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第45話 呼び出し

前回のあらすじ

フランに告白された

 

 わたし達が王立魔法学院に入学してから、一ヶ月が過ぎた。

 この短期間でわたし達の実力は少し、だけど確実に向上していた。


 それとわたし個人の話をすると、フランがわたしのことを『お姉様』と呼ぶことを受け入れた。

 と言っても呼び方だけで、彼女の気持ちまで受け入れたわけじゃない。


 女の子同士の恋愛を否定するわけじゃないけど、わたしにそのケはなかった。

 だけどまぁ、少しだけ親愛の表現が激しいだけの同年代の友人が出来たと思えば、悪い気はしなかった。




 ◇◇◇◇◇




 今日もいつも通り、アレンとフレイルと一緒に教室に入る。

 自分の席に座ると、それを見計らったかのようにフランがレフティとライティを伴ってやって来た。


 フランはわたしの前にやって来ると、軽くお辞儀をしてくる。


「おはようございます、お姉様」

「おはよう、フラン。それにレフティとライティも」


 わたしがそう朝の挨拶をすると、双子の姉妹も挨拶を返してくる。


「おはようございます、お姉様」

「本日も見目麗しゅうございます」

「あはは……ありがとう」


 レフティのお世辞にも慣れて、軽く受け流せるくらいになった。


 それからフレイルも交えて他愛ない会話をしていると、朝のホームルームの開始を告げるチャイムが鳴り響いた。

 フラン達が自分の席に戻るのを見送り、クラス担任がやって来るのを待つ。


 少ししてから、クラス担任であるマリーベルさんが教室に入って来た。

 いくつかの連絡事項を伝えた後、最後にわたし達の方に目を向ける。


「アリシアさん、アレンさん、それとフレイルさん。学院長があなた達をお呼びです。至急、学院長室に行ってください」

「? はい、分かりました」


 ……呼び出された理由は分からないけど、行くしかないかぁ。


 そう思い、二人を連れ立って教室を出て行った。

 向かう先は学院長室だ―――。




 ◇◇◇◇◇




「いったい何なんだろうね? 僕達を呼び出すなんて?」

「さあ?」


 廊下を歩いている途中でアレンがそう言うけど、わたしにも呼び出された理由は皆目見当もつかなかった。


 ああだこうだと理由を予想し合っていると、いつの間にか学院長室の前まで来ていた。


 わたしが代表して、ドアを軽くノックする。

 するとすぐに中から返事が返ってきた。


「カギは開いている。入りなさい」

「失礼します」


 そう一言断ってから中に入る。


 中はそこそこ広く、部屋の中央に応接用のソファーとテーブルが置かれている。

 そして窓際には高級そうな執務机が置かれていて、そこに初老の男性が座っていた。


 実際に目にするのは初めてだけど、この男性がこの学院の学院長だ。

 執務机の前に横並びに立つと、学院長が口を開く。


「よく来てくれた、アリシアくん。いや……今代の勇者殿と呼んだ方がいいかな?」

「いえ、名前で呼んでくれて構わないです」

「そうか、それではそうしよう。……それと、アレンくんとフレイルくんもよく来てくれた」

「あ……はい」

「そんなことよりも単刀直入に聞きます。僕達を呼んだ理由は何ですか?」


 アレンがそう学院長に尋ねる。

 せっかちな気がするけど、アレンが尋ねなければわたしが尋ねる予定だったので、別に彼を咎めはしない。


「性急過ぎやしないかね? そんなことでは女性に好かれないぞ?」

「僕はアリシアに好かれればいいだけなので、他の女性ひとに好かれる気はありませんし、アリシアにしか好意を向けませんから」


 アレンは真顔で歯の浮くようなセリフを吐く。

 その言葉を聞いて、わたしはほっぺたが熱を帯びるのを自覚する。


 ……わたしのことを大切に想ってくれているのは分かったけど、場所を弁えてよ、もう……。


 アレンのセリフとわたしの反応を見て、学院長が呵々大笑する。


「はっはっは! いや、面白い男だな、アレンくんは」

「お褒めに与り恐縮です」


 アレンがそう返すと、学院長は笑うのを止めて真面目な顔をする。


「さて……君達を呼び出したのは他でもない。とても優秀な成績を修めている君達に、とある試練の提案がある」

「それは……何ですか?」


 わたしがそう尋ねると、学院長は一拍置いてから答える。


「……うむ。コレは本当は卒業間際の学生にしか提案していないのだが、君達は特別だ。コレをクリアしたら、君達の卒業を認めようじゃないか」

「本当ですか!?」


 驚きの提案に、わたしは声を張り上げる。


「ああ、本当だ。だがコレは、とても厳しい試練だぞ? それでもやるか?」


 学院長の忠告に、わたしはアレンとフレイルと顔を見合わせる。

 だけど二人共、覚悟は決まっているようだった。


「……はい。その試練、わたし達に受けさせてください」


 三人を代表して、わたしがそう答える。


「そうか……。それでは、私について来なさい」


 学院長はそう言って立ち上がり、部屋の外へと歩いて行く。

 わたし達も彼の後を追い、部屋を出て行った―――。




 ◇◇◇◇◇




 学院長に連れて行かれたのは、学院の地下だった。

 わたし達の前には、十個の扉が並んでいる。


「ここは?」

「ここは、心を写す部屋だ」

「心を、写す……?」


 そう尋ねると、学院長は頷く。


「そうだ。この部屋の中に入り、己の心に……自分が強者だと思う相手の姿を取る自分の心と対峙する。そしてソレを倒すことで、更なる力を手にすることが出来る。魔王討伐を目指す君達にとって、時間は有限だろう? この試練は最短で強くなれる手段だ。どうする? 今ならまだ引き返せるが……」

「やります。いえ……やらせてください!」


 わたしは即答していた。

 アレンとフレイルも、わたしと同じようなことを口にする。


「そうか。それでは試練を始めよう。どの部屋も同じだから、どの扉を選んでも構わない」


 そう言われ、わたしは一番右端の扉を選ぶ。

 アレンは右から三番目を、フレイルは左から五番目をそれぞれ選ぶ。


「それじゃあアレン、フレイル。頑張ろう」

「そうだね。二人も頑張って」

「はい。アリシアさんとアレンさんも頑張ってください」


 お互いに激励の言葉を送ってから、扉を開けて中に入る。


 中は薄暗く、奥行きが分からなかった。

 それだけじゃなく、天井も部屋の幅も分からなかった。

 端的に言えば、部屋の大きさが分からなかった。


 すると部屋の中央―たぶん―に、どこかから発生した霧が集まってくる。

 その霧は徐々に密度を増していき、人の形を形成していく。


 そしてその霧が完全に人の姿を取って現れた時、わたしは驚きで目を見開く。

 わたしの目の前には、とても見知った人物が立っていた。


 その人物は綺麗な金髪を肩甲骨の辺りまで伸ばしていて、瞳の色は紫色だった。

 そして頭とお尻には、キツネのような耳とシッポが生えていた。


 その人物は……いや、彼女・・は―――。






 ―――わたしの前世でもある、魔王アリュシーザだった。






ちなみに、アリュシーザは妖族です。




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