日本政府のとある会議
「……という訳で、朝鮮半島との連絡が途絶えました」
「ううむ……。となると、『白頭山ドラゴンダンジョン』の制圧は失敗したと見た方が良いな」
「ですが、『オハ油田ダンジョン』の『氾濫』に自衛隊と探索者を送ってしまっている現状では、対馬で守りを固めるしかありません」
「今はフェリーサイズの船しか海を渡れんから、下手に民間人を助けに行くことも出来んしな」
「それに、白頭山のダンジョンはドラゴン系統で、空を飛べますからね。今ある『特殊船』では、下手をすれば的になってしまいます」
「特殊船は数が足りていませんからね。朝鮮半島に救援に行こうにも、通常船では確実に沈みますし、打つ手無しですよ」
「ううむ……。こうなると、ロシアからの申し出を受けるしかない、か」
「『北方領土の返還及び樺太・千島列島の割譲』ですね。『オハ油田ダンジョン』は原油の採取ポイントが豊富なので、防衛及び維持にかかるコストを考えても、黒字になります」
「『占守島古戦場ダンジョン』からは鉄も得られますからね。探索者を確保出来るのならば、今後の防衛構想も変わってきます」
「探索者もそうだが、特殊船はどうする!?」
「特殊船製造のボトルネックになっている竜骨の材料となる『ダンジョンカシ』『ダンジョンケヤキ』の増産の目処が立ちません。そこで、『ダンジョンココヤシ』を使ったダウ船を建造してみるのはどうかという意見が出ており、……」
……………………
「……続いて、『87番ダンジョン』通称『智頭豊穣の森ダンジョン』から、特筆すべき報告が上がっております」
「『豊穣の森ダンジョン』だけは、良い報告だけが上がってくるから良いよな。今回もそうなんだろう?」
「はい。昨日、現地でダンジョンアタックに当たっていた『ダンジョン救助隊探索班B班』が帰還しました」
「ほう! 確か出発したのは四十日ほど前だったよな?」
「正確には、四十三日前ですね。そして、予定していた六十一層まで到達した、とのことです」
「ここは相変わらず攻略速度が速いな」
「ですが一層当たりの広さは世界最大級ですし、深度も恐らく世界最深です。油断は出来ません」
「……そうだったな、済まない」
「いえ。……各階層の詳細は別途記載の通りですが。六十層にて回収された『オールドチャコールトレント』のドロップアイテムの『樹脂』から、コールタールに類似した物質が得られました」
「ほう? それの何が重要なのかね?」
「はい。このコールタールに類似した物質、仮称『トレントタール』ですが、生物に有害な物質が含まれていません」
「ほほう?」
「自衛隊所属の『鑑定士』が鑑定したところ。トレントタールを塗布した物質には、『生物忌避Ⅶ』『モンスター忌避Ⅴ』の効果が付与される、とのことです」
「……何となく言いたいことは分かったが、念のために聞かせてくれ。それが何に使える?」
「通常船の塗料として使った場合、その船がモンスターのいる海域を航行出来るようになる可能性があります」
「「なんだと!?」」
「また、特殊船の塗料として使った場合、その船の安全性が高まると同時に、材の腐敗する速度を遅くし、牡蠣殻落としの回数を減らせる可能性があります」
「となると……!?」
「タンカーが動かせる!?」
「特殊船の維持コストが下がる!?」
「……それらの可能性は否定出来ません。現在探索班が持ち帰った樹脂を使い、トレントタールの研究を進めておりますが、今ある樹脂だけでは、小型漁船一隻しか塗装することが出来ません。なので、一時的にこの探索班を樹脂集めに回す許可が貰えないか、と」
「うむ、許可しよう。あと、『豊穣の森ダンジョン』の探索班は二班あっただろ? もう片方を六十層まで到達させるように。トレントタールは世界を復活させる可能性がある」
「了承しました。そのようにします」
「……しかし、『テレポーターはその階層に到達した者しか使えない』ダンジョンの仕様が恨めしいですな」
「おまけにテレポーターが十層毎にしか存在しないのも、厳しいですね」
「そのテレポーターも全てのダンジョンにある訳ではないからな。『豊穣の森ダンジョン』にあってくれて助かった」
「ですね。では続いて『137番ダンジョン』通称『長沼大豆畑ダンジョン』から……」




