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『ここは乙女ゲームの世界らしいので全力で攻略します(※違います)』  作者: Risa


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2/12

2



転生して三日。


私は重大な事実に気付いていた。


(まだ何も始まってない)


異世界転生と言えば、普通こうだ。


神様に会う。

チートを貰う。

魔法が使える。

イケメンが現れる。

世界を救う。


なのに現実は。


「お嬢様、本日は刺繍のお勉強です」


「……地味」


「お嬢様?」


「なんでもありません」


優雅なお茶。


綺麗な庭。


平和な屋敷。


穏やかな使用人達。


……平和すぎる。


私は腕を組んだ。


(おかしい)


絶対おかしい。


異世界にはもっとこう、危険とか陰謀とか、そういうのがあるはずなのだ。


つまり。


(まだ隠されてる)


私は真剣な顔になった。


「メアリー」


「はい、お嬢様」


「この家に地下室はありますか」


メイドさん――メアリーが固まる。


「地下室、ですか?」


「秘密の研究施設とか」


「ございません」


「封印された魔導書とか」


「ございません」


「黒魔術の儀式場とか」


「ございません!!」


食い気味だった。


だが私は諦めない。


異世界とはそういうものだ。


表向き平和でも、裏では絶対何か起きている。


私は屋敷を探索し始めた。


本棚を漁り。


倉庫を覗き。


庭の隅を掘り。


使用人達を震え上がらせた。


そしてその日の夕方。


私はついに見つけてしまった。


「……黒い本」


倉庫の奥。


埃を被った古い本。


表紙には難しそうな文字。


私は震える手でそれを開いた。


「これは……!」


パラリ。


難解な文章。


意味不明な図形。


怪しい記号。


間違いない。


「黒魔術の本だわ……!」


「それは古い家計簿だ!」


背後から華麗な突っ込みの声がした。


振り返る。


父様だった。


「えっ」


「三年前の小麦価格について書かれている」


私はもう一度本を見る。


確かに。


よく見れば数字ばっかりだった。


「…………」


父様は深いため息を吐いた。


「何故お前はそんなに黒魔術を探しているんだ」


「異世界なので」


「その理論が分からん」


「だって普通あるじゃないですか!」


「ない」


即答だった。


私は負けじと反論する。


「じゃあ魔法!」


「ない」


「魔王!」


「いない」


「呪術師!」


「聞いたこともない」


そんな。


私は愕然とした。


じゃあ本当に何系なんだ。


スローライフ?


王宮陰謀?


商売系?


考え込む私を見ながら、父様は額を押さえる。


「リリア」


「はい」


「頼むから屋敷に穴を掘るのはやめなさい」


「地下遺跡の可能性が」


「ない」


「絶対?」


「ない」


「ほんとに?」


「ない」


父様は真顔だった。


私はむぅ、と頬を膨らませる。


その時だった。


「旦那様!!」


使用人が慌てて駆け込んでくる。


「お嬢様が庭で描かれた円陣が消えません!!」


父様がゆっくり私を見る。


私は目を逸らした。


「……リリア?」


「黒魔術が発動したんだ!」


「するわけないだろ!」


「そもそも描くな!!!」

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