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私は重大な事実に気付いた。
(今まで方向性を間違えていた)
魔法がない。
神様も出ない。
黒魔術も存在しない。
つまり。
私は庭で拾った枝――仮聖剣一号を見つめる。
(答えは最初から目の前にあったんだ)
剣。
そう。
剣である。
異世界といえば剣だ。
勇者だ。
騎士だ。
冒険者だ。
私は立ち上がった。
「メアリー」
「はい、お嬢様」
「お父様は?」
メアリーが少し考える。
「執務室かと」
「なるほど」
私は走った。
数分後。
執務室。
父様は書類を読んでいた。
私を見るなり嫌な予感がしたらしい。
眉間を押さえる。
「……何だ」
まだ何も言っていない。
ひどい。
私は机に手をついた。
「お父様」
「うむ」
「剣術を教えてください」
沈黙。
父様は数回瞬きをした。
「……剣術?」
「はい」
「何故」
「剣士ルートだからです」
「何のだ」
私は胸を張る。
「この世界の」
「違う」
即答だった。
しかし私は負けない。
今までの検証結果を説明する。
「魔法なし」
「うむ」
「黒魔術なし」
「うむ」
「神様イベントなし」
「そうだな」
「つまり剣です」
「何故そうなる」
私は机を叩いた。
「消去法です!」
父様が頭を抱えた。
「お父様」
「何だ」
「勇者になるには努力が必要なんです!」
「勇者はいない」
「騎士!」
「お前は令嬢だ」
「主人公!」
「何のだ」
父様のツッコミが追いついていない。
私は仮聖剣一号を取り出した。
木の枝である。
「これも見つけました」
「庭の枝だな」
「聖剣候補です」
「枝だ」
私は枝を掲げた。
「これを使いこなせるようにならないと」
「使いこなすも何も枝だ」
父様は深いため息を吐く。
長い。
かなり長い。
そして。
「……木剣なら」
「えっ」
私は固まった。
「最低限の護身術くらいは覚えてもいい」
私は目を見開いた。
(来た)
イベントだ。
ついに来た。
主人公育成イベントである。
「やったぁぁぁぁぁ!!!」
父様は知らない。
娘が今、
人生初のチュートリアル戦闘イベント
だと確信していることを。




