特別編 懲罰部隊 第3部 第7章 新たな任務 2 待機命令
みなさん、おはようございます、こんにちは、こんばんは、お疲れ様です。
「では、岩佐3佐たちは、準備が出来たら、ヘリポートに集合してくれ。すぐにUH-1Jを離陸させる」
「準備なら、いつでも出来ています。今すぐにも出発出来ます」
井笠の言葉に、岩佐が返答した。
「では、すぐに出発してくれ」
井笠がそう言うと、岩佐が代表して10度の敬礼を行った。
「それで・・・石垣君」
「はい」
「君たちは、しばらくの間、ここで待機だ」
「は?」
石垣が、声を上げた。
「待機だ。明日に、インドパシフィック合同軍在比米軍の前線部隊の指揮官や、その傘下で作戦行動を行っているNATO軍、在比米軍指揮下のフィリピン軍等と合同会議が開かれる。君は、それに出席してもらう」
「ですが、陸将補!第14機動旅団付弁護派遣団に所属する桃菜彩芽弁護士の説得があります・・・自分は、ただちに第15即応機動連隊の宿営地に急行すべきでは・・・」
「まあ・・・そうなのだが・・・」
井笠は、口ごもる。
「ルテナント・イシガキ」
メリッサが、声をかけた。
「何ですか?」
「ジェネラル・イカサの心情を、理解してあげなさい」
「それは、どういう・・・」
「意味が、わからないのか・・・?」
オールディスが、呆れた声で、つぶやく。
「はい、まったくわかりません」
「簡単な事だ。第15即応機動連隊は、最前線に展開している。これから大作戦が実施されようという時に、戦場の経験が無いお子様をこれ以上、増やしたくないという最前線部隊の指揮官からの具申だ」
「戦場経験が無いって・・・自分は、ハワイ諸島での戦いを経験しました!」
「あくまでも戦闘が終結した、後で!だろう?」
後、という言葉をオールディスは強調した。
「非正規戦闘は、発生していました。自分はグリーンゾーンで、戦場視察を行いました!」
「グリーンゾーンの外には出たか?」
オールディスが聞く。
「いえ・・・ハワイ諸島を統治する事になっていた、インドパシフィック合同軍在ハワイ米軍に拒否されました・・・」
「そうだろうな」
ハワイ諸島攻略作戦は、大日本帝国陸海軍指揮で行われたが、それは表向きの話であり、実際に指揮及び指導したのはインドパシフィック合同軍に属するアメリカ・ハワイ軍である。
自衛隊の参加部隊は、水陸機動団第2水陸機動連隊と西部方面普通科第2連隊を基幹とした島嶼戦専門部隊と、市街地戦闘専門の東部方面普通科第1連隊(同部隊は菊水総隊指揮下では無く、破軍集団陸上自衛隊の指揮下である)である。
さらに、中央即応連隊から増援部隊として1個普通科中隊を基幹とした同連隊傘下の施設中隊第3施設小隊、爆発装置処理隊から1個小隊を編入させた戦闘群と西部方面戦車隊から1個戦車中隊を出動させた程度であり、師団クラスの大部隊の投入は行っていない。
大日本帝国陸海軍でもハワイ諸島攻略は海軍が主体となって行ったため、陸軍は、1個旅団程度を投入しただけだ。
ほとんどの上陸戦は、海軍陸戦隊が行った。
自衛隊及び大日本帝国陸海軍のハワイ諸島への投入兵力は、このぐらいであって、主体となったのは在ハワイ米軍である。
実態は在ハワイ米軍の指揮・監督下でハワイ諸島・ミッドウェー諸島への上陸作戦及び占領政策が行われた。
石垣自身としては、自分が立案したハワイ攻略であるため、あたかも自分が行ったような気がしているが、その部隊行動案を採用したのは、自衛隊と大日本帝国陸海軍であり、それすらも各部隊の幕僚や参謀たちが、実行可能な行動案に再調整していたという事実を知らない。
誰からも言われていないため、石垣は知らないだけの事ではあるが、それを正面から突き付けるのも必要だろう。
「ルテナント・イシガキ」
オールディスが、口を開いた。
「君は、史実知識から作戦案を練って、計画し、立案して、それが採用されたと思っているが・・・実際は、違う」
「何が、違うのですか!?」
石垣が、噛みつく。
「確かに、君は作戦案を提出した。だが、それは前線部隊・方面部隊・中央部隊で、それぞれの参謀たちが提出された作戦案を調整した。君は、自分の出した作戦案が、100パーセント採用されたと自分に言い聞かせて、修正・調整された事を知らなかった。いや、知らぬふりをした。違うか?」
「・・・・・・」
「君の背後には、兄の存在がある。兄の影響力を恐れた自衛隊幹部たちは、兄の干渉を恐れて、誰も君の作戦案の粗を指摘しなかった・・・まあ、君を最初から見捨てていた者もいたが・・・」
オールディスが、高笑いをする。
「君は、今回のフィリピン攻略も、在比アメリカ軍及びフィリピン軍、ASEAN連合軍に大日本帝国陸海軍参加するから、自衛隊が参加する必要は無いと主張した・・・しかし、実際は、陸海空自衛隊が、フィリピンの戦いに参戦した。君は、一応、用意したフィリピンの戦いでの作戦計画書を自衛隊統合幕僚本部と菊水総隊自衛隊司令部に提出した。そして、統合幕僚本部と菊水総隊自衛隊司令部で、調整・修正された状態で、君の作戦計画書が採択された。すべて、自分の実力だと思うか?」
「・・・・・・」
「君の実力では無い。すべて、君の兄の七光りによって、自衛隊幹部が調整及び修正したものだ。そうじゃなければ、君のような下級幹部の意見具申等・・・誰も聞かない」
「・・・・・・」
「だが、今回は、君にも任務が与えられる。完全に見捨てられた訳では無い。与えられる任務も重要だ。君が失敗すれば、陸上自衛隊外人部隊だけでは無く、この作戦に参加するすべての部隊の生命が危険になる。そして君が、この任務を成し遂げたとしても、それなりの人命が消える事になる」
「少し、いいかしら?」
メリッサが、口を開く。
「ルテナント・イシガキ。貴方・・・ハワイ・ミッドウェー攻略作戦が成功して、かなり浮かれていたわよね」
「ええ、はい。自分が立案した部隊行動基準で、太平洋戦争の緒戦であるハワイ諸島とミッドウェー諸島を占領する事が出来ました。喜ぶのは普通ではないですか・・・?」
「その事については問題ないわ・・・でも、一番の問題があるの。ハワイの戦い及びミッドウェーでの戦いで、何人の自衛官及び帝国陸海軍軍人、在ハワイ・アメリカ軍軍人が戦死したか知っている?」
「いえ・・・極めて軽微だった・・・と」
「自衛官4名(陸上自衛官2名、海上自衛官1名、航空自衛官1名)が戦死しているの。大日本帝国陸海軍人は、85名(陸軍20名、海軍航空隊30名、海軍陸戦隊35名)戦死しているわ・・・在ハワイ・アメリカ軍及び連合軍将兵たちは、70名(アメリカ軍25名、イギリス軍10名、司馬懿軍5名、孔明軍5名、朱蒙軍10名、その他参加国軍1名ないし2名)が戦死しているのよ」
「でも正規戦闘後の殉職者も、含まれていますよね・・・」
「いいえ、すべて正規戦闘での戦死よ」
「・・・・・・」
「そうだ」
オールディスが、口を開いた。
「君が大成功だと浮かれているハワイやミッドウェーでも、それだけの人命が消えた。その責任を感じているか?」
「・・・・・・」
石垣は、言葉を失った。
「まあ、そういう事は、後で教えてやる」
オールディスが、井笠に振り返る。
「申し訳ない。このような場で、お子様に説教と講義をしてしまって・・・まあ、ジェネラル・イカサも、言いたい事があったでしょう・・・?」
「そうだな・・・私は陸将補だし、部下たちが感情的になっている。この場で、私も感情的になる訳にはいかない。火事を起こすのは一向にかまわないが・・・消火の用意が出来ていないと、大火になってしまう。それは避けなくてはならない」
井笠がつぶやくと、石垣に顔を向けた。
「石垣君。君の気持もわからないではないが・・・ここは堪えてほしい。フィリピン攻略のための部隊行動案を君が提出した事が、厚木基地での1件で、世間に広がってしまった・・・悪い事に、それが平和議会や新世界連合議会にも広まってしまい・・・双方の反戦団体や退役軍人会・退職自衛官の会までにも情報がリークされてしまった。平和議会では、反戦派の与野党議員たちが団結し、反戦活動を行っている・・・それだけでは無く、石垣君自身を、証人喚問に召喚するようにという意見書を野党議員が議会に提出した」
「え!?」
石垣は、驚いた。
「自分は、そのような話は聞いていません・・・」
「そうだろうな・・・誰も言っていないのだから、与党議員は反対している上に、君を証人喚問に召喚するよう主張している野党議員は少数だ。だが、議会前の公園では、退職自衛官の会や、自衛官の家族の会が主催となって、立案者の処罰を望むデモ活動が行われている」
「そんな!?自分は、どうなるのですか!?」
「だからこそ、今回の任務の成功が必要なのだ。今回の任務が成功すれば、野党議員はもちろんの事、平和団体や退職自衛官の会や自衛官の家族会で、派兵に反対する者たちを黙らせることが出来る・・・それともう1つ、君にお願いしたい事がある」
「何ですか?」
「装甲普通科隊及び装甲機動隊を、君の指揮下に入れる。指揮官たちは、君よりもはるかに上の1等陸佐2等であり、警視正であるが、君の命令1つで行動する」
「装甲普通科隊・・・?装甲機動隊・・・?」
聞いた事も無い単語に、石垣の頭の上に?マークが浮かぶ。
「おっと、これは極秘事項だ。資料を渡すが・・・ここだけで読んでくれ」
井笠が引き出しから、㊙と書かれた分厚い封筒を取り出す。
その封筒を開けると、書類をそれぞれに配った。
「これは・・・」
「すごい!すごい!」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
石垣は驚き、側瀬は歓声を上げた。
メリッサとオールディス、アーサーズの3人は、何のリアクションも無い。
「装甲普通科隊って、SFアニメに出てくる戦闘宇宙服みたいですね」
側瀬は、感想を述べた。
「もともとは、月面基地を開発する際・・・地球外生命体若しくは他の月面基地から襲撃があった場合に備えての戦闘を目的とした戦闘宇宙服だった。それを大気圏内での戦闘を可能にするための戦闘スーツとして開発されたものだ。まあ、それぞれで専門用語が存在するがな。戦闘用パワードスーツ等々・・・」
「すごいですね・・・しかし、このような秘匿部隊を自分が率いるのですか・・・?」
「ああ、防衛予算及び防衛予備予算を使った極秘事項の部隊だ。全滅という事態だけは避けてくれ・・・まあ。仮に全滅しても君の責任はならない・・・が」
井笠との面談を終えた石垣たちは、第14機動旅団司令部が置かれている庁舎を出た。
「ルテナント・イシガキ」
オールディスが、呼び止めた。
「少し、時間はいいかね?」
「いいですよ」
「では、第14後方支援隊衛生隊の医療施設に行こう」
「前にも行きましたが・・・」
「お前が行ったのは、軽度の精神障害者が収容されている入院施設だ。今度、行くのは精神的な負傷をしている隊員では無く、身体的負傷をしている隊員の所だ」
「行くといいわ。あの時は時間が無かったけど・・・今回はたっぷりと時間があるわ。そこで、しっかりと見ておくといいわ。現場の苦しみを・・・」
メリッサが、目を伏せる。
「じゃあ、行こう」
オールディスが、石垣を連れていく。
第14機動旅団第14後方支援隊衛生隊の隊舎はヘリポートと隣接した位置にあった。
「何故、ヘリポートの近くに衛生隊の隊舎が置かれているか、わかるか?」
「いえ」
「簡単だ。負傷者の搬送、及び治療するためだ」
「そうですか・・・」
「お前、史実には詳しいな?」
「はい」
「では、太平洋戦争での旧日本陸海軍の死因は、何かわかるか・・・?」
「病気と飢餓だったと記憶しています」
「そうだ。では、それ以外の戦争での死因の主な原因は何だ・・・?中世の時代でのヨーロッパやアジア・・・この場合は日本史がいいな。主な死因はわかるか・・・?」
「戦ですから・・・戦闘による死傷ですか・・・?」
「何故、そう思う?」
「病気や飢餓で死傷したという記録は、見た事がありませんから・・・」
「ふうん・・・」
「違うのですか・・・?」
「ああ。どの時代の戦争も、病気と飢餓によるものがほとんどだ。歴史に残っていないのは、当時では当たり前だったからだ。戦場では医師の数は足りない・・・そのため、兵士たちだけで間違った治療方を行い、多くの負傷兵が病死した。主な原因は破傷風だが・・・ただの風邪でも、肺炎や肺疾患、それ以外にも内蔵の疾患を発症させて、命を落とした。将軍や幹部クラスには医師が同行していたから、当時の適切な治療を受ける事が出来た。だが、一般兵にはそういった者たちは同行しない。同行はしているが、治療されるのは、ほんの一握りだ」
「・・・・・・」
「飢餓状態も、深刻だった」
「どうしてですか?戦場ですから、最悪、敵地の民衆から奪う事も出来たでしょう・・・?」
「それを食べる事が出来るのは、ほんの一握りの者たちだけだ。主に幹部たちだけだった。ほとんどの者たちは、非常食や食事になりそうにない貧しい物を食していた」
「そんな事をしたら、敵に寝返る者や反乱が起きるのでは無いですか・・・?」
「だからこそ、戦争犯罪行為を認めていた」
「・・・・・・」
「物資の略奪はもちろんの事、若い女性や少女・・・若しくは幼女に対しても暴行を行った。さらに若い男や少年は売り物になるという事で、人身売買も横行していた。そういった商売をしていた商人も、軍隊に同行していた・・・という記録も、真偽は置いておいても残っている」
「・・・・・・」
「古代、中世の時代では、農民は、ただ単に搾取されるだけの存在だ。軍隊は、やりたい放題の盗賊だった」
「それでしたら、反乱が起きるのでは無いですか・・・?」
「どうやって起こす・・・軍隊は、小さな村の何倍もの規模がある。下手をしたら、村人全員が殺されるか、奴隷にされるか・・・だ」
史実に詳しい・・・といっても、精々、この程度だ。
もっとも、日本だけでは無く、世界中の国々が、歴史の中でこういった暗黒面を隠しているのだから、仕方は無い。
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