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私は重大な事実に気付いていた。
(神様イベントがまだ来ていない)
異世界転生といえば、まず神様だ。
夢の中に出てくるとか。
光の空間で会うとか。
謎の声が聞こえるとか。
つまり――
(まだ条件を満たしてないだけ)
私は真剣に頷いた。
「メアリー」
「はい、お嬢様」
「神様ってどこにいると思う?」
メアリーが固まる。
「……神様、ですか?」
「うん!会いに行こうと思って」
「どちらへ?」
「夢の中とか?」
「行けません」
即答だった。
私は考えた。
(なら別ルートだ)
神様イベントには複数パターンがある。
・夢
・祈り
・聖地
・石像
私は立ち上がった。
「お庭に行ってきます!」
「何をなさるのですか」
「神様召喚するの!」
「やめてください」
庭の奥。
白い石像があった。
たぶんどこかの貴族の祖先か何かだろう。
でも関係ない。
(こういうのに宿るんだ)
私は真剣な顔で石像を見上げた。
「神様」
「…………」
当然、返事はない。
私は一歩近づく。
「神様ですか?」
「…………」
沈黙。
(まだ条件不足)
私は頷いた。
次の手段だ。
私は石像の前に正座した。
そして目を閉じる。
「寝れば会えるはず……」
「お嬢様?」
メアリーの声が遠くなる。
「夢の中イベント……」
そのまま私は横になった。
数分後。
「お嬢様!!!!」
「起きてください!!!!」
肩を揺さぶられて目を覚ます。
父様がいた。
かなり疲れた顔だった。
「何をしている」
「あ、お父様おはようございます」
「今神様待ちです」
「待つな」
「あと外で寝るな!」
即答だった。
「えぇー」
私は真剣に説明する。
「普通、寝たら会えるんですよ!」
「誰に聞いた」
「異世界なので」
「どこの異世界だ」
父様は石像を見る。
次に私を見る。
そして深いため息。
「これはただの庭の装飾だ」
「えっ」
私は石像を見る。
ただの石だった。
「じゃあ祈りイベントは?」
「ない」
「聖地は?」
「ない」
「神様は?」
「知らん」
私は静かに立ち上がった。
(おかしい)
(ここまで何も起きないのは逆に伏線)
「なるほど」
私は頷いた。
「まだ神様ルート未解放ですね」
「そんなものはない」
その日の夕方。
庭の石像は、なぜか少しだけ綺麗に掃除されていた。
理由は誰も語らなかった。




