特別編 懲罰部隊 第3部 第1章 作戦会議
みなさん、おはようございます、こんにちは、こんばんは、お疲れ様です。
菊水総隊陸上自衛隊南方方面総監部(インドパシフィック合同軍在比米軍司令部)が置かれているクラーク飛行場の総監部庁舎大会議室では、陸海空自衛隊の南方方面総監、南方地方総監、南方航空方面隊司令官の3人の将と、それぞれの幕僚たち、防衛事務官たちが顔を揃えた状態で、インドパシフィック合同軍在比米軍統合作戦司令部の司令官及び幕僚たち、その指揮下で行動する他の独立軍の指揮官と幕僚たちが、顔を揃えていた。
「壮観だな・・・」
南方作戦方面総監の足立恵三陸将が、つぶやいた。
議長席に腰かける在比米軍統合作戦司令官であるジョナサン・メイズリー・キンケイド中将(アメリカ海兵隊・中将)は、スタッフが淹れたコーヒーを楽しみながら、つぶやいた。
「貴国の外人部隊1個歩兵連隊を救出するために、これだけの大部隊が動いたのだ・・・このような形になるのは仕方ない」
「まあ、そうなのだが・・・」
足立は、苦笑する。
(辺境地域で、たかだか1000人以上の部隊が孤立し、それを救出・包囲している連合軍米英比軍残存部隊を殲滅するために、これだけの大事になった・・・あの女史の影響力は、侮れない・・・)
足立は、身震いした。
彼は、スタッフが出してくれた、コーヒーカップを持つ。
「遅れました・・・」
今回の会議で、オブザーバーとして参加するダグラス・マッカーサー退役元帥が、会議室に入って来た。
「こちらです」
受付で、スタッフが確認すると、マッカーサーを案内した。
「こちらが、飲み物になります」
別のスタッフが飲み物のメニューが書かれたメニュー表を、マッカーサーに渡す。
「コーヒーを頼む」
マッカーサーが、注文する。
メニュー表には、緑茶、コーヒー、紅茶、ジュースが書かれている。
ジュースは、オレンジジュース、ラムネがある。
大日本帝国陸海軍の軍司令官及び比律賓派遣隊司令官の陸軍中将及び海軍中将も、参加している。
大日本帝国陸軍南方作戦方面軍比律賓攻略軍(第14軍を基幹)司令官である本間雅晴中将は、緑茶を楽しんでいた。
大日本帝国海軍総隊司令部南方攻略方面隊比律賓派遣隊司令官である塚西十三中将は、缶のラムネを飲んでいる。
しかし・・・
「うむ・・・美味いと言えば美味いが・・・海軍のラムネの方がいいな」
と、感想をぼやいていた。
「それでは出席者が全員揃った事によって、会議を始める」
議長のキンケイドが、告げた。
因みに彼らの服装は制服姿では無く、迷彩服姿若しくは勤務服姿である。
防衛事務官や他の国の文官たちも、スーツ姿では無く、作業服姿である。
「ミンダナオ島では、現在でも連合軍米英比軍の残存部隊による抵抗が続けられている。その状況下で、日本共和区統合省防衛局自衛隊菊水総隊陸上自衛隊第14機動旅団の指揮下の外人部隊で編成された1個歩兵連隊が孤立した・・・」
キンケイドの言語は英語であるが、出席者たちはヘッドフォンをしており、ヘッドフォンにはそれぞれの言語に翻訳された状態で、出席者たちの耳に入る。
さらに目の前の端末機の液晶画面には、出席者たちが発した言葉が文字化される。
もちろん、それぞれの言語でだ。
聞き逃す事も、見逃す事も無い。
これはすべて、AI(人工知能)と最新式のコンピューターによる、言語解析の成果である。
マッカーサーや本間、塚西たち現代人の軍人たちは、その未来の技術に驚きを隠せない。
「今回は、ある人物が提出した、真『オペレーション・THK』について、現場の指揮をとる我々が、オペレーション内容を確認し、調整する事である。ここで確認・調整されたオペレーションは、前線部隊の指揮官たちに送られて、さらに調整される。諸君等の自由な意見に期待したい」
キンケイドが言い終えると、大日本帝国陸軍南方作戦方面軍比律賓攻略軍(第14軍)の参謀である中佐が手を上げた。
「どうぞ」
キンケイドが許可すると、彼は立ち上がった。
「この作戦案についてですが、大本営陸軍部に確認したところ、大本営陸軍部は何も知りませんでした・・・これはインドパシフィック合同軍合同軍司令部や、菊水総隊司令部で、決定された作戦案なのですか・・・?」
「真『オペレーションTHK』については、合同軍・自衛隊が議論し、提出した作戦案では無い。その人物の名を明かす事は出来ないが、とある人物が提案した作戦案だ」
「その人物は、軍人なのですか・・・?」
「いや、軍人では無い。公務員としか言えない」
「そのような人物の作戦案で、これほどの大部隊を動かして良いのですか・・・?貴方がたの記録にある通り、史実での皇国陸海軍の敗退は、現場の状況を把握せず、楽観的思考と希望的観測が原因で、敗退したとなっています。軍人では無い。1人の民間人による作戦案を採用するのは、いかがなものかと・・・」
陸軍中佐の意見は、もっともな事だ。
下級士官クラスの上申した作戦案であれば、まだ納得は出来るが、公務員とはいえ、軍人でも無い人間の作戦案を採用するなど、前代未聞である。
しかし、上官である本間も帝国海軍の塚西も黙っているが、作戦内容に疑問を持っている表情はしていない。
誰が作戦案を提出したのか、大本営陸海軍部経由で知らされているのだろう・・・恐らく高級士官クラスしか知らせる事の出来ない機密電文で・・・
そのため、陸軍中佐のような単なる上級士官クラスには、この作戦案を提出した人物の詳細については何も聞かされていない。
当然の反応であろう。
「その解答については、いくつかの壁がある。ジェネラル・ホンマ」
キンケイドが、本間に顔を向けた。
「何でしょう・・・?」
「ジェネラルは、この作戦を提出した人物に、心当たりは・・・?」
「あると言えばある・・・だが、詳細は聞かないでいただきたい。我が陸軍の前線部隊の名誉にもかかわる事ですから・・・それから、大本営陸軍部では軍司令官のみが読む事が出来る機密電文で、その人物の詳細を知らされています。私から言えるのは、問題ない・・・と、だけです」
本間の言葉に、陸軍中佐は何も言えなかった。
詳細が軍機であるため、中佐である自分が、これ以上聞き出そうとすれば、軍規違反として陸軍憲兵隊に逮捕され、軍直轄の陸軍軍法会議にかけられるだろう。
「そういう訳だ。コマンド。貴官が危惧している事はわかっているが、この作戦案を提出した人物は、各国軍及び政府、行政機関で、機密の存在だ。軽々しく情報を公開する事は出来ない」
「了解しました・・・」
中佐が、引き下がった。
この時、米軍、自衛官の高級士官及び高級幹部の脳裏には、どうやら、あの女史は我々だけでは無く、大日本帝国陸海軍の高級士官の寝室や執務室にも不法侵入しているのか・・・と認識するのであった。
帝国陸軍中佐が席に着くと、帝国海軍中佐が手を挙げた。
「どうぞ」
キンケイドが許可すると、帝国海軍中佐が立ち上がった。
「この度の作戦行動では・・・聯合艦隊第二艦隊第四戦隊所属の重巡[愛宕]と、第二水雷戦隊第十七駆逐隊所属の駆逐艦[雪風]が参加します。さらに、我が比律賓派遣隊派遣第一駆逐隊に所属する海防艦が、周辺海域の哨戒及び対潜警戒のために展開する事になっています。しかし、周辺海域には機雷原がある事が、捕虜や協力者からもたらされた情報です。麾下の掃海艇をすべて出動させるべきと考えますが・・・いかがでしょうか?」
帝国海軍中佐は、提案した。
すでに、フィリピン海及び南シナ海は、世界平和軍海軍多国籍掃海艦隊が掃海活動を行っている。
むろん、傘下の海上自衛隊掃海部隊の艦艇と掃海ヘリコプターが、掃海活動を行っている。
帝国陸海軍及び内閣府保安庁海上警備隊の掃海部隊も派遣されており、フィリピンの戦いで、連合軍、大日本帝国軍、インドパシフィック合同軍、菊水総隊自衛隊が行った機雷戦で、フィリピン海及び南シナ海には多数の機雷が敷設されている。
特に連合軍は、アメリカ陸軍航空軍、イギリス空軍の戦略爆撃機が、浮遊機雷を空中投下している。
これは現段階でも続けられており、同盟国の民間船や中立国の民間船にまでにも被害が及んでいる。
大日本帝国を含めて同盟国、中立国は、米英に対して抗議を行っている。
だが、アメリカ陸軍航空軍及びイギリス空軍による、戦略爆撃機による浮遊機雷の空中投下やアメリカ海軍、イギリス海軍に所属する仮装巡洋艦と潜水艦による機雷敷設は続行されている。
特に戦闘海域であるため、掃海艦艇及び掃海ヘリコプターを護衛するため戦闘艦及び戦闘機を常に展開させなければならないため、新たな掃海部隊の派遣には、インドパシフィック合同軍合同海軍や指揮下に入っている新世界連合・加盟国海軍派遣部隊の高級士官及び上級士官たちは難色を示した。
機雷掃海も必要だが、敵が現れる可能性のある海域に貧弱な装甲と貧弱な武装の掃海艇を投入するのは難しい・・・
帝国陸海軍及び内閣府保安庁海上警備隊の掃海部隊で、特設掃海部隊があるが、簡易な設計で大量生産が可能な木造船で、武装は13ミリ機銃のみの特設掃海艇がある。
少人数で、運用可能で、簡易であるため、操縦も簡単である特設掃海艇は、帝国本土で仕事を求める失業者たちには、うってつけの就職先であるが・・・
人命を重んじる者たちにとっては、使い捨ての駒にはしたくないのである。
「失業者たちは、知らずに陸海軍及び海上警備隊の特設掃海部隊に志願した訳ではありません。覚悟の上で、志願しているのです。それでも許可出来ないのでしたら、海軍軍令部で議論され、新設された特設護衛戦隊があります」
「特設護衛戦隊・・・?」
誰かが、つぶやいた。
「はい、貴方がたの人命重視の考えを尊重し、人命軽視にならないため、特設戦闘艦という新しい艦種を開発しました。海上警備及び海上護衛を目的とした戦闘艦で、攻撃力・防御力は駆逐艦程ではありませんが、輸送艦船や掃海艦艇を護衛するには、十分すぎる火力を有しています。少人数での運用が可能で、操縦及び砲操作は簡易であるため、短い訓練で運用出来ます」
帝国海軍中佐は、不慣れな手付きで、端末機を操作する。
しかし、若いだけあって、端末機の操作には問題ない。
帝国海軍中佐が転送したデータには、特設戦闘艦についての情報が表示された。
「基準排水量300トン・・・満載排水量500トン・・・」
特設警備艦は、全長70メートル、全幅7メートル、基準排水量300トン、満載排水量500トンという小型艦である。
武装は40ミリ連装機銃が3基、20ミリ単装機銃が4基、13ミリ連装機銃が4基、12糎対艦対地噴進弾発射機が2基というものであった。
「史実での大型上陸支援艇を、海上警備用及び海上護衛用に建造したのか・・・」
「はい、海上自衛隊の前身隊である保安庁警備隊が保有していた[ゆり]型警備艇をベースに、簡易な設計で建造出来るよう再設計しました」
[ゆり]型警備艇は保安庁警備隊、その後の海上自衛隊の警備艇として海上自衛隊が運営する呉海上自衛隊博物館で、展示されている体験航海用の予備艇として保管されていた同型艇を大日本帝国陸海軍及び内閣府保安庁海上警備隊に提供した物だ。
「海上警備及び海上護衛だけでは無く、海軍陸戦隊が上陸作戦を行った場合の沿岸攻撃も想定しています」
「我が陸軍の方でも、船団護衛と上陸部隊への支援を含めた沿岸攻撃のために、大量生産しています」
帝国陸軍の船舶工兵科の少佐が、報告した。
「しかし、上空援護が無い・・・空からの攻撃に対しては、特設警備艦は、自艦防衛のための防空兵装しかない。これだと、空からの攻撃に対しては無防備ではないのか・・・?」
「そこは、我が海軍航空隊を信用してください!」
帝国海軍中佐が、叫んだ。
「帝国海軍では、船団の上空護衛及び海上警備での上空援護のために、水上機母艦又は航空戦艦及び航空巡洋艦の配備を行っています。実用の目途が立ちました」
再びデータが、各端末機に転送される。
航空潜水艦、航空巡洋艦、航空戦艦、水上機母艦が表示され、水上戦闘機、水上攻撃機、水上偵察機が展開出来るようになった。
さらに水上機の運用は出来ないが、水上機を着水させた状態で燃料・弾薬の補給、基本的な整備と修理、搭乗員の休養が可能な水上機支援艦が製造されていた。
これによって、帝国海軍中佐が提案した掃海部隊の応援部隊の派遣が可能になった。
「ふむ・・・これならば、帝国海軍だけで、自前の掃海部隊の海上護衛及び上空護衛が可能だな」
キンケイドが、つぶやいた。
「はい、可能です」
帝国海軍中佐が、自信満々に告げた。
「では、本作戦による。戦闘海域又は戦闘が予想される海域での掃海活動に、帝国海軍の特設掃海艇を増援部隊として派遣する事を決定する」
キンケイドの言葉に、帝国海軍中佐が頭を下げた。
「ありがとうございます」
それからも議論は白熱し、真『オペレーション・THK』についての統合作戦司令部、南方作戦方面隊、南方作戦地方隊、南方航空作戦方面隊、比律賓攻略軍司令部、比律賓派遣隊司令部による合同会議で、調整された。
一方、この作戦案を立案した人物は・・・
「はっ!私を過労死させる計画が、調整されている気がする!」
「気のせいでは・・・」
であった。
しかし、過労死は、さておき・・・その人物を徹底的に、こき使う計画は調整されていた。
特別編 懲罰部隊 第1章をお読みいただきありがとうございます。
誤字脱字があったと思いますが、ご了承ください。
次回の投稿は3月21日を予定しています。




