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いっかげつご

 ダンジョンの一般解放からはや一か月。

 私のダンジョンの最高到達深度も、暇な自衛官の方々が四十層まで更新し。探索者の方々も負けじと二十八層まで到達している。

 そんな私のダンジョン『豊穣の森』では。今、意外なものが高額で買い取られている。


「うわー。今日も凄いなあ」

 集落の一角に並ぶトラックに、探索者の方々が丸太を虚空から取り出して乗せていく。一人の探索者でトラック二台は満載になり、丸太を積んだトラックは集落を出ていく。

「いやー、儲かるなあ」

「木を一本伐るだけで四万円とか。チョロいぜ!」

「全くだな」

 探索者達は上機嫌に話しながら、空き家が流用された食堂『森食堂』に向かっていった。

(『アカマツの丸太』をドロップする『アカマツ・オールドトレント』は十五層にいたよね?)

 しかも、丸太は一本で【ストレージ】を一枠埋めるから、往復時間も考えるとスリープシープの毛を刈る方が時給は高くなるはずだけれど。

「これは、話を聞いてみないとね」

 森食堂に行くと、ほとんどの席が埋まっていた。好都合なことに、『だんそん』を借りている探索者の石田さん、田中さん、中島さんの三人の座るテーブル席のひとつが空いているので、相席してもらうことにする。

「相席いいですか?」

「大家さんか。いいよな?」

「おう」

「うむ」

「どうぞ」

「ありがとうございます」

 『ボアの生姜焼き定食』をつつきながら、尋ねる。

「最近、探索者の皆さんすっごい数の丸太持ち帰って来てますよね? 大変じゃないですか?」

「俺達には【ストレージ】があるからな。そうでもない」

 田中さんが答える。

「それに、木を伐る時も、三分の一も伐ればドロップアイテムに変わるからな。楽な仕事だ」

 中島さんはそう説明して味噌汁を飲む。

「木を伐る、って、ダンジョンの中って機械動かないから斧で伐るらしいじゃないですか? あれ、すんごいしんどかった覚えがあるんですが」

「大家さんは斧で木を伐ったことがあるのか。まあ、俺達探索者は『ジョブ』持ってるからな。力も一般人より強いんだ」

「なるほど。凄いですね」

「まあな」

 田中さんはかなり機嫌が良さそうだ。

「『鳥取砂丘ダンジョン』で砂鉄が安定的に採取出来るようになったお陰で、ダンジョン産のアカマツの炭はしばらく値下がりしそうにないしな。しばらくはぼろ儲けだぜ!」

「それは良かったです。……石田さん、どうしましたか?」

「あ、いやあ。アカマツもいいんですが、私はもっぱらスリープシープの毛刈りをしていまして。慣れるまでは大変だったんですが、慣れてしまうと楽過ぎて。前まで勤めていたのがブラック企業だったんで、時間もお金も余って困っているんですよ」

「毛刈りを楽って言えるのは石田だけだ」

「全くだ」

「そうですかねえ……」

 三人はわいのわいのと楽しそうだ。

「うーん。娯楽がないのは、集落のみんなも困ってますからねえ。なんかすみません」

「あ、いやいや。そんなことは初めから分かって来てるんで」

「ならいいんですが……」

 まあ、暇をもて余した探索者が悪さをしない限り、『娯楽なさすぎ問題』は集落のみんなの頭に浮かばないだろう。けれど知ってしまった以上、どうにかしたいところではある。

「畑の手伝いくらいなら、頼めばすぐ出来るんですけどねえ……」

「畑の手伝いかあ。そういや石田、何度か森さんの畑手伝ってなかったか?」

「どうして知っているんですか中島さん? ……まあ、滅多に攻撃されないとは分かっていても、モンスターの毛刈りするのは精神的に疲れるので。ご縁があって森さんの畑の草引きなんかを何度かやらせてもらったんですが。絶対反撃してこない雑草相手にすると、良い感じに気が抜けるんですよ」

「「あー」」

 中島さんも田中さんも納得したのか、何度も頷いている。

「俺達が相手にしている『オールドトレント』も、一発で仕留められなかったら戦闘になるから、気が抜けないのは抜けないよなあ」

 田中さんはそう言って麦茶を飲む。

「最近、ゲームしてもそんなに気が抜けなかったしなあ。……草抜き、やるか?」

「中島さんゲームやるんですね?」

「こう見えて、な」

 ここから話は脱線していき、最近のソシャゲはどうのとか、そんな話になっていた。

(草抜きかあ……)

 畑仕事が息抜きになるなんて、考えたこともなかった。雑草なんて、沢山生えてくるものだから無心になって抜くか農薬撒くかしないといけないし。

 でも、そういう無心になる時間が、探索者の方々には必要なのかもしれない。平和だった日本で、いきなり戦う仕事に就いた方々だ。ストレスはものすごいだろう。それに、戦闘モードのオンオフも上手く行っていないのかもしれない。

 そんな時、草抜きみたいなひたすら無心になって出来る仕事をやれば、戦闘モードもオフになるだろうし。

(意外といいかも?)

 畑仕事の手伝いのチラシを、探索者協会に短期バイトの求人的に貼ってもらうのも、結構いいのかもしれないね。

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