その2「指輪編」 プロローグ:25年前の永訣
25年前。
心電図が止まり、波形は一本の直線になった。それまで規則正しいリズムを刻んでいた「ピッ、ピッ、ピッ」という音は、耳をつんざくような長い警告音に変わった。
望月誓は救急車の中で、交通事故で重傷を負い意識不明となった恋人に付き添い、救急隊員が必死に止血を試みる姿を見つめていた。12軒もの病院に受け入れを拒否された後、必死に頼み込み、クレジットカードで100万円の医療費を前払いすることで、ようやく13軒目の病院の救命救急室に入ることができたのだ。
しかし、カードで支払いを済ませてからわずか30分後、何の手術も、実質的な治療も受けられないまま、恋人は帰らぬ人となった。
「先生、お願いです、もう一度だけ助けてみてください」
「傷が重すぎたんです。頭部に大きな損傷を受け、大量に出血していました。我々は最善を尽くしました。どうか、お気を落とされませんように」
望月誓は足から力が抜け、その場に崩れ落ちるように膝をつき、泣き崩れた。
医師はそれ以上何も言わず、ただ病室を去った後、今夜はどの店で食事をし、カラオケに行こうかと、他の医療スタッフと話し合っているのがかすかに聞こえた。
望月誓はポケットから、銀製の指輪と、一枚の紙を取り出した。
指輪は彼が自らデザインし、友人に頼んで作ってもらった、世界にたった一つだけのものだった。プロポーズのために用意したもので、ずっと肌身離さず持ち歩いていたのだ。そしてその紙は、まだ書きかけのラブレターだった。面と向かっては気恥ずかしくて言えない言葉を、文字に変えて綴ったものだ。いつか、ふさわしい時に彼女に渡そうと、そう思っていた。
しかし今、すべては遅すぎた。指輪とラブレターを彼女に渡せる「ふさわしい時」は、もう永遠に訪れない。もしも、「特別な手段」がない限りは──。





