に就けるようにして、貴族と縁付けて取り込んでいる。国を挙げて魔力持ちを囲み増やして来たんだ。その象徴が貴族学校だろう。もし、ここが消滅してしまったらこの国はどうなると思う?」
「そんな事が起こるのでしょうか?」
「ホーリーと言う平民が、8歳でここに入学が許可された意味がわかるか?そして、今年は多くの平民の入学が許可されている。その意図は?」
「‥‥‥、貴族学校を守る為ですか?いいえ違う、貴族たちの魔力の地方へ分散ですか?」
「‥‥‥王都の維持の為だよ、魔力持ちが王都に入ると少しづつ魔力を奪われいる。ここで暮らしている魔力持ちは、王都では魔力奴隷と一緒なのだ。それを解明したのはリン・ベルだ!そして、彼は、絶対に王都への入門が許されていない」
「そ、そんな、先生はその事をご存じで、ここにいらしゃるのですか?」
「遺族の義務だよ。第2皇子によると、あのホーリーと言う子供も気づいているようだ」
「なぜ?」
「彼女はペーター家の魔力奴隷だった‥‥、その為に体が記憶しているのではないか‥‥、不明だが、第2皇子がおっしゃっていた」
「当時、ペーター家のバカな子息は、良くリンの研究内容を盗んでいた。平民のリンは格好の獲物で、バカにされながらも良く勉強していたし、発想も豊富ですぐに商品化できる魔術具を作っていた。彼があの時代、3年も貴族学校に残って研究していたのは、この王都に張り巡らされた魔法陣を研究していたからだ」
「先生‥‥」
「スゴイだろう?彼は天才だ。しかし、平民は誰も助けてくれずに、ペーターのバカ息子に研究を盗まれ、王都を脅かす平民と認識されて王都門の入門を禁止された」
「スプリンド、交流会のように平民を見下す事はしない方がいいぞ。追い出されたリンは、便利な魔術具をいくつも販売しては、財を築き上げ、土地や河川、山までも購入し、王都の一角に商業地域までも持っている」
「ペーター家を破産寸前まで持って行ったのはリンで、土地や河川の権利を平民に譲渡するように仕向けたのもリンだろう」
「では、魔法陣を発動させ、我が領土を消滅させた犯人もリン・ベルではないのですか?」
「国も王室も、そして儂も最初に疑ったのは、当然、リンだ。しかし、証拠もなければ、リン自身も真相を知りたがっていた。真面目な顔をして、僕自身から黒魔術が発動しているか調べて欲しいと願ったくらいだ」
「く、黒魔術ですか?非現実的です」
「自分の魔力が変化して、望んでいる事が起こってしまう魔法がかかっていないか、検証して欲しいと、国王陛下に申し出たらしい‥‥」
「それで?」
「秘密裏に王宮に入り、検証もしたが証拠は出なかったらしい、彼が王宮内に捕まっている間に、伯爵領と君の領土は消滅したんだ。彼は、魔法封じの部屋に閉じ込められていた。完全に無実だ」
「では、誰が‥‥?」
2人は黙り込み、時間だけが流れる。
「そう言えば、今日のテストの後、第2皇子は、彼女を待っていました」
「それで?」
「その後、従者が迎えに来て、大きなワインの樽を運んでいました。何だったのでしょう?」
「映像魔術具は残っているか?」
「はい、残っています」
2人は、映像魔術具で確認したが、なんのヒントも見つからず、スプリンドは調査を始めた。




