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『ここは乙女ゲームの世界らしいので全力で攻略します(※違います)』  作者: Risa


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7/12

7


次の日。


私は朝から機嫌が良かった。


とても良かった。


なぜなら。


(今日から剣術イベントだから!)


ついに来たのだ。


主人公育成編。


努力。


友情。


成長。


レベルアップ。


異世界には欠かせない要素である。


私は気合十分で訓練場へ向かった。


そこには父様と。


一人の男性が立っていた。


短く刈られた髪。


引き締まった体。


いかにも強そうな雰囲気。


私は確信した。


(剣術師匠だ!)


「おはようございます!」


元気よく挨拶する。


男性は少し驚いた後、笑った。


「おはようございます、お嬢様」


優しそうだ。


良かった。


異世界の師匠は厳しいイメージがあった。


父様が口を開く。


「リリア」


「はい!」


「今日からこの者に基本を教わる」


「はい!」


「まず礼儀作法からだ」


私は固まった。


「……はい?」


父様は真顔だった。


「礼儀作法だ」


「剣は!?」


「まだだ」


そんな。


私は師匠を見る。


助けを求めるように。


しかし師匠も頷いていた。


「まずは姿勢ですね」


「剣は?」


「その後です」


おかしい。


剣術イベントでは普通。


まず木剣を渡されるはずだ。


そして才能を見出される。


そういうものだ。


なのに。


「背筋を伸ばしてください」


「はい」


「顎を引いて」


「はい」


「お辞儀を」


「はい」


剣が出てこない。



三十分後。


まだ出てこない。



一時間後。


まだ出てこない。


私は耐えられなくなった。


「先生」


「何でしょう」


「剣は?」


先生は優しく微笑んだ。


「焦ってはいけません」


違う。


そうじゃない。


「主人公は最初から剣を持つものなんです」


先生が固まった。


父様も固まった。


「……主人公?」


しまった。


また口に出ていた。


私は慌てて誤魔化した。


「しゅ、主人の公認です!」


意味が分からない。


父様が頭を抱えた。


先生は困った顔をしている。


私は咳払いした。


「とにかく剣です」


「まずはこちらを」


先生が差し出したものを見る。


本だった。


『剣術入門』


本だった。


「えっ」


「基礎知識は大切です」


「えっ」


「まずは読むところから」


「えっ」


私は本を見る。


本だ。


どう見ても本だ。


(戦闘イベントじゃなかった)


私は衝撃を受けた。



その日の夜。


日記にこう書いた。


『剣士ルートは座学から始まるらしい』


父様はその日記を見て。


静かに天を仰いだ。

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