表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/260

第32話 同行者

前回のあらすじ

女の子を見つけた

 

「……へっ?」


 最初聞き間違いかと思った。

 けれどすぐに、女の子のお腹から盛大な腹の虫が鳴り響いた。


「何か、食べ物を……」


 女の子が弱々しくそう言ってきたので、わたしは魔法袋をまさぐる。

 だけど残念ながら、食べ物の類いは何一つ無かった。

 わたしは振り向き、アレンの方を見る。


「わたしは何も無かったけど、アレンは?」

「僕も無かった」


 わたしの質問に、アレンは首を横に振る。

 すると女の子は、目が虚ろになってきていた。


「もう……限界……」

「え〜っと……。商隊に戻ったら何か食べ物を分けてもらうから、わたし達についてきて?」

「はい……」

「立てる?」

「一歩も、動けない、です……」


 女の子はそう言うので、わたしは彼女をおんぶしていくことにした。

 そして早足で、商隊の方へと戻って行った―――。




 ◇◇◇◇◇




 余程お腹が空いていたのか、黒髪の女の子は丸太で出来た椅子に座り、すごい勢いでご飯を駆け込む。

 それを見ているだけで、こちらは満腹になりそうだった。

 わたしだけでなく、他の冒険者や商人達もその食べっぷりに呆気に取られていた。


「ふぅ……。助かったぁ……」


 空になった器を両手で抱えながら、女の子はそう呟いた。

 それだけなら空腹が紛れての感想と受け取れるけど、ただ……。


 わたしはチラリと彼女の脇にある、空になった寸胴に目をやる。


 哨戒にあたっていた冒険者のためにと、商人達が用意してくれた夜食を、女の子はたった一人で平らげてしまっていた。二、三十人分はあったハズだけど……。

 わたしと同じかそれより年下くらいの見た目なのに、ものすごい胃袋だった。


「ありがとうございます。とても助かりました」


 女の子は深々とわたしに向かって頭を下げる。


「それは良かったよ。あは、あははは……」


 わたしは苦笑いを浮かべるしかなかった。

 するとアレンが、彼女に尋ねる。


「それでキミは、誰なんだい?」

「あぁ……。そういえば、まだ名乗ってなかったですね。私はフレイル、フレイル・ドラグナーです」

「ん? ドラグナー? ドラグナーってことは、もしかして……」

「はい。私は……、ふあぁぁぁ……」


 すると女の子―フレイルは、大きなあくびをする。

 おそらく、お腹が満たされたことで眠気が襲ってきたのだろう。


 フレイルは目を擦りながら、わたし達に言う。


「すみません。自己紹介の続きは、一眠りしてからでいいですか?」

「え? うん、いいけど……」

「ありがとうございます。それじゃあ、おやすみなさい」


 そう言うとフレイルは椅子に座ったまま目を閉じ、すやすやと寝息を立て始めた。


 すごくマイペースな女の子だなぁという印象と共に、フレイルをわたし達の馬車の荷台へと運び、そこに横たえて眠らせた。


「……僕達も寝ようか」

「うん」


 アレンの提案に賛成して、わたし達も再び眠りに就いた―――。




 ◇◇◇◇◇




 翌日。

 フレイルはわたし達についてきていた。

 というのも……。


「私、竜人の里に住んでるんですよ〜。……え? この商隊の目的地が竜人の里? だったらそこまで私を乗せてってください。報酬は後でちゃんとお支払いしますから」


 と、笑顔でそう言ってきたからだった。

 それでわたしは商隊のリーダーの人と話し合い、わたしとアレンが責任を持って彼女の世話をすることを条件に、彼女の同行を認めてくれた。


 わたしは馬車の手綱を引きながら、改めて隣に座るフレイルに目をやる。


 彼女は艶々とした黒髪を頭の左右で結い上げており、アイスブルーの瞳をしていた。

 そしてまだ幼さの残る顔立ちをしていて、とても『あの一族』の関係者だとは思えなかった。


「どうしたんですか?」


 わたしの視線に気付いたのか、フレイルは首を傾げながら尋ねてくる。


「え? え〜っと……そう! なんでフレイルは、あんなところにいたの?」


 わたしはそう取り繕い、ずっと聞きたかったことを尋ねた。

 するとフレイルは、頬を僅かに染め上げる。


「いや〜、お恥ずかしい話なんですけど……。ちょっとお散歩してて、あの辺りでお昼寝してたら夜になっちゃってて。それで里に帰ろうにもお腹が空き過ぎて、あそこから一歩も動けなかったんですよ。アリシアさん達が来てくれてなかったら、今頃餓死してましたよ〜」


 あっはっはっ、と笑いながら彼女は答えた。


 ……いや、竜人の里からあそこまで、「ちょっと」どころの距離じゃないんだけど……。


 そう思いつつも、ソレは口にせずにぐっとこらえる。

 まぁ、わたしの予想通りなら、彼女の種族であればあのくらいの距離は「ちょっと」だとは思うけど……。


 そんなことを思いつつ、新たな同行者を加えて、一路竜人の里を目指して進んで行った―――。






腹ペコマイペースな新キャラ、それがフレイル。

ちなみに彼女にはまだ秘密が……。




評価、ブックマークをしていただけると嬉しいです。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ