貴族学校2回生②
第32章
交流会当日。
登校日、初日は、交流会から始まった。ホーリーのドレスは、前日の夜にジェシーさんが届けてくれて、当日の着替えや髪のセットも引き受けてくれた。
「ごめんなさいね。私の配慮が足らなかったわ‥‥」
「大丈夫です。ドレスを着せて頂ければ、後は、終わりを待つだけです。他の先生方に受け入れられなくても、フェリクス先生の教室は受け入れてくれると信じています」
「ホーリーさん、これは、オフレコですが、魔術教室は、人気があり多く開かれます。お年を召した先生方が、平民を受け入れる事は難しいと思われますので、狙いは、若い先生がおすすめですよ。わかりましたか?無理せず、帰って来てくださいね」
「大丈夫です。私達に声をかけるお貴族様はいませんよ。唯一の不安は、第2皇子だけですが、まぁ、第2皇子は、今回の主催者で、お忙しいでしょうから、大丈夫だと思いますよ」
「‥‥ダンスのステップは覚えましたか?」
「ええ、何とか、大丈夫です。踊る機会は無いでしょうけど、やれる事はやりました」
「では、ご健闘を祈ります」とジェシーさんは、見送ってくれた。
◇◇◇◇◇◇
寮の敷地の入り口には、ケルフとプレジーが緊張して待っていた。プレジーは従者として、控え室での待機が決まっているので、当然、正装だ。2人の髪型が可笑しくって、つい、笑ってしまう。
「笑うなよ、俺たちだって、全然わからないだからナ!」
「ふふふ、でも、2人共、正装が似合ってるよ。従者は、やはり黒なのね。素敵だよ、プレジー」
「ホーリー達も良く似合ってる。やはり、薄紫は2人に合うな」
「2人とも、この魔石のネックレスとケルフのブローチに、ベル商会の魔術が刻まれているからね。気をつけないとね」
「ああ、俺のカフスにまで細工してあるらしいぞ」
「今回、交流会での情報提供で、衣装代は大幅ダウンしたからね」
「ベル商会もホーリーもちゃっかりしてるよな~~」
お貴族様たちは、大きな道を通り、馬車で到着しているが、3人は寮からの近道を使い、ひっそりと会場入りした。
「今日の目的を復唱するね。魔術教室と緑魔法の教室の参加の許可を得る事で、駄目な場合は粘らないで、身を引く、第2皇子には近づかない、ダンスは踊らない。プレジーも私達も、息をひそめ終わるのを待つ、いい?目立つ事はしない様に気をつけましょう」
「じゃ、俺は、あっちだから、終了したら迎えに行くよ」プレジーは、1人で黒服の軍団の方へ歩いて行く。
「プレジー1人で大丈夫かしら?こういう時、私にも、従者が居れば良かったと思うわ」
「大丈夫だよ、プレジーは何でも上手くこなす男だ。それに、フェリクス先生の従者たちとは顔見知りだし、知り合いがいない訳ではない」
「そうね、そう考えると少し安心するわ」
「ホールにはいつ頃入る?」
「全員の入場が終わって、始まってからにしましょうか?」
「そうだな、そうするか」と、話していると、魔石のペンダントから声が聞こえる。
「それではダメだ!すぐに入場しろ!遅れての入場なんてもってのほかだ!」
「ホーリー、今、リンさんの声が聞こえたよ」
「これ、通信魔術具なんですか?」と、ホーリーは、ケルフのブローチに聞く、
「ああ、映像も見える」とさらりと言われた。
「ここは、貴族学校で、敷地内と会場どちらにもスゴイ結界が張ってあるのでは?」
「ばかまもん、そんなの解析済みだ。国の状況がつかめない今、仕方なく盗聴しているだけだ」
「イヤイヤイヤ、駄目でしょそれ!バレたら、私達は退学ですよ」
「どうせ、退学したかったのだろう?チャンスだと思え!」
「イヤイヤイヤ、退学はいいですが、投獄は嫌ですよ!」
「ホーリー、そうなの?」
「そうよ、スパイの片棒だと疑われる」
「大丈夫だ。それより、早く入場しろ、後で指示を出す」
「‥‥‥」
ホーリーとケルフは、右手右足が同時に出ているかのように、ぎこちなく歩いて入場していると、『はぁ~』と言うため息までも聞こえて来た。
(お願いだから、話さないで!)と2人は互いの魔石を見る。
入場して、安全地帯の壁際を探す、豪華な舞台を見ると、第2皇子が側近たちと共に立ち、交流会の主旨を語り、貴族学校の先生たちを讃え、これからも、勉学に励んで国を支えて欲しいと挨拶していた。
挨拶が終了しても、お貴族様は、急いで教師の元に駆け寄る事はない。すべての所作が優雅で落ち着いていたが、中央では、既に、踊り始めた生徒が見える。
ホールが球形の為、先生方のテーブルも、壁際に配置されていて、飲み物やお菓子も用意されている。
「交流会なのに、踊り始めるのが早くない?」
「最初に目を引く作戦だ」と、ペンダントのリンさんが教えてくれる。
「何の?」と思っていると、徐々に、生徒が動きはじめた。
「どうする?僕たちも話を聞きに少し動く?」
「そうだね、一カ所に留まっている方が、目に付きやすいよね」
2人で相談しながら緑魔法の先生を探す。ケルフは、アデル達に、何か大きな期待を持たれたらしく、珍しく真剣だ。
緑魔法の教室は、多いとは言えないが、令嬢の姿がチラホラ見える。その中では、イケメンの若い教師の所は人気があり、お年寄りの先生の方はそうでもない。
「話をしてみる?」
「うん、ケルフ、頑張って!!」
ケルフは、自分たちは平民の出身ですが、話しかけてもいいかをまず聞いた。その老人の先生は、バーグ先生と言って、優しそうな感じのお爺さん先生で、『君たちは、緑魔法を習得して、何がしたいのか?』と、真っ当な面接官らしい質問をしてくれた。
ケルフは、
「僕たちは、小さな村の村長をしています。僕の村は農業が盛んでしたが、この前、スタンピードが発生しまして、大きな打撃を受けました。ですから、作物の育成を助ける魔法を教えて欲しいと思います」
「うむ、それは、大変だったな?村の被害は大きかったのか?」
「いいえ、第2皇子が迅速に指揮して下さり、最小限の被害で済みました」
「君もそうか?」
「私も作物の育成に興味がありますが、自分自身に植物の色を覚えさせたいと思っています」
「例えば、どんな色だ?」
「はい、いつもイメージしているのは、大木の葉っぱの緑ですが、考えると、葉は、黄色にも、赤にもなりますし、茶色にも変化して、黒にもなります。その色を習得したいと考えています」
「では、花ならばどうだ?花であれば色は無限だぞ?」
「!!!、そうでした。花は、イメージできませんでした。今、自分の思考の狭さに驚きました!」
隣のケルフは、笑いを堪えるのが必至に見えるし、バーグ先生は、「はははっは!」と大声で笑う。
「君は、発育には何が必要だと考えている?」
「土の養分ですかねぇ?カーズ村でつくる土は、すごく栄養がいいので、作物が良く育ちます」
「そうか、ケルフと言ったね、君の村の土には何を混ぜているのか、少し教えてくれるか?」
「牛の糞です。僕の村には牛が数頭いますので、大量に糞が出ます」
「うっそー、牛の糞に人間のウ〇チも混ぜてるの?」
「ホーリー、シっ!ここは、お貴族様の交流会だぞ!」
「‥‥‥」
「ああ、人糞も使用しているのか?」
「はい、叔父さんが、緑魔法で処理してくれるので‥‥、これから使用する予定です」
「え!!」(ホーリータウン限定?)
「ホーリー!」
バーグ先生は、少し考える様子を見せて聞く、
「‥‥、君たちは、この国の状況は聞いてる?」
「はい、多少は、知っています」
「そうか、君たちに入室を許可しよう、僕の教室は温室だが、君たちなら大丈夫だろう」
「問題ありません。バーグ先生、ありがとうございます」と、思いっきり頭を下げた。
2人は、自分たちのプレゼンテーションに夢中で、リンさんの存在を忘れていた。




