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ホーリーの憂鬱①


 第27章


 1週間の寮での謹慎が解かれ、久しぶりにホーリータウンに戻った。


 箱馬車いっぱいの荷物を家に運び終えたら、街のアパートでミルサーチに会いたかったが、フェリクス先生から、帰り際に沢山の宿題を出され不可能になった。


 「僕が行くまでに、芸術性の高い置物を焼き上げて置く事!」

 と、約束させられて、ホーリータウンへの移動魔法陣の許可も渡さなくてはならなくなった。


 「僕は、君をずいぶん助けているが、許可くらいは当然だろう?」と言われれば、「はい」としか言えない。


 「フェリクス先生、キノコの置物を、まったく受け入れてくれなくて、割られそうになった‥‥」


 「自分の村なのに、置物にフェリクス先生の許可がいるなんて‥‥、トホホホ‥‥」


◇◇◇◇◇◇


 王都からミルサーチに、手紙を何回か出したが、返事が来たのは最初の1回だけ、しばらく不在になるが心配は要らないとの事だ。


 彼女には、彼女の仕事があるのだろうと、理解はしたが、少し寂しかった。しかし、ホーリーは感傷に浸る暇はなく、早速、購入品を家に移動させ、計画を練る。


 1、レンガ(壁用と外の小道用、粘土研究でもある)

 2、王都購入の花を植え替える(バラやユリ、見たことない花など多数)

 3、妖精の像の完成(唯一、フェリクス先生が興味を示した置物が、妖精だった!これで行こう!)

 4、パンの作り置きをする。(在庫がなくなった為)


 森の近くの丘陵地の粘土で作ったレンガは、薄い肌色だった、木の下の粘土のレンガは赤レンガだったので、違いが出た、その後は、ウサギの岩場の粘土で作ったレンガは黒色になった。


 シママは町に戻り、1人の作業になるかと思っていたが、毎日、カーズ村から手伝いが来る。理由は簡単だ、珍しい花を見に来ては、ああだ、こうだと話しながら家の周りのレンガの道を手伝って行く。


 植木鉢にも沢山の花を植えて、色々な場所に配置して、家の周りはキレイになった。


 アデルたちは、キノコの置物を見て、柿やブドウの方がいいと言うが、自分ではキノコを気に入っている。


 妖精の置物は、女の子たちにも好評で、カーズ村にも欲しいと言われた。(キノコは要らないらしい)


 スローライフを楽しんでいると、久しぶりにケルフとプレジーがやって来た。


 「久しぶり」

 「久しぶり、お元気でしたか?村長?」

 「ホーリー、やめてくれ、ノイローゼになりそうなんだ」

  

 「そんなに、忙しそうなのに、何か用?」

 「ああ、王都の第2皇子から書簡が来た。カーズ村長宛だ」

 「何?」

 「食糧の依頼だ」

 「?」

 「作物の生産量が一番多い領土が、消滅してらしい?ホーリー、消滅ってどういう事だと思う?」

 「その土地が無くなったって事じゃない?」


 ホーリーの説明に2人は真っ青になる。

 「それは、このカーズ村にも起こるのか?」

 「わからないわ、ここの領主様も、随分、弱っているからスタンピードが起きたのでしょ?」


 「2人は、この国が魔力で浮かんでいる事は習ったよね?そして、今、貴族学校には平民の魔力持ちまでも集められている。その意味を考えた事はある?」


 「貴族が、王都の学校に子供を入れたくないのか?でも、貴族学校を卒業しないと貴族にはなれないのでは?」


 「魔力の多い子供を王都に送り出すと、領土が消滅する可能性がでたら?どっちを選ぶ?」


 「私とお母さんはね、ペーター家で、下働きをして暮していたの。ただ、私達が暮らしていた屋敷には、魔力を吸い取る魔法陣がかけられていて、ある日、一緒にいた子供や女性たちが次々と倒れたの」


 「魔力が枯渇してね‥‥、そして、私達は街に移され、治療している間に、ペーター家は消滅しなくなったのよ。あの後、魔力奴隷だった人達は保護されて大丈夫だと聞いたけど、あれから、彼らに会った事はないわ‥‥‥」


 「だから、今回、村に魔力持ちの私達に結界を張らせたのも、消滅を防ぐ為ではないかと思ってる。カーズ村は、収穫高が優秀だし、作物の貯蔵も多い、第2皇子達は、そこまで考えて、カーズ村を助けたのよ。今後、国は、貴族の領土と言う単位ではなく、魔力持ちの村や町に変更するのではないかしら?」


 「ホーリーは、すべて、わかっていてたの?」


 「う~~、リリーさんが来るたびに、私に何かを伝えたい顔をしていたから、スタンピードの時、既に、第2皇子側から何か打診があったのかとは思った」


 「でも、ケルフも、今までここを訪ねなかったのは、私に言いたくなかったのでしょ?」


 ケルフとプレジーは、ポタポタと涙を流しながら、正直に話す。

 「そうだよ、ホーリーやミルサーチさんの事情を知っていて、ホーリータウンを貸してくれとは言えないよ。親子でここで静かに暮らしたいんだろ?」


 「そうよ、だから、その件は、私が第2皇子に、キッパリ、お断りするから大丈夫よ。だって、ここはホーリータウンで、この国の土地ではないのよ。私は、ペーター家消滅の事実を知っていたから、この土地を購入する時に、他国の貴族名義で魔術契約をしたの、だから、大丈夫、彼らも、深く調べればわかる事だから‥‥、心配ないわ、カーズ村長、改めて、ここは、ホーリーの土地です。よろしくね」


 ケルフとプレジーは、パッと明るくなって「そうか‥‥」と呟いた。


 「バカね。これからは、なんでも相談してね。今までだって3人で考えて来たでしょ?それに、今は、王都やホーリータウンの事より、カーズ村の復興が最優先でしょ?違う?それとも、もう復興したの?」


 「まだ、全然だよ。3年はかかるって父さん達は言ってる」


 気まずい雰囲気が残り、いつものように愚痴で誤魔化す。


 「ねぇ、聞いてよ、フェリクス先生たらひどいの、たくさんの宿題を出したのよ、お母さんに会いたいのに!」とフェリクス先生の悪口を話題にして3人で美味しくご飯を頂いた数日後、ホーリータウンの移動魔法陣が光った。


 現れたのは、第2皇子一行とフェリクス先生、ジモール、ユルとメイドのマリアさんまでもやって来た。


 「皆さん、どうやっていらしたのですか?」と小声でフェリクス先生に聞く。


 「ホーリー、第2皇子にご挨拶だ!」と、側近に睨まれる。

 「第2皇子、フェリクス先生、皆様、ごきげんよう」と、カーテシーで挨拶する。


 「まあまあだな」と、側近の一人が聞こえる様に呟く。


 「それで‥‥ご用は?」


 「先ずは、家に、お招きしろ」と、また、側近に注意を受ける。結界が張ってあるから招待しないと入れないのだ。(招待したくないけど‥‥)と思い、チラッと、マリアさんを見ると頷いてくれたので、


 「皆さん、小さな家ですが、どうぞ、お入り下さい」とご案内した。


 第2皇子の側近は、いち早くクリーンをかけ、ジモールは、テーブルの上の物を作業部屋に移し、ユルは、テーブルの移動を始め、マリアさんは、キッチンに駆け出し、お茶の用意を始める。


 (なんて、連携がとれているのでしょう。まるで、シュミレーションして来たようだ)


 茶器は、この前、先生が作って下さった貴族仕様の物があって良かったと、心から思った。マリアさんにこのクッキーを出すように言うと、優しく、持参してきましたと、断られた。


 どうにか、体裁が整って第2皇子からのお言葉を待って立っていると、


 「ホーリー、床のレンガは何だ?」と、第2皇子の側近に聞かれた。(邪魔なの?距離があるけど?)


 「この壁に貼る為に、デザインしている所です。図案が決まったら人足に貼ってもらいます」


 フェリクス先生の顔を横目で見ると、苦虫を嚙み潰したような顔をしている。(アウトなの?)


 「ホーリー、この家の内装はまだ終わっていないのだろう?」とフェリクス先生が、念を押して聞く。


 「はい、まだ、途中で、2階は、部屋にもなっていません」


 (何度も、何度も、内装にケチをつける芸術教室の教師って、何なの!)


 

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