第2皇子の依頼第③
第22章
フェリクス先生に慣れている従者の2人は、アレクサンダーを連れて、すぐに土集めの調査を開始した。フェリクス先生は、昨日より人口が増えた我が家にも驚かずに、優雅に作戦を練っている。
「先生、火力が一番弱い、3号機は、竹や木を入れて炭を作っていいですか?今回の事で何があるかわからないので、炭を作りたいです」
「ああ、農村は、そうか暖房が必要か」
「はい、王都は、冬もあまり寒くありませんよね?」
「色々な国の人が、訪れるのは王都だけだから。気温の変化がない方が良いと考えられているからね。だから、寒さはあまり感じない。でも夏は暑かっただろう?」
「暑いと言っても、この領土の暑さと少し違います。王都の夏は、爽やかな暑さでした」
「そうか、しかし、この時期は、ここも過ごしやすいけどな‥‥」と感想を漏らす。
3号機は炭づくりと決まったので、ホーリーは大人数の為のパン作りを始める。粉を捏ねるのも、土魔法で応用が利く為に、苦労はない。嬉しいかぎりだ。小麦粉を魔法でパン生地にすると、炭を焼く窯で、パンも焼けないかと思いつく。
「先生!!この大量のパンも焼きたいのですが、3号機に入れてはどうでしょう?」
フェリクス先生は、イヤそうな顔をしたが、今は、非常時だと説得して、窯の改造もしてもらった。
もちろん、魔法で、ついでに水瓶の自作魔法陣の確認もしてもらい、大気から水が集められるようにもなった。なんて、役立つフェリクス先生!!
◇◇◇◇◇◇
優秀な2人の従者は、お昼前には、ホーリーが指定した場所から土を持ち帰り、お年寄りが作ってくれた昼食を一緒に食べた。年寄りと小さい子供たちは、テラスに作ったブランコがお気に入りで、家には昼寝の時しか入って来ない。昼食もみんなで外で食べている。
(お貴族様に遠慮しているんだと思う)
「ホーリーさん、このスープとサラダ、美味しいですね。パンも柔らかいですし」と、ユルさんは言う。
「そう、パンは私が作って、氷室に保存していた物です。サラダは、この辺の野菜で、採れたて新鮮ですし、スープは、子供も食べる為によく煮込んだのでしょう」
「カーズ村の食事は、いつも、すごく美味しいですよ」
「君は、パン以外、作らないのか?」
「はい、パンとクッキー等、焼き菓子専門です。芸術教室のおかげで練りが楽になりました」
その後、レンガの製作を従者2人とホーリーが担当して、どんどん作っていく。その様子を見ていた子供達とお年寄り2人は、畑仕事を止めて見入っている。
レンガが出来上がると、お皿やコップ等を板に乗せて2号機に運ぶ、今回は、アデルたちのリクエストも聞き、ホーリーの家にない食器を揃える。
食器がない為に、食事を順番で取っているので、色々、頼まれる。形はシンプルな物を今回は採用した。
従者2人は薪を入れ込み、ホーリーが初めて窯に火を放つ、登り龍のごとく火魔法は3号機まで登り、最後の煙突からは、ボッという音が聞こえ、その後、煙がたち始め完了だ。
「ホーリーさんの魔力の多さに驚きます」とユルさんが言うが、
「でも、立っているのも辛いくらい疲れました」とホーリーは、座り込みながら話す。
「火力が落ち着いたら、パンを入れるんだろう?」
「はい、夕食はピザにしたいので、少し休んだら取り掛かります」
「ホーリー、凄いね、もうお皿が出来上がるの?」
「‥‥失敗していなければ、きっと出来上がるよ。3人はピザを作るの手伝ってくれる」
「わかった。材料を洗って切っておくよ。美味しいキノコが採れたから、キノコも入れよう」
しかし、結局、ホーリーは揺れる椅子で寝てしまい、窯の点検はフェリクス先生とジモールさんとユルさんが行い、ピザは3人が作り、ジモールさんに焼いてもらった。
ピザの臭いで目が覚めたホーリーは、アデルに「今、パンを焼き始めたと言われた」
「ピザは?」
「ちゃんと出来上がってるよ。食べましょう!」
フェリクス先生たちは食べ終わっていて、「美味しかった」と言われた。年寄りチームも完食していて、みんなでレンガと食器を待っている状態だ。
「先生、冷めるのは明日の朝でしょうか?」とホーリーが言うと、
「君は、基礎の風魔法と氷魔法が使えると聞いたか、出来ないのか?」とフェリクス先生先生は言う。
「もう、魔力がありません。それに、急激に冷やすのは得策ではないと思います」
結果が早く知りたいフェリクス先生は、渋い顔で窯を見ている。
そんな時、神官と騎士たちがホーリータウンに、けが人を運んでくる。最後には第2皇子もけが人と一緒にやって来て、
「溢れ始めた。何とか村に被害が及ばないようにはしているが、一時的に、ここを避難場所にしてくれないか?神官達に治療してもらい、彼らには復帰して欲しい」
「勿論、いいですよ。魔物は強いのですか?」
「嫌、今のところ、数で負けている。1か所に集めてそこで退治する計画だ、では、彼らを頼む」
第2皇子は、簡単に現状を説明して、走って戻って行った。それからは、続々とケガ人が運び込まれ、回復すると、また、戻って行く剣士もいた。初手は剣士が立ち向かい、騎士が、一か所に追い込みをかけ、魔術師が、一気に燃やす作戦で、剣士のけが人が多いく、しばらく経過観察が必要な剣士も少なくない。
「カーズ村は、大事な食糧庫だから、何とか村への進入を食い止めたい」と剣士は言い、女の子3人は、パンを配ったり、ホーリーが作り出した冷たいお茶を渡したりして、応援している。
「お兄ちゃん、大丈夫だよね?」
「大丈夫よ。11歳の子供が前線に出る事はないでしょ。多分、魔力が必要な仕事をしていると思うよ」
そう言いながら、ホーリーは、村の唯一の入り口をチラチラ見る事をやめられなかった。
救護所として機能し始めてからは、昼夜関係なくけが人が運び込まれて、ここでパンを食べる人数も増えて来た。フェリクス先生も、今晩は、王都には戻らず、3号機の窯を魔法で維持しながら、ホーリーのパン作りを援護してくれた。
夜中になると、村の女性たちも避難して来て、顔や手を洗ってから倒れる様に眠り、夜が明ける前には、畑から野菜を取り、食事の用意を始めた。ショックだったのは、ホーリーが作ったティーポットが、スープ入れにされていたのを見た時だ。
いいよ、スープが入るくらいデカいからね。気にしないよ。それを見たアデルの視線は気になったけどね。
早朝、フェリクス先生は、冷めた窯を開け、食器を取り出し、おばさん達に渡し、剣士や騎士に差し入れを頼む。ジモールとユルは、ウサギを10匹も捕まえて来て、おばさん達に喜ばれていた。
3日目、領土からの応援も入り、収束に向かう。魔物を集めていた結界が強化され、一気に魔物が燃やされたからだ。
被害状況の確認や諸々は、領土の文官が担当するらしく、移動魔法陣から王都へ向かう軍部の人たちが、さっさと帰って行く。残ったのは、第2皇子といつもの側近たちとフェリクス先生一行だ。
「ホーリー、色々、助かった。後は、領土の仕事になる。君はしばらくこちらにいるのだろう?」
「はい、このままでは学校にいけません」
「ああ、君とケルフの休学を申請して置く、そして、この移動魔法陣は、ホーリータウンで使うがいい、受け取ってくれ、尽力の報酬だ。これで移動が楽になるだろう?卒業も急ぐ必要なくなるな‥‥、では、また、貴族学校で!」
「はい、あ、ありがとうございます‥‥」
(いいえ、戻ったら退学する予定ですけど???どうしよう、お母さんに病気の悪化を頼む?)
◇◇◇◇◇◇
残った女性たちは、なぜか、ワインセラーからワインを取り出し、残っているピザや野菜を肴に飲みだした。村に戻ったら忙しすぎるので、今晩はここに泊まると言う。
「いいですよ。カーズ村でも祝杯をあげているのでしょう。こっちはこっちで盛り上がりましょう!」
後で知ったのだが、体を休める事は口実で、1人になるホーリーを心配して残ってくれたらしい。カーズ村の皆さんは、本当に優しいと心から思った。




