15. 一先ず
こんにちは!
宜しくお願いします(o_ _)o))
リィナの放った魔法は二種類。
一つは【マーキング・オン】という中級スキルに位置する中級魔法である。
効果は詠唱者の任意でマーキング、所謂ロックオンするモノである。
この魔法でマーキングされると、解除しない限りは『魔法が追尾』する。
この魔法を複数に放つ場合は、更に上の上級魔法に区分けされる。
もう一つの魔法【アイス・ニードル】は逆に初級魔法である。
標的単体に対して、10センチ程の長さ・2センチ程の直径の氷柱を三本撃ち出す魔法である。
此方は複数に放つ場合は、都度魔法の発動が必要である。
リィナは『取り敢えず両腕に腕章が無いと確認出来た者』のみをマーキングした。
片腕でも視認出来なかった相手は、何方かの判別がつかない為、誤射を恐れて『マーキングをしない』方針を取った。
その後【マーキング・オン】の魔法効果でマーキングされた人数を把握すると、その人数分の【アイス・ニードル】を発動した。
一瞬のうちに『終わりの始まり』パーティは瓦解し、辛うじて難を逃れていた者も手負いの『疾風』メンバーに袋叩きに遭う。
リィナは成功した満足感と安心感に、一息ふぅと息を吐くと、迅へと向き直る。
「どうですか、ジン? 中々の腕前でしょ?」
「あぁ…。 ホント、大したモンだ。 おまけに無駄な殺生もしてねぇっつーのがまたイイ。 お前(の魔法)は最高だ!」
「え、あ、ありがとう…御座います。」
迅の言葉足らずが発動し、リィナは額面通りに受け止めて思わず赤面する。
だがその直後、背中に悪寒が走る。
慌ててその場を跳び退き、自身が居た場所の背面に対し思わず預かったままの神槍を向ける。
そこには壁しか無かったが、壁の向こうーー外から殺気の様なモノが感じられた。
「あ? どしたんだよリィナ。」
迅は何事かとリィナに近寄り、向いている壁を見遣る。
首を傾げリィナからブリューナクを取り上げると、そのまま表に出てみる。
其処には西街でのミッションを終えた『楽団』メンバー三名が居た。
「何してんだよ。 もう終わっちまったぞ? 取り敢えず今から尋問だ。 入れ入れ。」
何も気付かない唐変木は手招きして三人を呼ぶと、ヴェルティがダッシュで近付き、迅の手を取って繋いだ。
所謂、恋人繋ぎ的な繋ぎ方で。
「あん? 何だよ、ヴェルティ。 少し離れてたからって寂しがってんのか? らしくねぇ。 俺と手をつないでたら歩き難いだろがよ?」
「これが…至福、でしょうか…。」
ヴェルティは聞く耳を持たず自分の世界に入り込んでしまっている。
迅は振り解くのも失礼かと思い、取り敢えずそのままで建屋内に戻る。
迅の見ていないヴェルティの背後では、バレットとジャンヌがヴェルティの下半身に蹴りを何度も入れており、それをヴェルティが尻尾でいなす、という攻防が行われていた。
ーーーーー
「さて、と。 自分の状況で判ると思うが、何するかは判ってらぁな、ギルマスよぅ?」
後ろ手に括られ、うつ伏せで転がされた状態のギルマスは大きな目でギロリと迅を睨む。
椅子に座った状態で話し掛けた迅は、睨み付けてくるギルマスの顔面に容赦無く蹴りを叩き込んだ。
そして何事も無かったかの様に質問を始める。
「一つ目の質問だ。 何が目的で俺達を嵌めるような真似をしやがった?」
「…素直に言うと思うか?」
「ま、気長に待つとすらぁ。 …ジャンヌ!」
迅の言葉にジャンヌはギルマスの右足首を踏み抜く。
龍人族の力で踏まれた足首は、幾らドワーフの屈強な骨と言えども軽々と踏み砕かれた。
大きな叫び声が上がるが、迅は目の前の椅子に座ったまま眉一つ動かさない。
「何が目的だ?」
「グッ…く、クソッ…野郎がっ!」
「やれ。」
迅の冷たい一言に、ジャンヌは右の脹脛を踏み抜く。
更に大きな叫び声を上げるも、事態は変動しなかった。
「何が目的だ?」
「クソ…ッタレが…!」
「中々強情だな。 ヴェルティ。」
呼ばれたヴェルティは恭しく一礼すると、ギルマスの左足首に尻尾の毒針を一刺しする。
直後、ギルマスに異変が起きる。
「な、何…しや、がった!?」
「即効性の神経毒と血管隔絶の毒を少々。 早めに解毒しませんと左足首から先が落ちますが、如何なさいますか?」
「だとさ。 如何なさいますか、ギルマスよぅ。」
ギルマスは無言を貫く。
これ以上悪態を吐いて事態を悪化させたくは無いが、情報を漏らす訳にもいかない。
悲壮な決意を持って沈黙を徹するが、
「ヴェルティ、膝下までいけ。」
と、迅の非情な言葉は止まる事を知らない。
ヴェルティが再度一礼をしようとした時、
「待って! 待ってヴェルティちゃん!!」
「こらリィナ! 入ってはいかんと言ったであろう!!」
そう言ってギルマスを庇う様に背にし、ヴェルティを止めようとリィナが部屋に入ってきた。
凄惨な現場を見せたくなかった迅の配慮でバレットが付き添い兼引き止め役に指名されていたが、ギルマスの声があまりにも大きく、漏音防止処理を施していたギルドの会議室から漏れ出ていた。
『世話になった』ギルマスが酷い目に遭っている事に耐えられなくなったリィナが、遂に突入する事態となってしまった。
「リィナちゃん。 御主人様の命令ですので。 其処を退いて頂けませんか?」
「お願い…少しだけ話をさせて! ジン、お願い!!」
迅は腕を組み、
「3分だけだ。 それ以上は諦めろ。 …ヴェルティ、一旦解毒薬を打て。」
と言って席を立ち、ジャンヌに数言告げて部屋を出た。
ーーーーー
「何故、許可を出されたのでしょう?」
廊下に出た迅を追ってヴェルティも部屋を出、窓から外を見る迅にそう問い掛けた。
「埒があかねぇのと、リィナのお人好しに賭けたってトコかねぇ?」
他人事の様に言う迅の言葉であったが、それ以上聞くのは越権と取ったのか、ヴェルティは黙って一礼すると、迅に寄り添う。
女性特有の甘い匂いがふわりと香り、迅は柄にも無く緊張してしまう。
(何つーか、初心になったモンだねぇ…)
などと客観的に自身を分析するも、ヴェルティの体温や匂いが原因でそれ以上思考が深める事が出来ず、頭をガシガシと掻いた。
窓の外から暖かな日光を浴び、先程までの殺伐さが嘘の様に二人は窓際にて佇む。
学徒動員前の少年時代をふと思い出しフッと笑うと、ヴェルティが不思議そうに迅の顔を覗き込む。
いつも通り「近い」と苦情を訴えた所で部屋のドアが開いた。
「御主人、折れたよ。 リィナ様々だね。」
「おぉ、マジか。 賭けて正解だったな。」
「賞品は、今晩私を好き放題出来る権利で御座います。」
「誰かと博打したワケじゃ無ぇ! 賞品も無けりゃ、首突っ込んでくんなバカ!」
そんな不毛なやり取りをし、迅達は部屋へと戻った。
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部屋に戻り椅子に座ると、ギルマスは右足を治してもらっていた様子である。
「リィナの泣きっ面は効果抜群だったか?」
「フン、どうだかな。」
迅の軽口にギルマスは不機嫌そうに答えた。
「ま、早速話してもらおうじゃねえか。 何だってこんな騒ぎを起こした?」
「騒ぎを起こすつもりは無かったんだがな。 騒ぎになったのは間違い無くお前が原因だよ、ジン。」
呆れた様に言ったギルマスの言葉に、迅は訝しげな顔をする。
「その辺踏まえて、一体全体どういう絵を描いてたかっつートコまでキッチリ話してくれや。」
そう言うと、背もたれにグッと思い切りもたれるのであった。
御覧頂き、ありがとうございました!
暑い日が続きますが、お身体にはお気を付け下さいね。
今後とも、宜しくお願いします(o_ _)o))




