特別編 懲罰部隊 第3部 第6章 新たな任務 1 イト婆さん推参
みなさん、おはようございます、こんにちは、こんばんは、お疲れ様です。
菊水総隊陸上自衛隊第14機動旅団司令部が置かれている駐屯地で、石垣たちと岩佐たちは、足止めを受けていた。
「どうなっているんですか!?」
菊水総隊司令官付特務作戦チームに所属する石垣達也2等海尉が、騒いだ。
「第15即応機動連隊の宿営地に向かえという指示を出しておいて、突然、状況が変わったから、出発は延期って・・・!?」
「落ち着きなさい!」
メリッサ・ケッツァーヘル少尉が、窘める。
「落ち着ける訳、無いでしょう!?幼馴染の彩芽が、危険地帯にいるのに!!!」
彩芽というのは、第14機動旅団付弁護派遣団の弁護士である、桃菜彩芽の事だ。
「・・・だからこそ、落ち着けと言っているんだ。小僧」
民間軍事企業(PMC)の社員であるベン・オールディスが、ため息混じりに窘める。
「どうして!?皆さんは、どうして、そんなに落ち着いていられるんですか!?わかりました!貴方がたには、大切な存在が危険な戦場にいる。という経験が無いんでしょう!?だから、そんな悠長な事を、言っていられるんです!!」
「そうか・・・それで?」
「それで・・・って?」
「それで・・・その後は無いのか?」
オールディスが、つぶやく。
「お前のように、ぎゃあぎゃあ喚いていたら、状況は変わるのか?」
「・・・・・・」
「言いたい事は、わかる。だから、俺たち経験者は、未経験者の戯言を聞いている。それだけでは不満か・・・?」
「何ですか、それ!?まるで俺が、子供みたいじゃ無いですか!?」
「あら、何か違うかしら?」
メリッサが、茶化す。
「俺は大人です!きちんと選挙で、欠かさず投票していますし、税金も払っています!そして、いつか妻子をもってもいいように、たくさん稼いでいます!貯金もしています」
「それぐらいなら、誰もがやっているだろう?」
オールディスが、断言する。
「それだけで、大人と言われても・・・な・・・子供の延長線上でしかない」
「選挙に行くって、言っているけど、ルテナント・イシガキ。貴方は、自分が属する地区の日本共和区の衆議院議員や参議院議員、共和院議員の名前を言えるかしら、全員?」
「それは、その・・・」
「では、日本共和区議会の議席を占めている党の名前は、すべて言えるか・・・?」
「それは・・・あの・・・」
メリッサとオールディスが聞く。
「はい!はい、はい!!」
石垣の補佐である側瀬美雪3等海尉が、手を挙げる。
「はい、ミユキ」
メリッサが、当てる。
「私は誰も知りません!それに、選挙とか面倒なので、選挙にも行きません!」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
メリッサとオールディスが、言葉を失う。
「これは、これで問題だな・・・」
「そうね」
「ほら!側瀬3尉と比べたら、俺は政治に参加しているじゃないですか!」
石垣が威張る。
「底辺の人間と比べて、自分が偉いと思うな。議会を占めている党の名前と、地元の議員の名前や区長の名前が言えるのは当然だ。さらに、立候補する候補議員の政策や政約については、当然ながら知っていなければならない」
「え?でも立候補した議員が議員に任命されても、約束を果たした事は無いじゃないですか?」
石垣の、とんでもない発言に、オールディスとメリッサが絶叫する。
「イシガキ。貴方は、何を考えて投票しているの?それとも白紙投票・・・?」
「白紙投票なんて、立候補者に失礼じゃないですか・・・?俺は、名前の印象で決めています」
再び2人の絶叫が、響くのであった。
メリッサとオールディスが絶叫したと後、放送でラッパ音と共に、『配食始め』という放送が流れた。
「まあ、腹は減るし、昼飯にしよう」
オールディスが、首を左右に振りながら、つぶやく。
「いえ!旅団長に掛け合いましょう!早く、彩芽を説得に行かせて下さいと・・・」
「形式上では、貴方が指揮官よ。貴方が、そうしたいと言うならば、貴方の決断で、貴方自身がすればいいわ・・・でも、その責任を負うのは、貴方では無い。総隊司令官・アドミラル・ヤマガタと、副司令官のホンジョウよ。そして、現場での責任は、私にあるわ」
「・・・・・・」
石垣は不満顔になり、黙り込む。
「まあ、そういう事だ。文句なら、後でゆっくりと聞いてやるから、メシにしよう」
オールディスが、石垣の肩を叩く。
「ごはん~♪ごはん~♪」
側瀬はるんるんと言った感じで、共有エリアの休憩室を出る。
「・・・・・・」
石垣は不満に満ちた表情で、立ち上がり、彼らの後を追った。
食堂は賑わっていた。
今日の昼食は、バターチキンカレーだった。
「豪勢だな・・・」
「補給の目途がついたから、食事も贅沢になりました」
自衛隊第49統合任務部隊航空自衛隊第49航空混成団第49航空隊第491飛行隊F-15J飛行班に所属する岩佐祐介3等空佐は、ウィングマン兼サポート役の早瀬杏3等空尉が雑談していたのだ。
岩佐たちは、石垣たちと共に待機を命じられてから、身体がなまらないように、筋トレの日々を過ごしていた。
「汗をかいた後は、こういうメシにかぎる!」
同じ飛行班に所属する猪渕仁良2等空尉は、タオルで汗を拭いながら叫ぶ。
「空に上がっている奴らが、羨ましい・・・」
猪渕のウィングマン兼サポート役の間宮正3等空尉が、空を見上げながら、つぶやく。
「あれは陸自のF-1戦闘機だ・・・いや、陸自では支援戦闘機と呼称するのであったな」
「どこか、爆撃するのでしょうか?」
早瀬が、つぶやく。
4機編隊のF-1支援戦闘機が、編隊飛行をしながら上空を通過している。
さらに菊水総隊陸上自衛隊第1ヘリコプター団に所属するF-4EJ改多用途戦闘機も、2機編隊で、上空を通過する。
それも、1度や2度では無い。
連続で、飛行編隊が上空を通過する。
「F-1支援戦闘機は、敵勢力圏内へのロケット弾攻撃と機銃掃射だろう・・・F-4EJ改多用途戦闘機は、爆撃及び制空権確保のための制空戦だろう」
岩佐が、答える。
「第14機動旅団司令部に勤務する自衛官の話では、少し前まで、この辺りまで、連合国米英比連合軍の爆撃機や戦闘機が飛来して来ていたって」
「でもよ。それは、空自の高射部隊や陸自の高射特科部隊、海自の陸警隊防空陸警隊の地対空誘導弾で、撃墜したんだろう?」
「ええ、そうです。さらに陸自の第7機甲師団及び北部方面高射特科団や東北方面高射特科連隊に所属する87式自走高射機関砲が少数派遣されて、対空射撃を実施しています。さらに帝国陸海軍及び航空予備軍の防空部隊にも、陸自が運用していた自走高射機関砲を提供しています。空からの攻撃には万全の態勢が敷かれています」
間宮の言葉に、岩佐と猪渕が顔を合わせた。
「そうだな・・・」
岩佐が、つぶやいた。
昼食を終えた頃、石垣たちと岩佐たちに第14機動旅団・旅団長の井笠和彦陸将補に呼び出された。
石垣としては、ようやく出動命令が出ると、息まいていた。
第14機動旅団司令部が置かれている庁舎に出向くと、1人の老婆が立っていた。
「遅いぞ!お主ら!!」
「ばっちゃん!!」
猪渕が、喜ぶ。
「なつくな!バカ者!」
猪渕の抱き着き攻撃を、老婆はすんなり躱す。
「イト婆さん。どうしてここに?」
岩佐が、驚く。
「今回の共同作戦で、この若造の支援を行うよう、ある小娘に頼まれたのじゃ。このワシがじゃぞ・・・お主も、大した身分じゃのう」
東鬼イトが、石垣を見る。
「え?俺?」
「お主以外に誰がおる!身の程を弁えていないとは、とんだ身の程知らずじゃ!」
「・・・・・・」
石垣は、意味の分からない顔をした。
「あの・・・さっぱり意味が、わからないのですが・・・まずは順をおって説明してくれませんか・・・?」
「その必要はないわい!お主のような子供には、まだ早いわ!」
「すみません・・・」
石垣が、素直に謝る。
「しかし・・・見れば見るほど・・・情けない男だの・・・あの小娘が、気に掛ける意味が、わからんわい」
「はぁ~・・・すみません・・・」
「すぐに、謝るでない!愚か者が!」
「はい!すみません!」
「何回、謝る気じゃ!?」
「す、すみません!」
「また、謝るんかい!」
石垣が、どんどん小さくなる。
「お主のような、アソコが小さい奴には、曾孫娘を嫁には行かせないわい!」
「本当に、すみません!」
石垣が、頭を下げる。
「それが問題だと・・・言っているのに、いつになったら気付くのかしら・・・?」
メリッサが、額を押さえる。
「石垣2尉は、おバカだから、いつまで経っても気づかないと思うよ。メェメェ」
側瀬が、つぶやく。
「いや・・・俺は、君よりかは頭いいけど・・・」
「あぁぁ~石垣2尉。勉強が出来るから頭がいいと思っているんですか~?そういう思考の人は、お子様思考なんですよ~」
「俺は、お子様じゃない!れっきとした大人だ!」
「大人は、自分を大人だとは言わんよ。お主が、お子様である証拠じゃ」
「ぐぬぬぬ~・・・」
石垣が、悔しがる。
「悔しいかえ?」
「悔しいですよ!当然じゃないですか!?」
「あぁぁ~お子様だ~!こんな事で悔しがるなんて・・・お子様を通り越して、赤ちゃんだ~!」
側瀬が、からかう。
「はい、は~い。アンヨは上手。おいで、おいで~」
側瀬が、手を叩く。
「どちらも、お子様思考ね・・・」
メリッサが、ボソッとつぶやく。
「前々からだろう」
オールディスが、答える。
「ここは幼稚園ですか・・・?」
早瀬が、つぶやく。
「考えるな。考えたら負けだ」
岩佐が、答える。
「いい歳をした・・・それも幹部自衛官が、あのような思考じゃあ・・・この先が思いやられますよ・・・」
間宮が、つぶやく。
「あんな人物に、太平洋戦争を転換させる部隊行動案をまとめさせていたと聞くと・・・俺たちの上にいる上層部は、大丈夫かよ?と、叫びたくなる・・・」
猪渕が、つぶやく。
「それより、イトさん・・・今回の共同部隊行動というのは、どういったものでしょうか・・・?」
「なんじゃ、お主ら、知らんのか?」
岩佐の質問に、イト婆さんが首を傾げる。
「その話でしたら、私の執務室で、ゆっくり話そうと思っていました」
傍らから声がして、石垣たちと岩佐たちは振り返る。
声をかけたのは、旅団長の井笠だった。
「なんじゃ・・・遅いの~・・・ワシは小娘に指示されて、昨日の便で飛んで来たというのにじゃ」
「何かと我々にも事情がありまして・・・その小娘・・・は、すぐに配下の者たちに連絡が出来ましょうが、我々には指揮系統があります」
「ふむ・・・長い言い訳じゃのぉ」
「それを言われますと、頭が痛いです。ご婦人」
「お主らも、そこに突っ立っていないで、早く、旅団長に話を聞かぬか!」
「そうですね・・・」
岩佐が代表して、告げた。
「では、詳しい話は、私の執務室で」
井笠に案内されて、旅団長室に顔を出した石垣たちと岩佐たちは、井笠はすぐに本題に入った。
「岩佐3佐以下3名の空自のパイロットたちは、第14飛行隊所属のUH-1Jで、最寄りの帝国陸軍航空隊の飛行場に向かえ」
「へ?」
岩佐が、首を傾げた。
「帝国陸軍の飛行場って・・・」
猪渕が、声を上げる。
「あるのは、レシプロ戦闘機だけでしょう・・・?」
「陸軍航空隊が管理するレシプロ戦闘機に搭乗して、石垣君たちの上空援護及び制空戦を行ってもらう」
「陸将補」
間宮が、手を挙げる。
「陸軍航空隊という事は、九七式戦闘機ですか・・・?それとも一式戦闘機[隼]ですか・・・?いえ、最近、配備された二式戦闘機[鍾馗]もあり得るか・・・」
間宮が、ぶつぶつとつぶやく。
「いや、陸軍航空隊には余剰の戦闘機は無い。連合国米英比連合軍航空部隊に所属する戦闘機を鹵獲した物を使用してもらう」
「鹵獲品・・・?」
間宮の目が、キラキラと光る。
「P-40[キティホーク]・・・いや、中華民国空軍でも使われているP-43[ライサー]又はイギリス空軍の主力戦闘機・・・スピットファイアもあり得る・・・」
間宮が期待した表情を浮かべていると、井笠が書類を開いた。
「確か・・・君たちに搭乗してもらう戦闘機は・・・P-40[キティホーク]だった」
「あの・・・」
猪渕が、手を挙げる。
「なんだね?」
「上空には、インドパシフィック合同軍合同空軍のジェット戦闘機や自衛隊のジェット戦闘機等が展開していますよね。敵機として誤認されて、撃墜される可能性は・・・?」
「安心しろ、陸軍工兵隊の工兵たちが現地改造ではあるが、大日本帝国陸軍仕様にしている。肉眼でも認識される上に、敵味方識別装置も簡易ではあるが、搭載されているそうだ」
大日本帝国陸軍及び海軍陸戦隊は、フィリピンに上陸した際に、連合国米英比連合軍陸軍及び海兵隊が放棄した兵器又は破壊された兵器を修復して、再利用している。
戦闘機も、その1つであり、他には軽戦車であるM3[スチュアート]や小銃、重機関銃等の銃器類を鹵獲している。
自衛隊では、標的として使用しているのに対して、かなりクリーンな使い方を行っている。
もちろん、自衛隊も無駄にはしていない。
即応機動連隊では無い普通科連隊では、普通科支援の目的のために自衛隊仕様にされた軽戦車や装甲車を使用した。
普通科以外のその他の職種部隊でも破壊された車輛を修復したり、放棄された車輛を鹵獲して、使用している。
しかし、デジタル化やオートマチック化された車輛に慣れている自衛官には、第2次世界大戦時代の車輛は扱いにくく、慣れるのに苦労した。
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