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しょせんかわざんよう

「うあー……」

 森食堂で玄米ご飯に味噌汁に鯵の煮付けという今では贅沢な朝食を食べながら頭を抱える。一食三〇〇〇円は探索者の稼ぎがないと無理だよなー、と現実逃避も交えながら。

 油カス欲しさに、連日頑張って引っこ抜いていた大豆。持ち帰って探索者協会の買い取りカウンターに出した途端歓声が上げられたそれが、私の目的と別のことに使われてしまったのだ。

「そりゃあそっちに使うよねー……」

 物流が生きていて、食料輸入がなされていた頃。大豆消費量の九割以上は輸入品だった。そして大豆消費量の七分の二程度が食用で残りは油用だったからこそ、私は大豆を集めていたのだ。せめて半分は油カスになると皮算用して。

 でも待って欲しい。自給出来ていた大豆はたったの五パーセントと少しだけで、今は物流が止まった上で全国的な肥料不足であり、大豆を多く得るには肥料が必須だ。

 そして、国内で大規模に大豆を得られているダンジョンは、北海道の『長沼大豆畑ダンジョン』だけで、そこで採取された大豆はほとんど東日本で消費されている。

 ここまでグダグダ言っていたけれど、現実を見る覚悟が出来たので結果を言う。

「そりゃあ、大豆集めても味噌になるよねー……」

 そう、私の集めた大豆二〇〇キログラム少々は、季節違いにも関わらず全て味噌の原料になったのだ。しかも『もっと大豆を!』という集落と探索者、探索者協会の声を受けて、三層の探索が強化されて私もそこに組み込まれることに。

「味噌の需要、増えてるもんなあ……」

 都会では、計画停電でも誤魔化せなくなり、病院と公的機関、指定の研究機関以外の電気を止めた場所すらあるという。工場が原料不足から止まっているからそれで済んでいるという笑えない事情がありつつも、日本はかなり追い詰められている。

 ダンジョン産の石炭があるじゃないか、って? 人力でチマチマ集めた程度では微妙に足りないし、それを燃やす火力発電所が限界なんだ。修理しようにも炉に使うレアメタルがダンジョン探索に優先されているせいで全く足りていないらしいし。

 原子力発電所は大地震から止まっていた期間が長過ぎて稼働出来たのは少しだけ。その稼働させられたモノも、老朽化のためにあと数年しか動かせない。放射性廃棄物をダンジョン内に入れれば安定化するのが分かっていたから動かせたけれど、新しく建設するには資材が足りない。

 自然エネルギー? あいつら発電量少ない上で安定しないし、太陽光パネルにいたってはレアメタルの塊だよ? レアメタルはダンジョンからもそんなに産出しないし、輸入も出来ないのにどうして自然エネルギーの発電機なんて作るの? その予算と資源で火力発電所の修理する方が遥かに良いよ。

 ……ということで、電気が止まり始めている訳で。電気が止まると冷蔵庫が止まるため、長期保存出来る塩漬けや味噌漬けが大人気になっている。


 そう、『大』人気に。


 ただでさえ足りていなかった味噌の需要が急騰しているのだ。

 最近都会からやって来た『トリトリー』専属の探索者さん情報によると、味噌一キロ二万円して、地域によってはお金を出してもモノがなくて買えないらしい。嘘みたいだけど、真顔だったのでたぶん事実だ。

 ちなみに、この集落での味噌の値段は一万円。物流がほぼ止まっているせいでこうなっているのだ。探索者の【ストレージ】アリでもこれって、本当に恐ろしい。

 味噌造りに必須の麹は、幸いなことに米の生産が順調なこともあって止まっていない。けれど来年は分からない。

「あれこれ絶望的では?」

 鯵の煮付けを食べつつ気付いてしまった。

「……ま、頑張るしかない、か」

 頑張れば頑張るだけ状況はマシになるのだ。なら頑張るしかない。


 『豊穣の森()』の三層に潜り、大豆を探して徘徊する。

「茎とか鞘は堆肥になるからまだマシ、と考えよう」

 元々肥料集めのためだったのだ。その肥料の原料が集まるだけマシだと自分に言い聞かせる。

「一層が泥炭地じゃなかったら、軽トラくらいなら入るんだけどなあ」

 戦車とか重機を警戒して一層を泥炭の湿地にしたのだけれど、そこは失敗だったかもしれない。集落に『豊穣の森』産泥炭を使った発電機を設置する計画も上がっているから、むしろ重機を入れられるようにして、泥炭辺りをごっそり持って行って貰う方が良かったかも?

「小さいショベルカーぐらいなら、ギリギリ入るからなあ」

 電気代高いし、ちょっと探索者協会に提案してみようか?

 と歩いていると美味しいモノが目に入った。

「お? 蛇苺発見。これも採取しとくかあ」

 こっちは葉が緑色なので、実だけ取っていく。こうすると、実がリポップするまでの時間が、木ごと抜くよりも短くなるのだ。

「これで良し、と」

 大きめのジャムの瓶ひとつ分と、量があまりないのですぐに採取も終わり、大豆探索に戻る。

「ジャムにするには少ないけど、保存考えるとジャム一択だよなあ……」

 長期保存出来るようなジャムにするには、貴重な砂糖をたんまりと使わないといけない。

「……ま、果物食べられるだけマシ、かあ」

 イチゴハウスとか、かなり閉鎖されて今やイチゴは貴重な品だ。また、原油不足により、農薬も不足気味なせいで、他の果物も不足気味。例外は渋柿と政府が力を入れているミカンぐらい。

 甘味の足りない蛇苺とはいえ、果物が食べられるだけ恵まれているのだろう。

「本当、色々足りないなあ」

 苦笑しつつ、私は私の出来ることをやろうと、ダンジョンを進んだ。

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― 新着の感想 ―
[一言] 味噌が1キロ2万って大雑把に40倍に値上がりか高いな。他の調味料、香辛料は確保すらできて無さそう。 停電とかが日常になるなら会社も維持できないし、都会の空白化、ダンジョン中心の社会になってい…
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