9. 別部隊
こんにちは!
宜しくお願いします(o_ _)o))
「じ、ジャンヌの姐さん待ってくだせぇ…!」
「姐御だっつったろ! ってーか、なっさけないねぇ、オークのクセに!」
息も絶え絶えにジャンヌに泣き言を告げたオークのお供は、泣き面に蜂と言わんばかりに罵声を浴びる。
足を止めて文句を垂れるジャンヌであったが、苛立ちが募っているからこその罵声でもあった。
と言うのもジャンヌ達の班が回っている周辺もオークやコボルトの死体やらが目立ち、救助どころでは無かった為である。
「一体どれだけの奴等がこの村襲ったのサ?」
「へぇ、規模は正直判りやせん。 ですが…、四方八方から一気に攻め込まれ、何処からカバーして良いか判らんまま制圧されちまいまして…。」
「柵の円周見る限りじゃ結構広そうな村だけど、思った以上に人数居るのかねぇ? まぁイイさ。 向こう行くぞ。 もう大丈夫だろ?」
「へ、へぇ! 頑張りやす!」
暫しの小休止でオークのお供も回復したのか、腿をバシバシ叩くと背伸びをする。
だが、背伸びし切ったかどうかという所でいきなりジャンヌに押し倒され、口を手で塞がれる。
「シッ! 向こうの茂みに何か居やがる。 …平人と妖人…エルフの二人組か。 何か狙ってやがるね…。」
押し倒したオークが身動きを止めたのを合図かの様に、ジャンヌはオークの口から手を離しながらそう言った。
オークは物音を極力立てぬ様努めながら、ゆっくりと仰向けの体勢からうつ伏せになる。
「オレが行きやしょうか?」
「やめときな。 スキル使ってるっぽい。 あと1メートル程近付いた瞬間、気付かれて射たれるよ。」
「そ、それじゃあお手上げじゃないっすか!」
「黙れバカオーク。 射たれた所で当たらなきゃ問題無い。」
そう言うとジャンヌは立ち上がり、背中の大剣を抜剣する。
「アンタは片付いたの見計らって追っ掛けてきなよ。」
「あ、姐御、まさか…!?」
「何回も言わせんじゃないよ! 当たらなきゃどうって事ぁ無いのサ!!」
「あ、ちょっ! 待っ!?!?」
ーーーーー
「中々、生存者が居られませんわね。」
「へ、へぇ…、ヴェルティの姐さん。」
「ハァ…、『姐さん』はやめてと申した筈ですが? 一度爪先から脳天へと串刺しにされないと、判って頂けませんか?」
そう物騒な事を言ったヴェルティは、背中に背負っている新規購入したばかりのランスを一本右手に取る。
「ひ、ひぇぇぇ、すいやせんヴェルティ様! 以後気を付けますんで、どうかお慈悲を!!」
「『様』を頂く程の者でもありません。 せめて、『さん』付けくらいでお願い致しますわ。 さて、一旦足を止めて下さい。 射手が居ますわ。」
戯れ半分に装備したランスを再び背負うと、ヴェルティはお供のオークに歩みを止める指示を出す。
お供オークはその言葉にすぐさま反応し、近くの木陰に隠れた。
「あね、いや、ヴェルティさんも気配やら何やらに気付くスキルか何かを持ってらっしゃるんで?」
「ええ、まぁ…、そんな感じでしょうか? 厳密にはスキルやアビリティとは違うのでしょうが、認識としましてはそういう物でしょう。 さて、猪龍も準備万端な様子ですし、私が気を引くとしましょうか。」
お供オークに返答した上で独り言を呟くや否や、ヴェルティは背中の盾剣を装備し、射線上に当たる道の上に戻った。
「ヴェルティさん!? な、何で!?」
「何でって、パーティのタンクは私ですから。 前衛の猪ジャンヌや、ヒヨコソルジャーのリィナちゃんの壁になるのが仕事ですわ?」
そう言った直後には敵であろう射手の射程内兼スキルを展開しているテリトリーにズカズカと踏み込む。
相手もスキルに反応したのか、一気に数本の矢が飛んでくるも、ヴェルティはその剛健な盾にて軽く弾く。
「下の下といった所でしょうか? まぁ、少なくとも射程だけはそれなり程度、ですか。 さぁ行きますよ? 私の後ろに隠れながら、縮こまってついてきて下さいませ。」
そう呟くと一気に歩を進める。
距離が詰まるにつれて飛んでくる矢の本数と勢いが増すが、ヴェルティは一向に解さない。
「あら? 全くジャンヌったら、本当に猪なのかしら? 少しはバレットを見習って欲しいものね。」
ヴェルティの呟きに、お供オークは頭上に『?』を沢山浮かべるしかなかったが、緊迫した状況だっただけに聞くに聞けないままにヴェルティの影に隠れて後を追いかけた。
ーーーーー
リィナとバレットのコンビは建屋の陰に隠れていたが、定期的に飛んできていた矢が止まり不思議に思った。
が、その直後にリィナが気付く。
「バレットちゃん! 多分ヴェルティちゃんとジャンヌちゃんが!」
「ふむ、リィナの探知魔法にも引っ掛かったか。 我も今気付いた所だ。 恐らくこの大通り辺りに居るのがヴェルティだな。」
「だねっ! で、この動き始めたのがジャンヌちゃんね! って、茂みとか木とかあるのに速すぎるよこの速度!」
「流石は龍人族の膂力だな。 そしてこの感じだと、ヴェルティが[挑発]を使って射手の気を引いておるといった所か。 …腹立たしい事に乗り遅れたな。」
「うーん、でも、ブウさん達がまだ帰ってこないし、動くと向こうと連携が…。」
リィナの言葉に、バレットは大きな溜息を吐く。
ひと暴れするつもり満々だっただけに、落胆が大きいのであろう。
その姿を見てリィナはオロオロしながらも慰める様に頭を撫でてみたりする。
そうこうしていると、道の対面にブウ達が現れた。
「姐さん方、すみません! 遅くなりやした!!」
「全くだ、ブウめ! 取り敢えずそれを盾に射手の方へ向かうのだ! 我は先に行くぞ、リィナ!」
「あっ、ちょっと待ってよ!!」
リィナの言葉も聞かず、音もなくバレットは跳び去る。
息も絶え絶えのオーク隊は急いで盾を作ると、道に出た。
「リィナの姐さん、行きましょう! バレットの姐さんにまずは追い付かねぇと!」
「は、はい! 宜しくお願いしますね、ブウさん!」
「合点承知です! お前ら、リィナの姐さんにカスリ傷一つでも負わせたら俺達命が無ぇからな! そのつもりで死ぬ気で守れよ!!」
「「「おうよ!」」」
ブウ達オーク隊の気合にリィナは頭を抱えるも、実際問題としてバレットがやりかねないと小さく溜息を吐いた。
ーーーーー
「何だ、全然飛んで来ないじゃないか。 …ああ、ヴェルティが援護してくれてんのかよ! ありがたい事だねぇ。」
龍人族の感覚でヴェルティのスキルを感じ取ったジャンヌは、軽口を叩きながら射手の下へとひた走る。
獣道の様に荒れた道だが、枝葉やら棘やらでジャンヌの肌は傷一つ付く事無くガンガンと踏破していく。
鬱蒼と茂る木々の向こうに射手達が居る事を感じ取り、その木々を大剣一閃で薙ぎ払い、返す刃で一人を刈り取るつもりで先ずは木々を斬り払った。
斬られた木々が倒れると流石に近過ぎたのか、射手の内一人がジャンヌに照準を合わせている。
チッと舌打ちをしたジャンヌは矢の向いている方向や射手の指、視線に注意を向ける。
だがその直後、ヴェルティに対して射かけている射手から血が噴き出た。
「ハッハッハ、森での機動力で我に勝とうなど100年くらい早かったの、ジャンヌ!」
相方の異常に、ジャンヌへと向けていた射手の視線や注意が一瞬逸れる。
その機を見逃す程愚鈍な戦士はこの場に居らず、ジャンヌが大剣を振り抜いて二人を一気に斬り落とすと同時に、ジャンヌへ向いていた射手の後頭部へも鏢が突き刺さった。
「ったく、余計な真似って言いたいトコだけどサ、それより何よりどんな脚してんだいアンタは。」
「ずっと森で暮らしていた我だからな。 木々の上から何から全て足場よ。 流石に此処では譲れぬよ。」
「あれだけリード貰って負けちゃ、本当に100年掛かりそうだわ。 ったく無茶苦茶だな、ナイトパンサーってのは。」
「フハハハハ、そう褒めてくれるな。 さて、そろそろか?」
バレットはそう言って眼下の大通りを見ると、ヴェルティの班とリィナ達が合流した様子であった。
「うっしゃ! それじゃ御主人のトコに戻るとしようじゃないか。 残念ながら収穫ゼロだったけどな。」
「ジャンヌ、この射手が一つの収穫ではないか? 何故こんな所に射手を残すと考える? 既に村は殲滅された後だぞ?」
射手の死体を残し、ジャンヌとバレット、そしてジャンヌ班のオークは下へと降りながら問答をする。
「まだ何かあるって読んでんのか?」
「少なくとも我はな。 リィナの探知魔法とヴェルティの索敵で周囲を調べながら戻ろう。」
バレットは訝しげな表情を浮かべたまま、プリプリと文句を言うリィナ達と合流した。
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