特別編 懲罰部隊 第3部 第2章 市ヶ谷駐屯地にて 1
みなさん、おはようございます、こんにちは、こんばんは、お疲れ様です。
陸上自衛隊座間駐屯地。
陸上自衛隊中央外人集団司令部庁舎の司令官室で、司令官の牛澤和博陸将は、副官から提出された書類に、目を通していた。
「司令官。例の部隊ですが・・・指示通りに、クラーク駐屯地に、空輸させました」
「ああ」
「では」
副官が、司令官室を退室した。
「はぁ~・・・」
牛澤は、ため息をついた。
「私に、ここまでさせるとは・・・あの女史め・・・忘れないからな」
牛澤が、つぶやいた。
「わぁ~怖い、怖いぃ~やっぱり、美人を怒らせると・・・後が怖いなぁ~・・・」
「!?」
牛澤は、存在しないはずの声に驚いた。
彼は、窓を見る。
何の気配も無い。
室内を見渡す。
だが、誰もいないどころか、誰かの気配もしない。
「待てよ・・・」
声のした方向に、近付く。
『さっすが、声だけで場所が、わかったかぁ~』
牛澤は、いつの間にか置かれている、1つの花瓶に近付いた。
『正解~ここだよぉ~』
「これは、これは・・・公安警察ですから、捜査の一環ですか・・・?」
『う~ん。違うかなぁ~私の趣味かな・・・』
「ほぅ」
牛澤は、ポケットから機器を取り出す。
その機器を、花瓶の近くに近付ける。
何の反応も無い。
盗聴器であれば、必ず反応する機器なのだが、反応は無い。
『無駄だよ~』
花瓶から、声がする。
『私が設置した最新式の盗聴器は、いかなる盗聴器の探知センサーに引っかからない代物なのぉ~』
「ほぅ・・・」
『開発に、10年かかった代物なのぉ~現在は、私麾下の警察組織、私が会長を務める探偵グループにまで広まっている、最高傑作なのぉ~』
「なるほど・・・」
牛澤は、腕を組んだ。
「先ほど、聞捨てならない事が聞こえましたが・・・確認します。私を監視していたのは公安警察としての捜査の一環では無く、趣味と言いましたね?」
『うん!ウッちゃんだけでは無く、他所にも多数の設置が、あるよぉ~』
「そうですか・・・では、抗議は警察総監部では無く、貴女のお兄様にしたらいいですね・・・」
『それはダメェェェ~!!』
「そうですか・・・そうでしたら、この新型盗聴器を探知するセンサーを、無償で提供して下さい」
『えぇぇぇ~!!?』
「お兄様に、言いますよ」
『わかったぁ~』
「では、お願いします」
『メソメソ・・・』
「ウソ泣きは、いけません」
『うえ~ん。ウッちゃんがイジメるぅ~・・・か弱い美少女をイジメる、最低な大人として、弁護団を組織してやるぅ~・・・』
「どうぞ、組織して下さい・・・私には愛友会という自衛隊の幹部たちで組織された団体の力があります。貴女もご存じでしょう・・・貴女と戦うと言えば、全員が張り切るでしょう」
『うん!知っている。前にも会合を開いていたよねぇ~こっそり盗み聞きしましたぁ~』
「でしょうね・・・」
『じゃあ、愛友会に対立する菊の花会の情報を、お詫びに無償で提供しますぅ~それで、手を打ってください』
「いいでしょう。菊の花の会は、自衛隊の勢力の中では最大勢力であって、政財界の繋がりもある。彼らの弱みを握れるのであれば、私としても愛友会でのポジションが安泰となります」
『えへへへ、そうでしょう、そうでしょう』
「わかりました。それで、今回の件は不問にしましょう・・・ですが・・・」
『何か・・・?』
「警務隊(MP)や公安警察が使っている盗聴器に、女史が使用する盗聴器に相当する盗聴器はありますか・・・?」
『う~ん。前に侵入した時は、4カ所に盗聴器が設置されていたな・・・』
「4カ所?」
『うん。陸上自衛隊中央情報保全隊、警務隊、公安調査本部、公安警察・・・かな』
「民間団体からの盗聴器は、無いのですね・・・」
『うん!それは、司令官の官舎や私邸に設置されていたけど、全部、取り除いたし、取り付けた左派系の団体に関しては、私が脅しました』
何を、やっているのだか・・・
「そうですか・・・それは、ありがとうございます」
『えっへん!』
「それで、正規の手順を踏まず・・・このような方法をとったのです。何か用があるのでは・・・?」
『用と言う訳ではないなぁ~』
「では、何か・・・?」
『今回の件・・・鬼武者大隊を第14機動旅団の指揮下に置いてくれて、ありがとうございますぅ~』
「そんな事で!?」
『もちろん、それだけではないよ。私の提案した部隊行動案を、実行出来るために外人部隊を動かしてくれて・・・を、含めてですぅ~』
「あれは、苦労しました・・・」
牛澤が、天を仰ぐ。
今回の件では、南方侵攻や南太平洋への攻勢のために陸海空自衛隊の部隊を、ほとんど投入している。
フィリピン攻略のために、2個機動旅団が投入されている。
フィリピンの北部は、安全地帯であるが、それでも連合軍からのゲリラ・コマンドによる破壊工作や後方支援部隊への襲撃が実施されている。
中部及び南部では、連合軍・・・米英比軍の残存部隊による遊撃戦が実施されており、完全にフィリピンを掌握した訳では無い。
そんな中、攻勢が激しいフィリピン・ミンダナオ島には、米英比軍残存部隊と潜水艦や仮装巡洋艦による秘密裏の増援部隊派遣が行われていて、その兵力は侮れない。
第14機動旅団第15即応機動連隊の指揮下で行動している第2外人普通科連隊は、敵中で孤立し、その救出と撤退の説得のために自衛隊から下級幹部が派遣されたが・・・とある女史の身内が、ミンダナオ島を視察する事になり、部隊行動計画が大きく変更された。
インドパシフィック合同軍在比米軍、菊水総隊自衛隊、大日本帝国陸海軍による3軍を中核とした合同軍を組織し、ミンダナオ島にいる連合軍米英比軍残存部隊を殲滅する共同部隊行動計画が立案された。
女史の趣味なのか・・・外人部隊は外人部隊によって救出されるのがいい・・・という考えの下で、新世界連合軍アメリカ統合軍傘下の陸軍外人部隊と、インドパシフィック合同軍に参加したフランス陸軍外人部隊等の外人部隊が参加し、外人連合部隊を組織した。
陸海空自衛隊でも、それぞれの外人部隊が出動するという外人部隊初の有事での共同部隊行動であった。
「この後も、市ヶ谷の統合作戦司令部の庁舎で、陸海空自衛隊の外人部隊の総指揮官及び幕僚と統合作戦副司令官を議長として、今回の件の会議を開く事になっています。外人部隊の指揮・監督は陸海空の将が担当します」
『そうですねぇ・・・頑張ってください!司令官たちの会議の決定が、私の共同部隊行動案の成否が決まりますから~』
「了解しています」
『それでは、私は忙しいので・・・通話を切りますねぇ~後、この花瓶は捨てたら、ダメですよぉ~これからの司令官との秘密会話に使いますからぁ~』
「そうですか・・・」
牛澤は、ため息をついた。
「まあ、これがあれば私の不穏な疑いがあっても、無実の証拠になりますね・・・」
『そうそう』
「司令官。お時間です」
副官が、声をかけた。
「わかった」
牛澤は、司令官室を出た。
副官を伴って、中央外人集団司令部庁舎の前に停められている、公用車に乗り込んだ。
幕僚たちも公用車に乗り込んで、市ヶ谷駐屯地にある統合作戦司令部庁舎に出向くだろう。
座間駐屯地は、日米の陸上自衛隊と在日米軍米陸軍が共同で運用する施設であるため、固有の部隊は駐屯していない。
日米陸上共同運用調整隊を基幹として、方面隊直轄の通信科部隊や情報科部隊が置かれており、さらに駐屯地及び周辺を警備するため普通科隊員で編成された警備隊が置かれている。
駐屯地正門に到着すると、警衛隊員が公用車を確認する。
「どうぞ」
警衛隊員が許可すると、別の警衛隊員が門を開放した。
立哨中の警衛隊員2名が、捧げ銃の姿勢をとる。
89式5.56ミリ小銃に89式多用途銃剣を先端に装着した状態で、20発入り弾倉が装填されている状態だ。
因みに実弾は、薬室内には装填されていない状態だ。
公用車が駐屯地の外を出ると、警務隊所属のパジェロが1輌と白バイが2輌は、牛澤を乗せた公用車の先導を走る。
さらに、先導には、関東管区警察局警備部警護課に所属するパトカーが1輌、走行する。
自衛隊の高級幹部は、公務である場合は、身辺の安全上のために警務隊(海自の場合は海上自衛隊警務隊、航空自衛隊の場合は航空警務隊)と管轄の警察局、警察本部、団の警護担当の部署が警護警察官を派遣する。
人数としては1名ないし2名という事であるが、場合によっては10人規模の警護警察官が警護として派遣される。
だが、警護警察官は、自衛官の高級幹部だけでは無く、警察、消防、海保等の警察組織等の高級幹部の身辺警護と、公務員の高級幹部、区議会議員、公安委員会委員長・副委員長・委員、衆議院議員、参議院議員、平和院議員等の議員たちの警護も担当している(こちらは、警備本部の警備官や警備会社の警備員たちも身辺警護を行っている)。
そのため、警護警察官が足りないため、一般の警察官や警察事務官も派遣している始末だ(もちろん、要人警護のための基礎的研修を修了している)。
因みに牛澤自身も公務以外の私事では、警備本部の警備官と警備会社の警備員による身辺警護を受けている。
政治家や公務員たちは、警備本部の警備官や警備会社の警備員による身辺警護を受けている。
中には探偵事務所と契約して、身辺警護を依頼している者もいる。
「ラジオをつけてくれ」
牛澤が、運転手の陸曹に声をかけた。
「わかりました」
ラジオが、つけられる。
『フィリピンの戦いでは、現在でも泥沼化の戦闘が繰り広げられていて・・・』
「帝国のラジオだ」
「はい」
運転手の陸曹が、チャンネルを回す。
『大本営陸海軍発表。南太平洋及び南シナ海での連合国との激闘は、帝国陸海軍が大活躍し、連合国に大きなダメージを与えました。連合軍側の被害は甚大であり、軍備を回復させるには時間がかかるでしょう。ですが、帝国陸海軍側の被害は極めて軽微であり、戦況に影響する被害はありません』
「・・・・・」
牛澤は、腕を組んだ。
「大本営発表でも、民法のラジオ放送でも、フィリピンの戦いについては詳細を報告していない・・・」
牛澤を乗せた公用車が、市ヶ谷駐屯地に到着した。
市ヶ谷駐屯地の正門前に着くと、警衛隊の隊員が公用車を確認する。
「陸上自衛隊中央外人集団司令官・牛澤陸将だ。市ヶ谷駐屯地で行われる外人部隊の統合会議に出席する」
副官が、警衛隊の陸曹に告げた。
「伺っております。陸将、お疲れ様です」
陸曹が、挙手の敬礼をする。
統合幕僚本部及び統合作戦司令部は、日本共和区中央区の防衛局庁舎C棟に移管されているが、大本営陸海軍部との意見調整や部隊行動の打ち合わせ、在日米軍司令部との意見交換や調整のために市ヶ谷駐屯地に統合幕僚本部連絡部及び統合作戦司令部連絡部がそれぞれ派遣されている。
牛澤は市ヶ谷駐屯地の隣の施設に顔を向ける。
「市ヶ谷の陸軍参謀本部があるな・・・」
市ヶ谷駐屯地では、大日本帝国陸軍参謀本部連絡部や海軍軍令部連絡部が派遣されており、大日本帝国陸海軍との共同部隊行動での意見交換、行動の調整等が行われている。
「牛澤陸将。随分と、お早い時間帯に到着ですね」
女性の声が響いた。
「貴官が統合作戦司令部連絡部・次長・宇草冬子陸将補。元気そうだな」
彼女は愛友会のメンバーであり、牛澤の後輩だ。
「大日本帝国陸軍との対話は、大変であろう?」
「現場に出ている隊員たちと比べれば、私の苦労は、たいしたものではありません」
「そう言えば・・・君の息子も自衛官だったな?」
「はい、自衛隊少年工科学校出身の陸曹です。『母さんの目となり、耳となるために、現場を知る』という事で、防衛大に進まず、陸曹として現場に出ています」
「だとしたら心配だな・・・」
「私だけではありません。息子を心配する親は、このタイムスリップ計画に志願した自衛官の親なら誰もが心配するでしょう・・・海上自衛隊第1護衛隊群第1護衛隊所属のイージス護衛艦[あかぎ]の艦長も、息子を陸上自衛隊第7機甲師団の戦車部隊に所属させています」
「陸将補。息子は、どこの隊にいる?」
「第12機動旅団第13普通科連隊山岳レンジャー小隊に、所属しています」
「山岳レンジャー小隊は、フィリピンの山岳地帯で、連合国側に属するフィリピン陸軍の山岳部隊と、激戦を繰り広げていると聞いた・・・外人部隊普通科部隊独立部隊の山岳連隊(高地出身の外人で編成された独立連隊)を出動させた」
「感謝しています」
「何が?」
「第13普通科連隊は、松本駐屯地に配備され、アルプス山脈を訓練地にしています。山岳部隊としての能力は高いですが・・・1個普通科連隊だけでは荷が重いという事です」
「予定開始時刻まで、まだ時間があるな」
「はい」
「喫茶店にでも行こう・・・最近、公務が立て込んでいるため、頭が疲れた。甘い物が食べたい」
会議までは、時間がまだある。
正直、会議までには脳細胞をリフレッシュさせたい。
「ご案内します」
宇草が、牛澤を案内する。
市ヶ谷駐屯地では、座間駐屯地と違って完全装備の陸上自衛官が警衛を行っていない。
防衛局雇用の守衛職員が、警備を行っている。
武器として警棒と催涙スプレー缶のみであり、銃器の装備は無い。
座間駐屯地では、駐屯地の警備を担当する警衛隊は、9ミリ機関拳銃を装備した状態で陸士や陸曹が巡回している。
警衛隊詰所では、89式5.56ミリ小銃が、いつでも持ち出せるように設置されている状態だ。
しかし、市ヶ谷駐屯地では、そのような大袈裟な警備が行われていない。
「意外でしょう?」
「ああ」
「ここは、陸海空自衛隊の玄関窓口のようなものです。そのため、威圧感を与える銃器を装備した状態の警備を行っていないのです」
宇草が、簡単に説明する。
特別編 懲罰部隊 第2章をお読みいただきありがとうございます。
誤字脱字があったと思いますが、ご了承ください。
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