4. 邂逅
こんにちは!
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コボルトが木の裏に隠れている事を知り、迅は即座に動ける体制を取る。
リィナは食事の真っ最中であった為、肉類を喉に詰めて苦しそうにしている。
慌てて姉役のバレットが背中を叩き、事無きを得たようである。
「っつか、出て来ねぇなぁ。 仲間でも呼んだのか?」
「犬笛が鳴ってません故、それは無いかと思われます。 で、如何致しましょうか? 私に命じて頂けましたら、即座に刈り取りますが。」
ヴェルティがコボルトの習性を知っている様で、仲間が呼ばれた形跡は無いと言われた。
迅はふむ、と一言言って顎に手を遣り考えを巡らせる。
その直ぐ側に侍るかの様に恭しくヴェルティは立ち、主人の返答を待っている。
「まぁどういうつもりで隠れてんのか判らねぇしな。 ちょっと話でも聞いてみようじゃねぇか。」
その返答にリィナは驚き、迅に詰め寄る。
「ジンは本当に何にも判ってないんですね!? コボルトと言えども魔物なんですよ!? 幾らジンが強いとは言え、油断すると殺されちゃいますよ!」
コイツはコボルトに何かされたのか、と迅は訝しむも、まぁまぁそう言うなと言って立ち上がる。
「ヴェルティ、取り敢えずコボルトの隠れてる木だけを退けてくれや。」
「畏まりました。 少々お待ちを。」
そう言ってヴェルティは深々と迅に一礼すると、その体制のまま尻尾で木の根元に一撃見舞う。
ヴェルティの尻尾には昨日購入したのか、両手剣並みに幅広で大きい刃が付いており、木は根元で一刀の下に切られる。
更に返す一撃を刃の腹で木を叩き打ち、コボルト側や迅達の側に倒れない様吹き飛ばした。
「お待たせ致しました。 オーダー通りに出来たかと思いますが、如何でしょうか、御主人様?」
「あぁ…、バッチリだ。 流石俺の自慢の(仲間、)ヴェルティだな。」
その言葉に頬を染め照れるヴェルティ。
迅の言葉足らずが発動すると、大体変な勘違いを産むが、リィナはそれどころでは無かった。
昨日までは所謂脱初心者したばかりの冒険者だったのだ。
コボルトと言えど、脅威として捉えている。
だがパーティのエースアタッカーこと迅は、考えがあるのか無いのか、無防備でコボルトに歩み寄って行く。
「ちょ、ちょっと、ジン! 何してるんですか!?」
リィナの言葉も虚しく、迅は足早にコボルトの近くまで歩み寄る。
「おい、チビ助。 言葉は判るか? お前、こんなトコで何してたんだ?」
何事も無い様に、迅の臍の辺りまでしかない背丈の二足歩行犬ことコボルトに声を掛ける。
その光景にリィナは卒倒しそうになるも、バレットが背中側から支えてくれる。
「お…」
コボルトが声を出す。
「オイラ、何もしてないッスよ! こここ、殺さないで欲しいッス!!」
迅は言葉が通じた事に、改めて【女神の加護】アビリティの反則性のお陰であろう事を理解する。
魔物の言葉まで通じるとは、アビリティの名に恥じぬ性能だと迅は感心した。
「おぉ、通じるじゃねぇか。 よし、取り敢えずアレだ。 お前、名前は?」
「ジン! 貴方はどうして普通に話し掛けて会話してるんですか!? ま、魔物ですよ!?」
驚嘆と少しの恐怖を帯びた大きな声で、リィナは迅に対して声を掛けるが、
「まぁまぁ。 大丈夫だ。」
と言い、取り付く島も無い。
リィナは大きな溜息を吐くと、諦めた様子で迅とコボルトから離れる。
「で、だ。 チビ助、名前はって聞いてんだが?」
迅が詰め寄るが、コボルトは小刻みに震えながら目をギュッと固く閉じて怯えている。
余程ヴェルティの一撃が恐ろしかったのだろう。
その様子を見遣り話が聞けそうに無いかと肩を竦めると、バレットが背中から抱き着いてくる。
「主。 我が代わりに答えるとするが、コボルト達の様な『魔物』という枠に入る獣人族達には、一般的な名前は存在せぬのだ。 我々の種族もそうであったろう?」
「あぁ、確かにバレットのトコもそうだったな。 魔物は基本名無しなのか。 っつか抱き着く必要があんのか、オイ?」
「うむ。 さて、小僧。 獲って喰ったり、無用な殺生等せぬ故、多少警戒を緩めて答えるが良い。 我等が主は、基本寛大であるぞ。」
迅の問い掛けを無視しつつも抱擁を解いたバレットは、コボルトに対して言葉を掛けた。
同じ魔物だと判ったかは定かで無いが、バレットの言葉に目の前の小さなコボルトは少しづつ目を開け、続けて口を開いた。
「わ、判ったッス…。 其方の姐さんが言った通り、オイラには名前は無いッス。 だから、コボルトって種族名で呼んでもらって大丈夫ッス。 魔物魔物って言われて平人族には追い回されるから、その、平人族は怖いンスよ…。」
「成る程な。 確かに今日も『コボルトの集落・活動範囲調査』っつー依頼があったワケだしな。 お前らはお前らで苦労してんだな。」
「オイラ達コボルトは臆病なんで、平人族とかの他種族にちょっかい掛けたりしてないッス! なのに、見つかったらいっつも誰かは殺されちゃうし…。 オイラ達は定住出来る所を探してるだけッス。」
何か思っていた事情と違うな、と迅は考えた。
魔物は悪であり、彼等の言う平人族やリィナ達エルフを含む妖人族といった種族からは敵視されている。
だが実情としては、目の前の無害なコボルトが怯える様な目に遭い、他種族はそれを仕事として行っている。
「なぁ、リィナ。 お前さんさっき『コボルト舐めんな』みたいな事言ってたが、実際に襲われた事あんのか?」
突如話を振られ驚くリィナだが、少し考えると迅に向き直った。
「…いえ、コボルトの方から積極的に襲ってきた事案は…私は遭ってません。」
ふむ、と迅は言うと、コボルトの方を向いて口を開く。
「チビ助、次の質問だ。 お前は何で俺達を監視するかの様に木の裏で隠れてたんだ? 怖いだけ、じゃねぇだろ?」
「そ、それは…」
コボルトは歯切れ悪く言葉を吐く。
が、次の言葉が聞こえる前に、コボルトより10数メートル後方より草木が折れる音と共に、二足歩行の大きな豚が現れる。
「コォラ、テメェ犬っころ! 何サボってやがる! …テメェ、平人族と何してやがるんだ、あぁ!?」
「お、オークの旦那…。」
オークがあらわれた!
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