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貴族学校2回生⑥


 第36章


 ホーリーが味付けしたスープカレーは、好評で、外で働いている農夫たちにも配られた。


 夕暮れまで働いた人たちが居なくなると、アレクサンダーが戻って来て、自分の小屋に入っていた。


 「アレクサンダー、ウサギどうしたの?なぜ、結界に入れたの?」と、聞いても返事はない。


◇◇◇◇◇◇


 次の日の朝は、帰る準備、休日が少なすぎると思って起きると、元気に、みんなは働いている。


 今日は、ホーリー邸の備蓄の整理だ!ワインは5樽ほど運び出した。第2皇子、フェリクス先生、バーグ先生、アガシー先生、母へのお土産用を箱馬車に乗せる。薪や食料の備蓄は、すべてカーズ村の人に任せて、アレクサンダーと粘土を探しに行くと言って家を出た。村を1周回り、ウサギの岩場に来る。荷車を外し、アレクサンダーが結界の中に入るのを確かめる。


 「オイ!君、どうして入れるの?おかしくない?馬なのにウサギが狩れるの?おかしくない?」


 何度も聞くが、アレクサンダーは、答えてくれない為、ここでじっと待機する事にした。


 岩場の粘土を魔力で集めていると、その瞬間がおとずれた。アレクサンダーは、なんと、ウサギを後ろ足で蹴り飛ばして狩っている。こんな事があるのでしょうか?そして、ウサギをくわえると、自然に魔石が土の上に落ちた。そのまま、食べるのかと思ったが、いそいそとホーリーの元に持ってくる。


 「アレクサンダー、もしかして、わたしの為に?」

 「ヒィヒ~~ィ」と、返事をする。

 この事、誰かに相談する?う~~、見なかった事にして、しばらくは黙っておこう‥‥。

 「帰ろうか、アレクサンダーいい子ね。アレクサンダーは、本当に賢い、最高の相棒だよ」と、撫でまわし、家の方向に戻る。


 すでに、ケルフとプレジーが待機しているが、村の皆さんが用意してくれた、箱馬車の中を見て、2人は驚いていた。


 「みんなはカーズ村に帰った?」

 「ああ、確認済みだ、ホーリー、イチゴの苗は、持ち帰るのか?」

 「そうよ、貴重な実験材料ですもの、ケルフは?」

 「アデルに預けた。野イチゴと同じような物だけど、メチャクチャ甘いぞ!って言った」

 「ふふふ、効果ありそうだね」

 「さぁ、門を閉めに行くか?」


 木の板が揺れている門の前で、大勢の人たちに手を振り、私達は、移動魔法陣で、貴族学校に戻る。


◇◇◇◇◇◇


 次に日、カーズ村の大きめのワイン樽を、いつものワゴンに乗せてフェリクス先生に届ける。


 「フェリクス先生、ホーリータウンのワインです」

 「君たちの村は、樽でワインをプレゼントするのか?」贈り物に驚くフェリクス先生は意外と可愛い。

 「はい」とケルフとホーリーは答える。


 「王都では、瓶だ。それにしてもこの樽はデカイな」

 「このサイズが、後15樽も残っているのです。受け取って下さい。お母さんにも届ける予定です」


 「‥‥‥頂こう、それで、緑魔法教室で教えてもらえる鑑定魔法は進んでいるのか?」

 「まだです。コツがつかめないと言うか、鑑定の目が開かないと言うか、手に魔力を集める訓練はしているのですが、あと一歩、わかりません。でも、この後、バーグ先生にもワインをお届けするので、もう少しヒントが貰えるかも知れません」


 「‥‥‥」


 次のバーグ先生は、ワインが大好きらしく、ニコニコしながら受け取ってくれた。

 「これは、君たちの村の特産なの?」

 「特産?ではないですが、ホーリーの村にはブドウが多く生っていて、僕の村でワインにしました。今年初めての生産で、大人たちが試飲して、出来がいいと言ってました」


 「へー、そうなの、樽に入って1年位なの?そうか、そうか、わかった。僕は、もう少し寝かしてから頂こうかね。所で、鑑定魔法は習得できた?」


 「いいえ、まだです」

 「そう、心臓の後ろに目はイメージは出来てる?」

 「はい」

 「君たち自身の目に、瞳孔があるのはわかる?」

 「黒い丸ですか?」

 「そうだ、それを意識して、この花を鑑定してみて」


 「わ!!!わかります。この花はガーベラで、無毒、この温室内では毎年咲きます」

 「僕にもそう見えます。先生、ありがとうございます。鑑定できました!!」


 「じゃ、彼女たちが行っているように、長いテーブルの上の植物を鑑定して結果を提出して下さい」


 アナベルとグレイは、鑑定魔法を習得したようで、すでに植物の鑑定を始めている


 「わかりました」と、返事をして、ホーリーとケルフも植物鑑定に向かう。


 長いテーブルは、植物の周りにどこまでも続き、途中に椅子が用意されている。


 「ホーリー、魔力切れだ」と、言ってケルフがその椅子に座る。ケルフもアナベル達も途中でリタイアしていた。


 「何日かかってもいいから、テーブルの植物の鑑定を必ず終わらせるように」と言ってバーグ先生は、ワインの樽を従者に運ばせてながら、立ち去って行く。


 アナベルとグレイも魔力切れのようで、椅子に座ったまま動いていない、お貴族様に声をかけていいのか戸惑っていると、アナベルが、話しかけてきた。


 「あなた、1日目で、ここまで来たの?随分、魔力が多いのね。私たちは2日目でここよ、もう今日は、他の授業には出られないわ‥‥」


 「それは、私達も同じですが、魔術教室だけは行かなくてはならないのです」

 「もしかして、アガシー先生の教室?」

 「そうです」

 「あなた達、本当に優秀なのね。あの教室で、テストを受けられるという事は凄いことよ」

 「でも、今日のテストで最後になるかも‥‥」


 「私たちの領土は辺境で、優秀な魔術師はそんなにいないの、アガシー先生の本を手に入れただけでもすごい事よ。あの本には持ち主以外の閲覧禁止の魔法がかかっているのでしょ?」


 「そうみたいですね。私たちは、同年代の貴族の方と、お話したのは今日が初めてで本当に何も知らないのです」


 「本当に?」

 「はい、本当です」


 「でも、私達は、お二人の方が立派にだと思っていました。ご自分の街を救いたいのですよね?」

 「当然よ。その為の貴族ですから、どうにか街のみんなに食糧を届けたいのです」


 グレイも会話に加わり、

 「そう言えば、わたくしの従者は、カーズさんの従者とお知り合いになったと言ってました」

 「交流会の時ですか?」

 「はい、とても親切に土の事を教えて下さったと言っていました」


 「僕たちは、グレイさんの従者が、この温室の場所を教えて下さらなかったら、ここにたどり着きませんでした。ありがとうございます」


 「平民の方は、教室の場所を調べるのも大変なのですか?」

 「私は、従者がいませんし、ケルフの従者は私の面倒も見てくれてますので、調べる事が多くて大変なのです」


 「まぁ、従者がいらっしゃらないのですか?それは、どうして?」


 「グレイ、その様な事を‥‥」


 「信用できる人間が近くにいなかったのと、賃金の問題です」


 「そうですね。信用できる人間の確保が一大切に思いますね。この長い花の鑑定が終わったら、毒の鑑定に入るとバーグ先生はおっしゃっていました。今の貴族には一番必要な事で、誰でも習う事だけど2回生で習うのはとても早い事よ」


 「毒ですか?」


 「そう、少しでも不安を取り除く為にね、それこそ、ホーリーさんの言う信用できる人間を知る手段かしら?貴族間が疑心暗鬼で、聞くところによると、国全体の結界も薄れてきてるようなの‥‥」


 「それは、魔力持ちが減ったと言う事なのでしょうか?」


 「そこも不明みたい、国は今までそのような統計も出していなかったし、元々の土地と魔力持ちの比率やバランスも不明らしいのよ、大体、土地が抜け落ちるなんて誰も予想もしてなかったでしよ?」


 ホーリーは、国が消滅する事を知っている、子供時代の記憶で大きな爆発音と、たくさんの子供の泣き声を覚えている。誕生した国が跡形もなく消え去り、そこから転生する人生が始まったからだ。


 いつの頃からか転生すると任務が与えられて、最終報告が終わるとまた違う人間になる。転生人生の中で何度も経験している訳ではないが、国の消滅は確かにあった。



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