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『ここは乙女ゲームの世界らしいので全力で攻略します(※違います)』  作者: Risa


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4


ある日の朝。


私は重大な事実に気付いた。


スローライフを試していない。


思わずベッドから飛び起きる。


そうだ。


異世界には様々なジャンルが存在する。


剣と魔法。


冒険。


学園。


料理。


そしてスローライフ。


人気ジャンルである。


なのに私は今まで検証していなかった。


これは由々しき事態だ。


朝食の席に着くなり、私は宣言した。


「畑を作ります」


沈黙が落ちた。


父様がゆっくり顔を上げる。


「何故だ」


「スローライフだからです」


「違う」


即答だった。


しかし私は知っている。


スローライフ系主人公はまず畑を耕すのだ。


これは常識である。


「ということで行ってきます!」


「待ちなさい」


「待ちません!」


私は逃げた。


父様のため息を背中で聞きながら庭へ向かう。


そして倉庫から小さなスコップを発見した。


勝った。


これで開拓できる。


私は庭の端っこにしゃがみ込んだ。


「よし」


土にスコップを突き立てる。


えい。


硬い。


もう一回。


えい。


やっぱり硬い。


それでも負けない。


スローライフは地道な努力の積み重ねなのだ。


三十分後。


私は土まみれになっていた。


目の前には小さな穴。


達成感はある。


しかし畑と言うにはあまりにも小さい。


「お嬢様……」


振り返るとメアリーがいた。


ものすごく困った顔をしている。


「何をなさっているんですか」


「畑です」


「穴ですよね?」


「未来の畑です」


「そうですか……」


全然納得していない顔だった。


その時だった。


「リリア」


聞き慣れた声がして、私は元気よく振り返る。


父様だった。


父様は私と穴を交互に見る。


それから静かに聞いた。


「何だこれは」


「畑です」


「穴だ」


「まだ成長途中なんです」


「穴だ」


父様は頑なだった。


私は立ち上がって説明する。


「ここで野菜を育てて、自給自足して、のんびり暮らすんです」


「公爵家の令嬢が?」


「はい!」


「何故」


「スローライフなので」


父様は目を閉じた。


しばらく何も言わない。


そして。


「リリア」


「はい」


「お前は何故そんなに土を掘りたがるんだ」


言われてみれば。


黒魔術でも掘った。


地下遺跡探しでも掘った。


そして今も掘っている。


私は少し考えた。


真剣に考えた。


そして結論を出す。


「異世界だからです!」


父様は空を見上げた。


その顔は、全てを諦めた人の顔だった。

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