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昼食は、いつも通り完璧だった。
白いパン。
温かいスープ。
丁寧に調理された肉料理。
(やっぱりだ)
私はフォークを止める。
この世界の食事、妙に“完成度が高い”。
味が整いすぎているというか、食べるたびに身体が軽くなるような気さえする。
(これはつまり)
私は真剣な顔になった。
「能力値上昇イベントだ」
メアリーが固まる。
「……はい?」
「きっと私が食事を作ったら。ステータスが上がるタイプの世界だわ!」
「何のですか」
「HPとかMPとか」
「ございません」
即答だった。
だが私は引かない。
異世界とはそういうものだ。
戦闘だけじゃなく、日常行動でステータスが伸びる。
つまり食事は重要イベント。
私はスプーンを握った。
「よし」
「お嬢様?」
「検証しにいくわよ!」
数分後。
私は厨房にいた。
使用人たちがざわつく。
「お嬢様!?なぜこちらに……!」
「料理で能力値が上がるか確認します」
「上がりません」
即答された。
私は肉を見つめる。
(ここで“成長判定”が入るはず)
(たぶん隠しパラメータ)
私は一口食べた。
もぐ。
……美味しい。
その瞬間。
私は目を見開いた。
「来た……!」
メアリー「何がですか」
「今、ちょっとだけ元気になった」
「ただの食事です」
私は真剣に分析する。
(やっぱりだ)
(微量だけど上昇してる)
これはつまり――
「レベル上げ要素あり」
「ありません」
即否定だった。
そこへ父様が現れる。
「何をしている」
「またリリアか!」
私は振り返る。
「あ、お父様!」
「今食事でステータス上げてるんですよ!」
「何のだ」
「全ステです!」
「ない」
即答。
私は首をかしげる。
「じゃあこれは……」
「ただの食事から栄養をとってるだけだ」
「えっ」
私はもう一度肉を見る。
ただの肉だった。
(おかしい)
(異世界なのに)
(レベルが上がらないなんて)
父様は深いため息をつく。
「いいか、リリア」
「はい」
「食事はイベントではない」
「でも体力回復しますよね?」
「するがゲームではない」
私は少し考えてから頷いた。
「なるほど」
「理解したか」
「まだチュートリアル食事ですね」
「違う!」
「何故そうなった!」
その日の夕食は、いつもより少しだけ静かだった。
シェフはしばらく「レベル上げ」という単語を避けるようになった。




