貴族学校の2回生③
第33章
バーグ先生の許可を得られて、一安心のケルフとホーリーは喉が渇いたので、飲み物のブースに移動した。
「ケルフ、良かったね」
「ああ、助かったよ、アデルに、芽が出た植木鉢を見せられて泣かれたからね」
「もしかして、アデルも、桃の種を植えたの?」
「ああ、それは大切にしているよ。余程、美味しかったらしい、僕は、ホーリーが、昼食に持って来てくれたから何度か食べたけど、アデルはあの1回だけで、虜になったらしいぜ」
「確かに、桃はすごく美味しかったよね。夢は桃源郷か~~」
「何それ?」
「‥‥‥?」
「しかし、このお茶も美味いな」
「お菓子も美味しいし、綺麗だよね」
「このケーキ、ホーリーでも作れる?」
「う~~ん、イチゴがないでしょ?」
「イチゴか~~難しいな、枇杷では駄目なのか?」
「甘く煮れば大丈夫だけど、栗の方がいいかしら?でも、栗は全部、マロングラッセにしちゃったしね。リンゴの木は、この前、植えたけど、リンゴが成るには数年かかるよね」
「リンゴの木を植えたの?どこに?」
「アレクサンダーの馬小屋の近くと、後は適当に数本植えたわ」
「それって、ベル商会から購入したの?」
「そうよ。果物の木が欲しいって言って、後は、オレンジも数本、植えたわ、緑魔法を習ったら、生育の魔法をかけて見ましょうね」
「‥‥‥」
「ケルフ、知ってる?イチゴの種って、この黒い粒なのよ。このイチゴを持って帰る?」と、相談していると、上級生らしい学生が話しかけて来た。
「君たち、平民の2回生か?」
「はい、そうです」
「‥‥、あちらで、アガシー先生がお呼びだ」
◇◇◇◇◇◇
ケルフは、クリームの付いているイチゴを2個ポケットに突っ込んでから、先輩の指さす方向を見る。
「アガシー先生は、何を専攻なさっているのですか?」
「魔術だ」と、ホーリーのペンダントを見ながら話す。
『ヒッ!!』と、息を飲んで、アガシーの方を振り返る。(不味い、絶対にバレている)
「先生が、君たちの勇気を褒めていたよ」と先輩は、追い打ちをかける。
それから、アガシーのテーブルまで、どのようにたどり着い記憶が飛んでいて、気が付けば、微動だにしないで、立っていた。そして、ケルフは勇者で「僕たちは、平民でお話を伺ってもよろしいのでしょうか?」と許可を取っている。
「ああ、君たちではなく、そのブローチの向こうに居る人間に用事があるだけだ」
ケルフとホーリーは、心の中ではすでに泣いていた。リン会長め!!死刑になったら恨んでやる!
「君たちの事は、調べさせてもらったよ。平民の2回生で、二人とも名と土地を持っていて、第2皇子の派閥に属し、ベル商会とは協力関係にあり、従者が居ない君は、特別にベル商会からの買い付けも許されているらしいね」
「はい、そうです」
「君は、元魔力奴隷で、氷魔法の使い手、リンのあの部屋を使っている。当たりか?」
「はい、その通りです」
「それで、そのペンダントとブローチは、知っていてつけているのか?」
「‥‥‥、あのぅ‥‥、」
突然、ブローチから立体映像が現れる。
「ええええ!!」周りの生徒もケルフとホーリーも、そして、アガシー先生も、一瞬、ひるんだ。
「アガシー先生、こんな小さい子供が、知っている訳ないでしょ。僕の独断ですよ。先生に見破られるとは、思ってもいませんでしたが、あなたも、多少、解析が進んでいるのですね」と挑発している。
「リン、君が王都を追放されたのは、僕のせいではないぞ、君が結界の解析に没頭し過ぎ、盗まれた方が悪い」
「まぁ、そうですね。でも、こうして、王都と貴族学校の結界を破る事で証明されたのです。それだけで、僕は心底うれしいです。」
「しかし、国全体はまだなのだろう?国全体に結界が張られているのに、土地が抜け落ちるんだ。その原因が、わかったのか?」
「嫌ですよ。指導教諭の振りをして、また、僕の研究を盗むのですか?わかっていても教える訳がありません!」
「そんな事を言っていられる状況か?君が大切にしているプラザ町ごと消えるかも知れないぞ?」
「あり得ません。僕の町は、大丈夫だと思っていますからね。所で、先生が今も教師をしているのでしたら、この2人を受け入れてもらえませんか?彼女が通信魔術が使えなくて不便なんですよ。私は、今でも、貴族学校で、魔術に関しては、あなたが一番の教師だと思っていますから‥‥」
アガシー先生は、しばらく考える。
「そこの君、名前は何と言うんだ?」
「ホーリー・ペーターです」
「ああ、一応、元貴族の名持ちだっか‥‥」
「では、テストです。このスプリンドとホールの真ん中で踊ってくれる?僕は、ダンスで入室を許可するんだよ。リン君は、踊れなくても許可してやったのに、僕に対して無礼極まりなくてね。彼が去ってから、選考基準は、ダンスに戻したんだ。君が踊れれば、平民の彼は免除してあげよう。どうする?」
この雰囲気、踊る以外ないのでは?
「踊ります!」と、ホーリーは、意を決して返事をする。相手の先輩は高身長だが、どうにかするしかない。ケルフは、心配して、意見を発する事を我慢しているように見える。
ケフル、大丈夫だよ。転生を繰り返しているおかげで、ダンスは得意な方だ。どうにかなる!!
スプリンド先輩は、ダンスが得意なのか、動揺も見せずに、手を差し伸べてホーリーをエスコートし、フロアの中央に向かった。
音楽が始まるのを待っていると、視界からすべての生徒が消えている、『どうして?どうしたの?』
理由は簡単で、ゆっくりワルツから、早いワルツへと変化するからだ。このスプリンド先輩は、アガシー先生の選考の手助けをしている生徒で、周りはそのことを理解しているのだろう。
「えい、やけくそだ~~」と、ホーリーは、踊る。ステップを合わせ、回転する時は、身長差の為に、浮きながら耐える、地に足が着くと早いステップが繰り返され、それでも表情は崩さず踏ん張る。
最後の回転が終わり、挨拶が済むと、ケルフが駆け寄り、ホーリーを支えてくれた。
「目が回って、吐くかと思ったよ」
「でも、凄い上手だったよ。びっくりした。歩けそうか?」
「駄目、支えて、真っ直ぐ歩けない」
ケルフに支えられアガシー先生の元に戻ると、
「ホーリー、ダンスは退場するまで気を抜くな、みっともない、しかし、予想以上の出来だ。2人の入室を許可しよう。これでいいなリン?」
「ああ、よろしく頼む」と、言ってリンさんは消えた。
アガシー先生とリンさんの会話を聞いて、安心したのか、ホーリーは、その場でやはり吐いた。
「うっわ~~!」と、周りの生徒は、声をあげたがケルフが上手く皿に受け止めてくれたので、大事には至らず。係の人達も寄って来てホーリーは休憩室に運ばれた。
休憩室の外ではケルフが待機していて、休憩室専用のメイドさんにお世話になった。
「お嬢さん、大丈夫ですか?」と、親切に聞かれ、
「もう、帰りたいです」と、素直に答えたら、笑われたが、頭がまだクラクラしていた。
「第2皇子がお見舞いにいらっしゃいました」と告げられ、ケルフと側近たち、フェリクス先生もお見舞いにやって来た。
「ホーリー、みんな、君の踊りに感心していたんだよ。大丈夫か?」
「はい、目が回っただけです」
「しかし、ダンスの後に、吐く令嬢は初めてですよ」
「僕の所に1番に来ると思っていたが、芸術教室には来ないのか?」
「いいえ、今年も1番、お世話になります」
「そ、それは、それで、困るがな‥‥」
「それで、合格は、貰えたのか?」
「はい、安心したら、気が抜けてしまいすいませんでした」
第2皇子の側近のルーツィが、
「気を抜くのはまだ早いぞ、こちらからの事業聴取があるからな?わかるだろう?交流会での通信魔道具の使用は禁止されている。それに、映像魔術具まで持ち込んだんだ。大罪だ」
「え~~、そんな、私もケルフも交流会がある事も知らなかったのですよ。魔術具は魔石についていただけで、ドレスだって、昨日の夜に届いたんです‥‥大罪なんて‥‥、そんな‥‥」
ホーリーは、そのまま気を失った。




