6. なまえ
こんにちは!
宜しくお願いします(o_ _)o))
迅の目の前では、二足歩行の犬と二足歩行の豚が土下座の姿勢で頭を下げていた。
片方は『コボルト』といい、首から下の造りだけは人間と大差無い。
もう片方は『オーク』。
此方も首から下の造りはほぼ人間であり、二体ーーーいや、二人とも犬や豚をベースにした人体といった感じである。
平人族の世界では見た目で『人>動物』の割合の者は『獣人』、『人<動物』の割合の者は『魔物』と区別しているらしいが、根本的には全て獣人であるとの事である。
で、そんな二人が迅に対して『兄貴』と呼び、まさかの対応に迅は柄にも無く驚いた。
「いや…、お前達…大丈夫なのか、俺に対してそんな呼び方してよぉ?」
「…ウチの村には『ハイオーク』である俺以上の戦士は居やしません。 文句言う奴は腕っ節で黙らせやす。 俺を弟分か、子分にしちゃあくれやせんか?」
その言葉に迅は少し俯き、逡巡した様子を見せる。
そんな迅の側に、足元が若干覚束ないリィナが近付き、言葉を掛ける。
「あの…ジン? もしかして…。」
「あぁ、戸惑いはあるがな。 俺を慕っての申し出だ。 ありがたく受けて…」
そう言いかけた迅の言葉を遮るかの様にリィナが大声で驚きながら捲し立てる。
「またそうやって何も考えずに! どうして判らないんですか!? 相手は魔物ですよ!? どうしてそんな簡単に信用しちゃうんですか!!」
リィナのその言葉に、迅は肩を竦めると、返答を口にする。
「リィナ、よく聞け。 魔物魔物っつってるが、コイツらはしっかりとした人族だ。 見た目だけでお前は全てを決め付けるのか? 俺とて経験が無ぇから断言は出来無ぇけど、それでもコイツらの眼を信用する事にした。 『もし万が一』が起きても、ちゃんと守ってやる。 取り敢えず、一度は信用してやれ。」
迅が諭す様に言うと、続けてヴェルティも口を開く。
「リィナ様、お気持ちはお察し致しますが、こうなった御主人様は恐らくテコでも動かないのでは? 御主人様も貴方様をお守りするのと同様、我々もサポート致します。 一度私達も自らの五感で彼等を見てみては如何でしょう?」
「さ、様はやめてってば! …でも、そうね。 バレットちゃんだって区分としては魔物だし、彼等の事を斜めからじゃなく真っ直ぐに検分するのが…話は早そうね。」
ヴェルティの言葉でリィナの感情は一旦整理される。
目の前のハイオークとコボルトの二人組は、リィナとヴェルティの方に向き直って頭を下げた。
よし、と迅は頷くと荷物を纏めながら口を動かす。
「んじゃ、先ずはオークの集落に行きてぇんだがよ。 っつーかよ、其処はオークの連中やらコボルトの連中ばっかなんだよな?」
漸く迅は聞きたい事をオークに投げ掛ける。
「へい、兄貴。 オークの集落に逃げ込んできたコボルトを雇用契約でウチの集落に住まわせてますので、その二族しか居ません。」
「んじゃお前らの識別が難しくなるな。 よし、オークのお前は今から『ブウ』、チビ助は『ポチ』だ。 いいな?」
何の気無しに迅は二人に名前を付ける。
バレットに名付けた事もある為、特段何も考えずに名付ける。
だが、目の前の二人から急激に閃光が放たれ始める。
「ちょ、ジン! 貴方また何やらかしたんですか!?」
慌てた様子のリィナが迅に詰め寄る。
本当にお嬢様なのか疑わしいかの様に、迅の襟首を掴んでガクガクと揺さぶる。
「待て待て待て、リィナ! 名前を付けただけだ!」
「『だけ』じゃないんですよ、その行動が!! あぁー、バレットちゃんの時にしっかりと説明しておけば…。」
「…何だよ? 名付ける事って、何かあんのか?」
「…ご自身の目でお二人を確かめてみれば良いんじゃないですか?」
迅は冷たいねぇなどと愚痴ると、二人に視線を移す。
眩しい閃光は治っており、見るからに屈強な大男と、頭から犬耳を垂らした少年が其処に佇んでいた。
「…お前ら、もしかして、ブウとポチか?」
「へい、兄貴! この度は名前を頂きまして、ありがとうございます! このポチの野郎と共に誠心誠意・粉骨砕身兄貴に尽くして参ります! 今後共よろしくお願い致しやす!」
「アニキ! ボクも頑張ります!」
「…リィナ、説明。」
「名前は一つのチカラになります。 バレットちゃんは元々が強い個体でありましたので目立った変化は見えなかったのですが、彼等は個体としても全体で数えても下からの方が早い立ち位置だったのかな? 進化スピードが段違いなんです。」
呆れた様な態度のリィナだが、一つ大きな溜息を吐き、
「ジンですもんね。 仕方ないですよね。」
と、諦めた感じの言葉を迅に浴びせた。
ブウとポチに体調の異変が無い事等を聞くと、迅は気になっていた二人の種族を【神眼】スキルで鑑定する。
『ブウ : オークリーダー、猪人族』
『ポチ : コボルトメイジ、犬人族』
恐らく結構な昇進をしているのだろうと迅は頷き、一人で理解をする。
目の前に居る舎弟分か子分である二人は、元々の上下関係のまま『チビ』と『旦那』と呼び合って色々と話し合いをしていた。
「アニキ、そろそらウチの集落へと向かいませんかぃ? 集落の連中にも紹介させて頂きてぇんで。」
「おぉ、そうか。 んじゃ、案内は任せたぞブウ?」
「へい、承りやした!」
ブウが巨体を縮こまらせて笑顔で快諾する。
その瞬間、向かおうとした先の茂み奥より、複数の足音が聞こえてくる。
迅はすかさず次元鞄より飛び出してきたミストルテインを掴み出すと、掴んだ右手の小指に引っ掛けて出してきた矢筒を腰に下げ、即座に鉄矢をつがえ構える。
その迅の前に滑り込む様にヴェルティとリィナが縦列に、リィナの両脇をバレットとジャンヌが固める。
1-3-1の陣形は、迅の好きだったゲームの代表的な陣形である。
最近のゲームはイマイチ記憶が薄いものの、昔のゲームの記憶はしっかりと残っている様である。
「あ、アニキ待って下せぇ! この足音は、俺の同志でさぁ!!」
「あぁ? っつー事は、オークの集団か!?」
そう言うも束の間、茂みより五人のオークが飛び出して来る。
ヴェルティは盾剣を前に構え、防御形態にて受け止める格好を見せる。
だが、ヴェルティに当たる前にブウが先頭のオーク目掛けてラリアットを見舞い、先頭のオークは宙を舞った。
「何してやがんだ、テメェら! 俺様に喧嘩売るっつーのか! あぁん!?」
「このバカ、やっと見つけたぞ! …え、誰!?」
「俺だバカ! また半殺しにされてぇのか、テメェら!!」
「いや、見た目…! あぁー、もうどうでもいい! 早く帰ってきてくれ! 平人族の冒険者が襲撃に来やがった!!」
その言葉に迅の目の色が変わる。
「…ブウ、案内してくれ。 リィナ、構わねぇな?」
「あ、はい! でも、どちらの方に着くんですか?」
「決まってんだろ。 子分の身内が襲われてんだ。 取り敢えずは、オーク達の方に着いてから考える。」
御覧頂き、ありがとう御座いました!
令和初の投稿となります。
昨晩も書きましたが、今後共宜しくお願いします(o_ _)o))




