特別編 懲罰部隊 第3部 第3章 市ヶ谷駐屯地にて 2
みなさん、おはようございます、こんにちは、こんばんは、お疲れ様です。
牛澤が宇草を伴って、市ヶ谷駐屯地内で設置されている喫茶店に顔を出した。
「牛澤陸将?」
傍らから、声をかけられた。
「四十川海将」
彼に声をかけたのは、海上自衛隊外人警備艦隊司令官の、四十川源也海将である。
「私もいるぞ」
四十川の影から現れたのは、航空自衛隊外人航空集団司令官の、網元文彌空将であった。
「これは、これは、お二方・・・お揃いで、何をしているのですか・・・?」
牛澤が聞く。
「どうもこうも無い。あの女史に、おど・・・お願いされては、頭が痛くなる・・・その前に、甘い物を飲んで、食べて、頭の回転を良くするんだ」
四十川が、苦虫を嚙み潰したような顔でぼやく。
「不穏な言葉が聞こえましたが・・・最後まで言わないのですか・・・?」
「あの女史は、最新式の盗聴器と指向性マイクを所持している。彼女の機嫌を損ねる発言をしたら、後が怖い」
「うむ。同感」
網元が、頷く。
すると・・・
ブルルル・・・
誰かのスマホが鳴った。
「私のだ」
四十川が、スマホを耳に当てる。
「女史・・・!?」
どうやらスマホの相手は、話していた女史だったようだ。
「スピーカーに・・・はい、わかりました」
四十川が、スマホを操作する。
『ヤッホー!お三方・・・私は3人の会話も行動も把握しているから、そのつもりで・・・』
「そうですか・・・これは、公安警察としての仕事ですか・・・?」
『それもあるかなぁ~でも、ほとんど私の趣味で、コレクションの1つ・・・』
「コレクション・・・?」
『そうそう。自衛隊、警察、海保、税関、麻取等の国の機関や民間団体には、私のスパイが潜り込んでいて、日本共和区内の防犯カメラは、もちろんの事。日本共和区統合省の施設で運用される監視カメラはすべて、私が掌握済み・・・だから、逃げ切る事も出来なければ、不穏な動きをする事も出来ないの~』
「あぁ~・・・」
四十川が、頭を抱える。
「1つ、お聞きしたのですが・・・?」
網元が、尋ねる。
『何でしょう~?』
「私たちのプライベートまで、監視しているのですか・・・?」
『当たり前じゃん!公私すべてを監視しなくちゃ、面白くないもん!』
「では!私の、あんな事やそんな事も・・・」
『もっちろんだよぉ~あんな事や、そんな事や、こんな事もすべて把握済み・・・』
「こ、こんな事も・・・!?」
網元が、頭を抱える。
「2人とも、何をしたのやら・・・」
牛澤が、首を振る。
「お二方!」
声を出したのは、宇草だった。
「警務隊や、海上自衛隊警務隊の厄介になるような事は、していませんね?それだけでは無く、警察、週刊誌や月刊誌の記者に嗅ぎつけられる事は、ありませんね?」
宇草が、2人に詰め寄る。
(・・・いや、陸将補。そんな事よりも、ここに現在進行形で人権侵害を行っている張本人がいるのだが・・・それはいいのか・・・?)
牛澤は、一応口には出さない事にした。
「それで、警視」
『はいはい、何でしょう・・・?ん?その声はウグちゃん!?久しぶりぃ!』
「お久しぶりです」
『息子さんの情報だけど・・・山岳レンジャー小隊で、頑張っているよぉ~』
「当然です。私が知りたいのは、それでは無く・・・」
『あ~・・・色恋沙汰?』
「はい、相手の親の話では、息子の方が積極的に、手を出したと・・・」
『う~ん、そうとも、とれる感じかな・・・でも、まあ・・・両想いみたいだし、結果オーライって事で、良くない?』
「そうですか・・・」
宇草が、頭を抱えた。
喫茶店に入ると、ウェイトレスに案内され、牛澤たちは席に着いた。
「はぁ~・・・はっ」
宇草が、ため息を吐いたと思ったら、ため息を止めた。
息子の件で、相当頭を抱えているようだ。
「昼間だから、酒は飲めないから、スイーツを食べまくるか」
「そうだな・・・あの女史め、私の秘密をすべて知っているとは・・・」
四十川が、ぼやく。
「はぁ~・・・妻にも秘密にしているのに・・・」
網元が、ぼやく。
(これは、これは・・・あの女史に、完全に弱みを握られているな・・・)
牛澤は、苦笑する。
『皆さん~どうしたのですかぁ~?喫茶店で、そのような暗い顔は、似合いませんよぉ~』
スマホのスピーカーから、とある女史からの声がする。
「自分の心に、聞いてください」
ため息をしながら、牛澤がスマホにつぶやく。
『えっ?私のせいですかぁ~それは、ダメですよぉ~身から出た錆なんですから・・・』
「しかし、女史。いくら防犯カメラをハッキングし、自衛隊、警察、海保等の公務員組織や政治家たちの執務室・会議室・応接室、私邸に盗聴器を仕掛けたとしても、これほど正確に個人情報を把握するのは難しいのでは無いですか・・・?」
『気になるぅ・・・?』
「ええ。非常に気になります」
『簡単だよぉ~私には公安警察、メディア、探偵が、私のグループ傘下に存在するから、いくらでも個人情報は把握し放題なのぉ~』
「そうですか・・・では、貴女の傘下にある週刊誌や月刊誌を作成するメディアとは、一切取材に応じないと言えば、どうなりますか・・・?」
『えぇ~いいの~?私の週刊誌記者や月刊誌記者は、自衛隊寄りの記事を書く上にぃ~自衛隊や防衛局・・・前の防衛省の高級幹部との密会した記録もあるよぉ~そこには、防衛省と自衛隊が揉み消した、お宝のスキャンダルも、たくさんあるんだぁ~これが、全部世の中に流れたら・・・どうなるかなぁ~・・・?』
「わかりました。もう言いません」
彼女の兄(本当の兄妹ではない)である統合省保安局警察総監部陽炎団・団長兼菊水総隊警察・陽炎団・団長である本庄慈警視監が、アメリカ合衆国司法省・連邦捜査局(FBI)の元長官であるジョン・エドガー・フーヴァーを超える人物という由縁は、この女史の力が大きい・・・
むろん、彼の父、祖父を含めた本庄家は警察幹部の一族であり、薩長軍派の本庄一族とは反対勢力であった幕府軍の本庄一族であり、徳川幕府体制で、代々司法関係及び治安関係の役職についていた。
そのため、日本の警察の闇を、知り過ぎている人物の1人である。
あの女史の影響が無くても本庄は、日本の社会において、かなりの脅威になる存在である。
その彼を完全な存在にしたのは、彼を兄と慕う、この女史の存在である。
本庄は、危険な存在であり、警察・自衛隊・海上保安庁で、影響力を持っていた石垣三兄弟は、警察組織の派閥の1つであった本庄派を敵視していた。
元々、石垣三兄弟は、長州藩出身者である石垣家の血族であり、その石垣は薩摩との同盟を最後まで反対し、同盟後も薩摩を敵として扱った勢力だった。
そのため、石垣家と本庄家が仲良くする訳が無い。
このようなややこしい関係であるため、現在でもややこしい関係である。
現在の警察派閥である本庄派のナンバー3である本庄慈は、同じく警察派閥の石垣派と友好関係を築こうとしている。
日本共和区統合省防衛局自衛隊統合作戦司令部副司令官の摺原健樹陸将は、日本共和区本区中央区に置かれている防衛局自衛隊統合作戦司令部庁舎から市ヶ谷駐屯地に公用車で移動した。
「陸海空自衛隊外人部隊の指揮官たちは、すでに到着しています」
「うむ」
副官である1等陸佐からの言葉に、摺原は頷いた。
「ジェネラル・スリハラ」
アメリカ訛りのある英語が響いた。
「ジェネラル・レドモンド。貴官が、時間通りよりも早く来るとは・・・明日は雨かな・・・?」
摺原は空を見上げる。
晴天である・・・明日が雨になるとは、とても信じられない。
「あの女史の頼みだからな・・・」
「そうですか・・・」
彼に声をかけたのは、新世界連合加盟国であり常任理事国でもあるアメリカ合衆国の軍人組である統合参謀本部のメンバーであるアメリカ外人部隊総局長であるジェシ・ウィルコックス・レドモンド大将(陸軍大将)だ。
「私もいるぞ」
「ジェネラル・フルケ。貴官も、随分と早い到着ですね・・・」
2人に声をかけたのは、フランス軍外人部隊総長の、シャルル・ギ・フルケ大将(フランス海軍大将)だった。
何故、他国の外人部隊の総指揮官が顔を揃えているのというと、今回の摺原を議長とする外人部隊統合会議に出席するためだ。
フィリピン・ミンダナオ島で孤立している陸上自衛隊中央外人集団麾下の第2外人普通科連隊を救出するために、アメリカ軍とフランス軍の外人部隊を投入するからだ。
「ニホンの外人部隊は、我がフランス陸軍外人部隊を模範にして創設された。言ってみれば、親子も同然だ。子供のピンチを、指を咥えて見ているだけの親はいない」
「・・・・・・」
日本国自衛隊の外人部隊・・・特に陸上自衛隊外人部隊制度はフランス陸軍外人部隊を模範として創設された。
「先ほど・・・話に出ましたが、お二方が、早くお越しになられたのは、あの女史のせいですか・・・?」
「そうだ」
レドモンドが頷いた。
「あの女史め!私の隠している秘密を、フランス国家憲兵にバラすと言いやがった!!あんなのは脅しだ!!!」
フルケが、叫ぶ。
(いったい・・・何の弱みを握られていたのだか・・・)
摺原が心中で、つぶやく。
「ジェネラル・フルケ。ここでも内緒にしたい話は黙っていた方がいいですよ。あの女史は、ゴキブリや鼠のように耳がいいので、あちらこちらに盗聴器や設置型の指向性マイクがあります。警衛隊や警備隊・・・警務隊が、日々、駐屯地内を確認していますが・・・センサーに反応しない盗聴器や指向性マイクがあります」
「ひぃぃぃ~!!!??」
フルケが、叫んだ。
「あの事が・・・国家憲兵に、バレたら!!!私が積み上げた陸軍での地位が!!!!将来の政界入りがぁぁぁ~!!!!!」
フルケは、頭を抱えてフランス語で叫んでいた。
「ジェネラル・レドモンドも、何か秘密を暴くとでも脅されたのですか・・・?」
「いや、私には何も脅されるものは無い」
「そうですか・・・?」
摺原は、疑わし気な視線を送る。
「何やら、私を疑っているようだな?」
「いえ、では、何を餌にされたのか・・・?」
「富鶴太郎画伯が描いた、[海の中の人の心]という絵を、譲ってくれると言ってくれた」
「誰ぇぇぇ~!!?」
聞いた事も無い人物の名に、摺原が叫ぶ。
一方、その頃・・・
「はっ!?」
彼らの言う、とある存在である女史が、自動車の助手席で叫んだ。
「どうしました?」
同乗している小松が、尋ねる。
「フィリピン・統合司令部や中央の統合司令部でも、私をこき使う計画が、議論されているような・・・」
「またですか・・・絶対、気のせいです!」
「ひどいなぁ~・・・こんな可愛い美少女を、イジメるなんて~・・・世の中の、おじさま方、おばさま方は、人の心がないなぁ~・・・」
「貴女が、言いますか?」
「なになに、アイちゃん。何か間違った事を言った~?私~?」
「間違い過ぎです!貴女は、おじさま方や、おばさま方を、こき使っていたから、こんな時に、ここぞとばかりに仕返しをされるんです!」
「えぇぇ~きちんと、お礼とお返しは、しているよぉ~」
確かに、嘘は言ってはいない・・・言ってはいないが・・・
需要と供給は、絶対に釣り合っていないと、断言出来る。
「はぁ~・・・」
「まあ、何はともあれ、この物資を前線の部隊に送り届けないと、私たちが提案した部隊行動案が白紙されるぅ~・・・」
珍しく、女史は真面目な顔で、つぶやいた。
こき使われていると、ぼやきながらも女史は、ほとんど分単位のスケジュールを、当たり前のように、次々と熟している。
この行動力は、驚異的だ。
特別編 懲罰部隊 第3章をお読みいただきありがとうございます。
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