第44話 お姉様!
前回のあらすじ
フランとの決闘に勝利した
フランとその取り巻き(従者?)との決闘に勝った翌日。
わたしの周りでは小さな、だけど大きい変化があった。
それは―――。
◇◇◇◇◇
「お姉様、お疲れですか? 肩でもお揉みしましょうか?」
「いや、大丈夫……」
「お姉様、昼食をご一緒してもよろしいですか?」
「まぁ、それくらいなら……」
「お姉様、ごきげんよう。また明日」
「あ、うん。また明日……」
何故かはわからないけど、フランに『お姉様』と呼ばれるようになりました(困惑)。
◇◇◇◇◇
自室に戻り、共有スペースにあるソファーに身を投げ出す。
「はああぁぁぁ……」
ソファーの肘掛けにおでこを押し付けるような形でうつ伏せになって、肺に溜まっている空気を全て吐き出す。
……つ、疲れた……。
まさかフランにあんな絡まれ方をされるとは、思いもしなかった……。
「あの……大丈夫ですか?」
そんなわたしを見かねたのか、フレイルが心配そうな声音で尋ねてくる。
「大丈夫だけど……はぁ〜……」
そう返事をしつつ、今日何度目か分からない溜め息を吐く。
すると対面に座るアレンが、ケラケラと笑う。
「あっははは……。まさかアリシアに妹が出来るなんてね。良かったじゃないか」
「他人事だと思って……」
「実際、他人事だもん」
アレンは自分には関係ないというような口振りで、それが気にくわなくて顔を上げてキッと彼を睨む。
だけど彼はどこ吹く風という風に、ケラケラと笑い続けている。
明日も今日みたいな感じで来るのかと思うと、今から気が滅入りそうだった―――。
◇◇◇◇◇
そして翌日。
教室に入って自分の席に着くと、フランが取り巻き二人を伴ってやって来た。
「おはようございます、お姉様!」
「「おはようございます、お姉様!」」
フランだけでなく、レフティとライティもわたしのことをお姉様と呼んできた。
そんな三人に対して、わたしも朝の挨拶をする。
「あ、うん。おはよう……」
「それでお姉様。本日はどのようなご予定で? もし放課後お暇でしたら、是非わたくし達のお茶会に―――」
「ちょ、ちょっと待って。わたしからも聞きたいことがあるんだけど」
「? はい、なんでしょう?」
フランは可愛らしく首を傾げる。
「なんでわたしのことを『お姉様』って呼ぶの?」
そう尋ねると、フランは突如として瞳をキラキラと輝かせた。
「わたくしは一昨日の決闘で目の当たりにしましたの! 勇者の名に恥じない雄々しき姿と、敵に情けをかける包容力を併せ持つお方を! それがそう、お姉様ですわ! お姉様に剣を向けられた時、わたくしはおとぎ話に出て来る戦乙女を幻視しましたわ! なんて凛々しく、そして美しい方なのだろうと! その瞬間、わたくしの心は奪われましたわ! なのでアリシアさん……いいえ、アリシア様を『お姉様』と呼ぶことに決めたのです!」
フランはそう熱弁する。
レフティとライティは、彼女の言葉に同意するように何度も頷いている。
どうやら彼女達も、フランと同じようだ。
「そ、そう……。それじゃあ、わたしが勇者だってことも認めてくれたの?」
若干引き気味にそう尋ねると、フランは熱を帯びた視線をわたしに向けてくる。
「それはもう! むしろ憧れの勇者様がお姉様であったことに、幸運すら感じていますわ!」
「ああ、それは良かっ……た?」
突然フランに両手を包み込むように握られ、語尾が疑問形になってしまった。
そして先ほどよりも熱い眼差しを、フランはわたしに向けてくる。
「はしたない女だと思われるでしょうけど……わたくしは、お姉様をお慕いしていますわ!」
「…………」
突然の告白に、わたしの思考が停止する。
確か前に読んだことがある小説に、「大胆な告白は女の子の特権」とか書かれていたけど、こういうことじゃないと思う。
何の反応も示さないわたしに、フランが心配そうな眼差しを向けてくる。
「お姉様? 如何なさいましたか? もしや、ご迷惑でしたか?」
その言葉をきっかけにして、ようやくわたしの頭が再起動する。
「……っ!? い、いや。そういうわけじゃないけど……。わたしには、その……か、彼氏が」
「構いませんわ」
「え?」
やんわりと断ろうとしたけど、それを断られた。
彼氏がいることを理由にしようとしたけど、それは彼女にとってなんの障害にもならなかった。
実際、隣に座るわたしの彼氏もフランの言葉を聞いて、目を見開いている。
「お姉様が誰を愛そうと、わたくしのお姉様に対する気持ちは変わりませんわ。お姉様がわたくしの方を振り向いてくれるまで、何度でもこの気持ちをお姉様に伝えていきますわ」
「お、おおう……」
フランの熱い告白に、わたしは困惑する。
押したら彼女の気持ちに応える形になりそうだし、引いても彼女はわたしを追いかけてくる。
見事なまでに八方塞がりの状況だった。
その状況を打破したのは、朝のホームルームの開始を告げるチャイムだった。
……助かった!!
そう思いながら、フラン達に自分の席に戻るように促す。
「ほ、ほら! 朝のホームルームが始まるよ! 自分の席に戻って!」
「は〜い……残念ですけど、ここまでのようですね。お姉様、お返事はいつまでもお待ちしておりますね♪」
フランは最後にそう言い残すと、取り巻き二人を伴って自分の席へと戻って行った。
去り際の彼女の顔は、今にもスキップしそうなほどに輝いていた。
それとは対照的に、わたしは疲労困憊だった。
朝からすでに、わたしの体力はもうゼロだった―――。
アリシア、ガンバ!
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