貴族学校2回生⑤
第35章
アレルギー気味のケルフを強引に連れて席に着く、天井からの光が当たる教科書を開き、予習をする。魔術は、計算が多い、公式が決まっていて、そこから自分で使いたい魔術を完成させるようだ。
予想では、基本の魔法陣を覚えて応用するのかと思っていた。基礎魔術と違い、計算も数式も、書くのもめんどくさそうた。
アガシー先生がやって来て、本の説明をする。簡単に言うと、本にすべて書かれているので、自分を煩わせるなと言う事を、堂々と言っているのだ。1カ月に1回、テストがあって、合格すると次の本が貰えるらしい。この大勢の生徒たちは、その本をもらう為に、必死にダンスの練習をして、この制度をつかみ取ったのだ。
それなら、兄弟がいる貴族には、魔術教室が必要ないように思えるが、毎回、貴族にとって重要な最新版を渡すので、家門の為に、絶対に必要らしい。そのくらいの影響力が、アガシー先生にはあると言う事だ。
「ケルフ、わたし1人でもどうにか通えそうだよ」
「うん、驚いた、基本魔術の座学とは、こんなにも違うんだね」
「これなら、アガシー先生にも会わずにすみそうで助かる。まずは、通信魔法を覚えて、後は、リンさんに教えてもらえばいいんだ、楽勝だね!」
「ホーリー‥‥」
こうして、ケルフとホーリーの2回生の学生生活は、3つの教室で魔法を覚える事になった。一番、心配していた魔術教室は、担当教諭が多忙の為に、ほぼ自習という緩さ、2人も魔術を極めたいわけではないが、空き時間は、魔術の勉強をしている。
◇◇◇◇◇◇
フェリクス先生は、ケルフを待てずに、自分でミルサーチの彫刻を完成させてきたが、ケルフの反応はいまいちだ。
「どこが違うとかは言えないのですが、違います」と、ケルフは、きっぱり言う。
先生がミルサーチの彫刻にかかりっきりで、ホーリーの指導は後回しになったので、芸術教室でも魔術の数式を解く、最初の1ページ目で、挫折しそうになったが、みかねたフェリクス先生がたまにヒントをくれるので助かっている。
バーグ先生の授業は、鑑定魔法を覚えるまでは進まない為、ひたすら植物を鑑定するように心がけている。
そして、最初の魔術の試験が行われた。大勢の学生が試験に臨み解答ができあがると、舞台に並んでいる先輩達に渡し、採点してもらい合格すると、次の本がもらえる。様子を伺っていると本がもらえない学生もいる。
「お貴族様でも落ちるんだね」
「僕は、フェリクス先生がいなかったら落ちてたよ、採点してくれた先輩に、欠けた数式をトントンって、指摘されて、心臓が止まるかと思った」
「でも、合格でしょ、良かったよ。これで、ホーリータウンに帰れるね」
「ああ、みんな待ってる。2日間だけど、カーズ村のみんなは、すごく楽しみにしていると思う」
「イチゴの芽も出たしね!」
「良かったよ、ホーリーのだけ発芽していたら、ショックが大きかったけど、俺のも発芽したしな」
「魔力を与えて、鑑定はしてみた?」
「したけど、ダメだったよ」
「私もダメだったよ。発芽や生育は、先生は鑑定ができてからって言うけど、まったく、分からないね」
◇◇◇◇◇◇
移動魔法陣を使って、ホーリー達は帰省する。2日間の休日だ。ケルフとプレジーは、ホーリータウンに戻ると、急いで結界の入り口を開ける。ケルフが村長になったから、直ぐに開けられる。
ケルフを待っていたカーズ村の人たちが、一斉にホーリータウンに流れ込んできた。いつもながら、元気だ!
ホーリーは、箱馬車から荷物を移動させる為に家に入り、アレクサンダーは、運動不足解消の為に、一気に走り出して、どこかに向かった。
出発は、朝の8時と決められていたので、朝食を食べていないホーリーは、新しい氷室から、王都での購入品を、家の氷室に移し替えをしながら、食料を探す。
「ここに居る間に、大量にパンを焼かないとね」と、言いながら、フライパンを出していると、リリーさんが、訪ねて来た。
「お帰り、ホーリー、戻って来てくれて助かるわ、みんなが心配していたから」
「ええ、皆さん、麦畑や芋畑の方に一目散で向かわれましたよ」
「ええ‥」
「はい、これ、朝ご飯とお昼のおかずも入っているわ。夜は、暖かいスープも持ってくる予定よ」
「ありがとうございます。でも、これから、パンも焼いて、ストーブも点けますから、どうにかなりそうです。大丈夫ですよ」
「そう、卵、牛乳、バター、チーズは、この氷室に入れればいいの?」
「はい、氷を作って冷やしておきました」
外から、アデルが、「お母さん、アレクサンダーがウサギを取って来たよ~~」と叫んでる。
(ええ?アレクサンダーいつから狩りが出来る様になったの?それに、あの結界に入れたの?)と、声に出さないで、考えていると、アデルがしっかりウサギを持って来た。
「アデル、ウサギに何かついてなかった?」
「?なかったよ」
「‥‥‥」
「折角だから、ウサギはスープにしましょう。外で裁いて来るわ」と、言って外の炊事場に向かった。
「ホーリー、血抜きに時間がかかるから、畑の色々な野菜を取って来るね」と、アデルも出かける。
2人が考えている事は、明白で、薪の節約だ!ホーリーのスト―プは大型ストーブで火力もあるし、地下に、薪もたっぷり用意されている。この2日、焚きっぱなしでも問題はない。
「大鍋で、沢山、作るんだろうな~~」
「あ!アデルにイチゴの苗を見せるのを忘れた。陽の当たる場所に置いて、久しぶりにフレンチトーストに挑戦するぞ~~」
遅い朝食を済ませると、恒例の小麦粉の出番だ。パンは、成型から発酵までできる様になって、クッキーも上達した。パウンドケーキは、型をベル商会から色々と買いそろえて来たので挑戦する。
「魔法って本当に便利、後は、窯で焼くだけだ」と言いながら窯まで運び火を点ける。
焼き上がるまで、時間があるので、麦畑に向かうと、農夫たちは、麦踏みをしている。畑に目を向けると、すでに芋は掘り起こされていて、今は、人参畑に人が移動しているようだ。
「わたしの土地は、いつの間にか立派な農村に変化している。あ~~、寒い、部屋に入ろう」
パンが焼き上がる前に、リリーさんと女の子の3人組がやって来て、大鍋にお肉や野菜を入れて行く、当然だが、ウサギも入っている。ホーリーが、王都から仕入れて来たスパイスで味をつけたいと主張する。
「ホーリー、それはどんな味なの?」
「少し、辛くて美味しいと思うけど、初めての挑戦だからわからない」
「‥‥‥、ねぇ、こんなにたくさん作って大丈夫?」
「大丈夫よ。余ったら母さんがどうにかするからね。心配ない、王都の食事は初めてだもの、楽しみだわ」
(いや、王都の料理ではない。スープカレーみたいに出来上がればいいと思って作っている)
「いい匂いだよね~~」女子3人の期待は大きくなるばかりだ。
「リリーさん達も、マコーミットさんに頼んで王都に行けばいいのに?」
「マコーミットは、子供たちが街に行く事にも強く反対していて、王都なんて連れて行ってくれないわ」
「理由を聞いてもいいですか?」
「‥‥‥、う~~ん、なんて言うか、その‥‥」
「私みたいになるから?」
「‥‥‥、マコーミットが魔力持ちだって知られたのは、祖父と街に出かけた時だったの、お貴族様にはわかるんでしょ?魔力持ちが‥‥、数回、街に出かけただけなのに、マコーミットは、10歳になったら王都に行かなくてはならなくて、その後は、人が変わった様になって、村の子供達を、絶対に街に出すなと言いだしたの、勉強は自分が見るし、教材も作ったりして、主人は、ここは王都ではないと、言って、怒り出したけど、自分が魔力持ちだから、遺伝するかもしれないんだぞ!と、言われてからは、マコーミットに従ったの、そして、数年が経った時に、魔力持ちの子供がさらわれてるらしいって、噂が流れた。それも幼い女の子‥‥」
「だから、女の子には年を誤魔化すように言っているのですか?」
「そうよ、カーズ村は、商人が多く集まる村でしょ?開放している間は、子供たちは屋敷内で勉強するか遊ぶかで、畑にもあまり出さないのよ」
「‥‥‥」




