4. 二人組(仮)
こんにちは。
日頃の御愛顧、感謝感謝です。
よろしくお願いしまーす!
小さな親切大きなお世話、という言葉がある。
目の前の美人エルフの口から出てきた提案は、大き過ぎるお世話であった。
家という規模では無い。
屋敷などに招かれでもしたら、それこそ世界がどうだの魔法が何だのと言ってる暇は無いのが明白である。
迅は折角の魔力増大法を知る機会であったが、諦める事にした。
「そうか。 面倒ごとは大嫌いなんで気持ちだけ受け取っとくわ。 んじゃ、達者でな。 帰りは襲われねぇとイイな。」
あまりにアッサリと言って背中を向け右手を振る迅の左手首を思わず掴む。
「ちょちょ、ちょっと待って下さい! 私の話聞いてくれてました!?」
逃げる迅の手首が何故かスルリと手の内から抜けそうになり、慌てたエルフは迅の左腕を両腕で捕まえ逃げられなくする。
上腕に柔らかいモノが当たるが、迅は必死に心頭滅却して考えない様に努める。
女性の方を横目でチラリと見遣ると、本当に焦った感じが表情にも脂汗が滲み出ており、駆け引きは優勢の様である。
そうなればお手の物。 一気に駆け引きを押し込む。
「お家の恥とかは黙っておいてやるから、取り敢えず腕を離せ。 俺は今からついさっき仕留めた獲物から槍を引き抜きに行かにゃならねぇんだよ。」
すると女性はそうでは無いとばかりに必死に頭を振り、焦りも隠さず言葉を繋げる。
「そうではなくって! お願いですから、一緒に街まで着いて来て下さいませんか!? 魔力のお話もしますし、屋敷への招待がご迷惑でしたら致しませんので…。」
先の出来事が余程応えたのだろう。
腕に抱き着く身体が小刻みに震えており、目の端からは涙が溢れ落ちそうである。
落とし所は見えた為、迅もそれ以上には追い込まない事とした。
「取り敢えず、だ。 先ずは俺の槍を取りに行き、獲物を確認する。 その後の事はそれから考えよう。 街までは責任持って着いて行ってやる。 それでいいな?」
自身の行程を説明すると、女性は勢いよく何度も頷く。
と言うか、今仕方酷い目に遭ったにも関わらず、会ったばかりの男をよく信用する気になるなと感心以上に呆れてもしまう。
だが現状で彼女的に頼りに出来るのは迅しか居らず、事情がどうあれ信用『せざるを得ない』のだ。
少し同情する気にもなるが、先程の様な目に遭ったのも彼女の考え無しな所にもあるのか、などと考えながら女性エルフのお供が増え、二人して森の中に踏み込んで行く事になった。
とはいえ、森というのは進む事が難しい場所である。
単純に歩き難いという事もだが、何より方向感覚が無くなってくる。
こうなってくると遭難の二文字が常に付き纏い、不安感から次第に気が滅入ってしまい、本当に遭難してしまう。
迅とエルフ女性の二人パーティは、正にその危機にあった。
女性の悲鳴が聞こえ、急いで獲物を仕留める為に自慢の大弓で自慢の槍を射出し、仕留めた確認を怠った。
助けに行く為猛ダッシュで現場に到着したが、目印を付ける事をせず走り抜けた。
猟師としては最低点である。
ただし、『ヒト』としては間違ってはいない。
それだけが唯一の救いであった。
「…参ったな。」
冷静にそう言い、頭をガシガシ掻く。
後ろに付き従った女性は不安そうに迅を見遣り、言葉を掛ける。
「場所を見失いましたか?」
迅は後ろをチラリと見遣ると、溜息を吐いて頷く。
「すまないな、迷子まで付き合わせちまって。」
珍しく申し訳無さそうにする迅だが、女性は笑顔で答える。
「大丈夫ですよ。 森は大好きですしね。 ただ、この辺りは大型の肉食獣が出ると聞いていたのですが…。」
ありがたい返答を貰ったが、その後に続いた言葉に少し引っ掛かる。
迅は質問を返した。
「姉ちゃんは、その、何だ。 そういうモンを探知出来たりしねぇのか? そんな魔法は流石にねぇのか?」
その質問にムッとした顔で、拗ねた様に言葉が返ってきた。
「先程から『姉ちゃん』と私を呼びますが、私にもちゃんと名前はあります! 早く聞いて下さいよ、お兄さん!」
迅は呆然とする。
自分は森で迷い悪いなと思っていた後方で、まさかの自己紹介が無い事や呼称への不満が爆発していたとは思いもよらない。
だが女性の方はそこに引っ掛かりを覚えている様で、そこをスッ飛ばしては迅の質問には答えてくれそうにない剣幕である。
頭をガシガシ掻き歩みを止めると、彼女の方へと向き直った。
「あー、悪かったな。 こっちも迷ってる上に業物の槍を置いてきちまって焦ってた。 まぁ何だ、ねぇ…お前さんの言う通りだわ。」
自身の不行き届きを素直に認め謝罪すると、今度は女性が焦り始める。
「いや、あの、そこまで畏まられると…、何て言いますか…、取り敢えず自己紹介しましょうよ!」
見事な慌てっぷりである。
こりゃ一人旅は難しそうだと考えていると、表情に出ていたのか、女性が再度ムッとする。
「何か失礼な事考えてましたね! いいです! 私から先ずは自己紹介しますね! 私は『リィナ・バラッド』と申します! 気軽に『リィナ』とお呼び下さいませ!」
ご立腹の様子なので、あまり刺激せずに迅も続く事にした。
苗字と名前の順番も聞かずに済ませる事が出来て幸いと言わんばかりであるが、努めて表に出さない様に心掛ける。
「俺は『ジン・サナダ』と言う。 俺の方も気楽に『ジン』と呼んでくれ。 まぁ街までの短い間だが、宜しく頼む。 訳あってこの辺の事は全く知らねぇんだ。 街までの間に色々教えてくれ。」
互いに自己紹介を無難に終えると、少し笑い、そしてまた歩を進める。
しかし、手掛かりも無いまま歩き続けても意味はあるのか。
そう考えている内に、先程の質問を流していた事に気付いた。
「なぁ、リィナ。 さっきもした質問なんだが、探知魔法ってぇのは無いのか?」
敬称を略し、歩きながら背後の足音に対して声を掛ける。
「ありますよー。 ただ少し難しいので教えるのは厳しいですし、ジンの残した槍は私では追跡出来ないかと。 と言うか、魔法全般について知らないんですね?」
成る程、と納得し再度途方に暮れる。
ただ闇雲に歩くのもアレだと思い、少し休憩を取る事にした。
迅は此方の世界に来てまだ何も口にしておらず、少々疲れが出て来始める。
「んじゃ、水場とかは判らんか?」
ゲームでは森の賢者と揶揄されていたエルフであるリィナに頼ってみると、直ぐに返答が来る。
「すぐ近くですよ? 何で此処で休憩したんだろうって思ってましたが…、平人族は判らないんですね。」
クスリと厭味なく笑うと、水場まで案内を買ってくれて前後入れ替わって水場まで行軍する事にした。
御覧頂き、ありがとう御座いました!
それから、ブックマーク七件目ありがとうございます!!
非常に嬉しいです((* ´艸`))
今回かなりボリューム少なかったので、慌てて二話分を繋ぎました( ;´Д`)
途中何か繋がり変と感じましたら、教えて頂けますと幸いです(o_ _)o))




